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16・異次元突入
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「明日から夏休みだね、ここちゃん」
とうとう試験も終わり、長い夏休みに入る。瑛太にそう声を掛けられ、心海は彼を手招きした。瑛太にどうしても聞いておきたいことがある。
「その…ミラっていう世界のこと、聞いてもいい?」
瑛太はにこりと笑って頷いた。
「そうだよね、君も知っておいたほうがいい。ミラはね―」
✢✢✢
(うーむ)
心海はバイトのレジ打ちをしながら考えていた。すっかり仕事に慣れてきて、意識せずさくさく作業出来るようになっている。
「新田くん、あがって」
「あ、はい。お疲れ様でした!」
バイト先にしばらく休む旨を伝えたら、寂しがられた。入れるようになったらすぐ連絡すると言うと、同じレジ係の女性にこう言われたのだ。
「ここちゃん、かけおちでもするんじゃないかって皆で話してたのよー」
「か、かけおち?!なんでまた?」
「だってここちゃん、恋人と同棲してるんでしょ?なんだか思い詰めてたって店長が」
「そんなの有り得ないですよ、やだなぁ」
心海は明るく振る舞ったが、内心不安でいっぱいだった。知らない世界に行く、しかもここで言うところのファンタジーな世界にだ。
魔法や剣、モンスターや異種族のいる世界なのだと瑛太に説明された時はひっくり返りそうになった。
(魔法なんて…そんな)
家に帰り夕飯を作っていると律が帰って来る。夏休み中の部活の練習について、スイケは良い案があると言っていた。
「お帰り、りっくん」
「ただいま。心海、これ」
なんだろう?と彼の手に握られていたものを見つめると、黒いツヤツヤした玉があった。
「これ、なに?」
「良く分からんけど、俺の身代わりだってスイケが言ってた。よく磨けばいいらしい」
「へえ。不思議なものがあるんだね、ミラって」
心海は今日、瑛太から聞いた話をかいつまんで律に話した。
「ううーん、魔法ときたか」
「はは、やっぱりそういう反応になるよね」
心海が笑うと、律が顎に手を当てて考え始める。なんだろう?と心海は律を見つめた。
「ってことはさ、俺も魔法が使える可能性があるってことだよな?」
「え、りっくん魔法の嗜みがあるの?」
心海が心底驚くと、律が照れくさそうに言う。
「そうゆうの男のロマンっつーか、一度はやってみたいだろ」
「うん、やってみたい。ムカツク相手に炎魔法を最大火力でぶつけたい」
「お前…ストレス溜まってるのか?」
「レジ係は大変なんですよー」
いつの間にか律に抱き締められている。
「りっくんにぎゅってしてもらえるとホッとするんだ。りっくんはいいね、背が高いし体もがっしりしてるし」
「俺はお前しか抱き締めないぞ?」
「そうゆうことじゃないんですー」
スマートフォンがメッセージの着信を報せる。瑛太たちが来たのだ。
「やぁ、おじゃましますよ」
スイケは悠々と入ってくる。
「おじゃまします」
瑛太は少し緊張しているようだ。
「おっと、まだ玉を磨いてなかったんだね。すぐ磨きなさい」
「お、おう」
スイケに言われた通り、律が玉を磨くと、律がもう一人現れた。
「なんだこりゃ?!」
「コピーだよ。君の歩き方から仕草、口調まで完全にコピーしている」
「はぁ?」
「コピーくん、君はしばらくサッカー部の練習に出るんだ。律が帰ってくるまでね」
「分かった」
こくりとコピーは頷くと、明日も練習があるからと律の部屋に向かった。
「大丈夫なのか?」
「僕の魔法を信用してくれ!」
スイケがにっこり笑う。
「扉が開いたよ」
瑛太が手にしていたのは鍵だ。空間にもう一つ空間がある。
「ここが異次元世界?」
