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「ショーゴ、ちゅー」
「ん…」
ルネにキスで起こされるのも日課になりつつあるな。可愛いヒトだ。
「おはよう、ルネ」
「ショーゴ、おはよー。お腹空いた!!」
「ラウンジ、行こうか」
俺はベッドから降りて着替えた。ルネと一緒に3階にあるラウンジにエレベーターで向かう。
ついこの間まで、こんな建物はなかった。最新の設備を備えたこの建物は一体どうやって作られたんだろう。科学力と魔法の力が組み合わさって作られたのは間違いない。ラウンジの空いたテーブルに座ってメニューを見る。朝は朝でまた違うメニューがあるみたいだな。
「朝はやっぱりカレーでしょ!」
「俺もそうする」
飲み物はどうしようかな。ラウンジは基本無料だから、つい欲張るな。
結局リンゴジュースを頼んだ。
直に注文したものが届く。
「わ、美味しい!」
コクのあるルゥに柔らかな牛肉が口の中でホロホロ溶けるのが美味い。さすがホテルのカレーだな。ルネがごくんとカレーを飲み込んで口を開いた。
「ね、ショーゴ。今日はもっと強い人とあたるよね」
「だと思う。あの肉体改造はやばいよな」
昨日のカヅキも尋常じゃない身のこなしだった。いかにも、戦い慣れているって感じだったから、闘技場を盛り上げてきた一人だったんだろう。話を聞く限り、闘技場はコロニーの娯楽の一つだったみたいだし。今日はどんなヒトが相手なんだろう。緊張してきた。
「ショーゴ、リラックス!」
「ありがとう」
闘技場に入って今日のエントリーを済ませる。ルネは今日も昼食代と軍資金を持って、客席に向かった。俺は午前の部の後半からの試合に出ることになりそうだ。今日も相変わらず歓声がすごいな。控室に入ると、誰かがいた。白髪の綺麗な女性だった。腕を組んで壁にもたれかかっている。あれ?俺、部屋間違えたか?
「あ、スミマセン、間違えました」
「いいや、合っているよ」
軽やかな声だった。淡々と彼女はしゃべった。
「父上からおもちゃを私宛に送ったと聞いてね」
もしかして、この人がダリアさん?!それにおもちゃって俺のことか?あまりに酷すぎない?
唖然としていると、彼女は笑った。
「私はダリア。お前は龍姫に認められたと聞いている。私を楽しませてくれよ」
「あ、えーと…」
口ごもっている間にダリアさんはいなくなっていた。
「ダリア来たんだ」
ルネが小声で話しかけてくる。ずっと波導で聞いていたらしいな。
「ショーゴ、次だね」
「うん」
いよいよ二回戦が始まるんだ。俺は入場口に向かった。昨日の事から鑑みて、肉体改造は普通らしいからな。今日はその点も踏まえて戦ってみよう。外へ出ると今日も歓声があがる。昨日の俺の戦いを見てくれていたヒトがいるんだろう。
相手はまたデカかった。俺を威圧的に見下ろしてくる。イノシシの獣人だ。
「坊主、あのカヅキに勝ったんだってな?」
「あぁ」
俺が頷くとイノシシは笑った。
「ならば俺が叩きのめしてやろう」
言うが早いか、イノシシがこちらに突進してくる。さすがイノシシ、猪突猛進ってやつか。
避けるのは多分間に合わない。俺は盾を構えた。
「かはっ…!」
ドスンという重たい衝撃に、俺は後ろに思い切り弾き飛ばされていた。いってえ。俺はぺっと血液を吐いた。やれやれ、怪我したじゃないか。
「そんな防御力じゃ俺は止められないぜ」
ふふん、とイノシシが自慢そうに笑う。次は俺の番だ。俺は剣を構えて、イノシシに向かっていった。エンオウさんと一緒に毎日走っておいた甲斐があったな。随分タフになった気がする。
俺は走るスピードを更にぐん、と上げた。
「すごい!ショーゴが分裂した!」
ルネが驚いている。俺なりに編み出した影分身っていうやつである。イノシシは俺の分身に殴りかかっては攻撃を外していた。そりゃあそうだろう。本体と同じだけのオーラを持たせた分身だからな。
「く、くそ…」
俺はイノシシの首を鞘で力いっぱい殴ったのだった。