「そうだよ、この世界はここより時間の経過が速い。急ごう」
スイケが扉をくぐるのを筆頭に、心海たちも続いた。
とうとう試験も終わり、長い夏休みに入る。瑛太にそう声を掛けられ、心海は彼を手招きした。瑛太にどうしても聞いておきたいことがある。
「その…ミラっていう世界のこと、聞いてもいい?」
瑛太はにこりと笑って頷いた。
「そうだよね、君も知っておいたほうがいい。ミラはね―」
✢✢✢
(うーむ)
心海はバイトのレジ打ちをしながら考えていた。すっかり仕事に慣れてきて、意識せずさくさく作業出来るようになっている。
「新田くん、あがって」
「あ、はい。お疲れ様でした!」
バイト先にしばらく休む旨を伝えたら、寂しがられた。入れるようになったらすぐ連絡すると言うと、同じレジ係の女性にこう言われたのだ。
「ここちゃん、かけおちでもするんじゃないかって皆で話してたのよー」
「か、かけおち?!なんでまた?」
「だってここちゃん、恋人と同棲してるんでしょ?なんだか思い詰めてたって店長が」
「そんなの有り得ないですよ、やだなぁ」
心海は明るく振る舞ったが、内心不安でいっぱいだった。知らない世界に行く、しかもここで言うところのファンタジーな世界にだ。
魔法や剣、モンスターや異種族のいる世界なのだと瑛太に説明された時はひっくり返りそうになった。
(魔法なんて…そんな)
家に帰り夕飯を作っていると律が帰って来る。夏休み中の部活の練習について、スイケは良い案があると言っていた。
「お帰り、りっくん」
「ただいま。心海、これ」
なんだろう?と彼の手に握られていたものを見つめると、黒いツヤツヤした玉があった。
「これ、なに?」
「良く分からんけど、俺の身代わりだってスイケが言ってた。よく磨けばいいらしい」
「へえ。不思議なものがあるんだね、ミラって」
心海は今日、瑛太から聞いた話をかいつまんで律に話した。
「ううーん、魔法ときたか」
「はは、やっぱりそういう反応になるよね」
心海が笑うと、律が顎に手を当てて考え始める。なんだろう?と心海は律を見つめた。
「ってことはさ、俺も魔法が使える可能性があるってことだよな?」
「え、りっくん魔法の嗜みがあるの?」
心海が心底驚くと、律が照れくさそうに言う。
「そうゆうの男のロマンっつーか、一度はやってみたいだろ」
「うん、やってみたい。ムカツク相手に炎魔法を最大火力でぶつけたい」
「お前…ストレス溜まってるのか?」
「レジ係は大変なんですよー」
いつの間にか律に抱き締められている。
「りっくんにぎゅってしてもらえるとホッとするんだ。りっくんはいいね、背が高いし体もがっしりしてるし」
「俺はお前しか抱き締めないぞ?」
「そうゆうことじゃないんですー」
スマートフォンがメッセージの着信を報せる。瑛太たちが来たのだ。
「やぁ、おじゃましますよ」
スイケは悠々と入ってくる。
「おじゃまします」
瑛太は少し緊張しているようだ。
「おっと、まだ玉を磨いてなかったんだね。すぐ磨きなさい」
「お、おう」
スイケに言われた通り、律が玉を磨くと、律がもう一人現れた。
「なんだこりゃ?!」
「コピーだよ。君の歩き方から仕草、口調まで完全にコピーしている」
「はぁ?」
「コピーくん、君はしばらくサッカー部の練習に出るんだ。律が帰ってくるまでね」
「分かった」
こくりとコピーは頷くと、明日も練習があるからと律の部屋に向かった。
「大丈夫なのか?」
「僕の魔法を信用してくれ!」
スイケがにっこり笑う。
「扉が開いたよ」
瑛太が手にしていたのは鍵だ。空間にもう一つ空間がある。
「ここが異次元世界?」
「そうだよ、この世界はここより時間の経過が速い。急ごう」
スイケが扉をくぐるのを筆頭に、心海たちも続いた。
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