「ぐぬぅ…」
イノシシがふらついている。そしてドズンとやつは沈んだのだった。
「勝者!ショーゴ・カノ!」
わあああと歓声が上がる。やれやれ、疲れた。俺もその場に座りこんだ。そこから意識がない。
✢✢✢
「んぁ…」
「ショーゴ!起きたの!!」
消毒液の匂い…ルネが泣きそうな顔で俺を覗き込んでくる。そうか俺、あの後気絶したんだっけ。ここは個室みたいだ。
「ルネ…平気だよ」
笑うとルネの瞳からボロボロ涙が溢れてきた。わあ、泣かせるつもりじゃなかったのに。
「ルネ、泣かないで。お願い」
「無理だよ。ショーゴ、もうペンダントなんて…っひ…要らないんだから」
ルネが涙声で言った。
「そんなこと言わないでよ。ルネにはいつも助けられてるんだよ。俺に出来ることはさせて」
「ショーゴ…」
「ゆっくり体を休めることだな」
声を掛けてきたのはダリアさんだった。この人にはおもちゃ認定されてるからな。俺が使い物にならなくなっていないか、確認しにきたんだろう。
「お前、あのイノシシと真正面からぶつかり合うなんて正気か?死ぬぞ」
ダリアさんが呆れている。
「そうだよ!ショーゴ!あんな大きなヒトと!」
ルネが便乗してくる。
「ちょっと判断ミスりました」
へへ、と笑ったら二人に盛大にため息を吐かれた。そこまで?
「ショーゴ、ゆっくり休んでてね。僕、売店で何か買ってくるよ」
「私も行こう」
俺は白い天井を見上げた。闘技場って医療施設まであるんだな。まあヒトを戦わせるんだから当然か。この怪我はどれくらいで治るんだろう。あとでルネに聞いてみるか。
✢✢✢
「龍姫、あれがお前の番か?」
「そうだよ」
ダリアが楽しそうに笑う。
「なかなか面白い男じゃないか。私にくれないか?」
「嫌だよ。ダリアは美人なんだし、他を当たってよね」
ルネはあくまでも突っぱねた。ダリアはまた楽しそうに笑う。
「私より強い男を探しているんだがなかなかいないんだ」
「だからってショーゴに手を出したら許さないよ」
むむむ、とルネはダリアを睨む。
「そんなに怒らないでくれ。冗談だ」
ダリアは笑いが止まらないらしい。口に手を当てて笑っている。それだけ見れば可憐な乙女なのだが、実際は闘技場のトップに君臨する猛者だ。
「ダリアって男運なさそー」
「なにか言ったか?」
「なんでもないよ」
口は災いのもとである。ルネはショーゴと自分用にジュースと菓子を買ってそそくさと病室に戻ったのだった。
「ん…」
ルネにキスで起こされるのも日課になりつつあるな。可愛いヒトだ。
「おはよう、ルネ」
「ショーゴ、おはよー。お腹空いた!!」
「ラウンジ、行こうか」
俺はベッドから降りて着替えた。ルネと一緒に3階にあるラウンジにエレベーターで向かう。
ついこの間まで、こんな建物はなかった。最新の設備を備えたこの建物は一体どうやって作られたんだろう。科学力と魔法の力が組み合わさって作られたのは間違いない。ラウンジの空いたテーブルに座ってメニューを見る。朝は朝でまた違うメニューがあるみたいだな。
「朝はやっぱりカレーでしょ!」
「俺もそうする」
飲み物はどうしようかな。ラウンジは基本無料だから、つい欲張るな。
結局リンゴジュースを頼んだ。
直に注文したものが届く。
「わ、美味しい!」
コクのあるルゥに柔らかな牛肉が口の中でホロホロ溶けるのが美味い。さすがホテルのカレーだな。ルネがごくんとカレーを飲み込んで口を開いた。
「ね、ショーゴ。今日はもっと強い人とあたるよね」
「だと思う。あの肉体改造はやばいよな」
昨日のカヅキも尋常じゃない身のこなしだった。いかにも、戦い慣れているって感じだったから、闘技場を盛り上げてきた一人だったんだろう。話を聞く限り、闘技場はコロニーの娯楽の一つだったみたいだし。今日はどんなヒトが相手なんだろう。緊張してきた。
「ショーゴ、リラックス!」
「ありがとう」
闘技場に入って今日のエントリーを済ませる。ルネは今日も昼食代と軍資金を持って、客席に向かった。俺は午前の部の後半からの試合に出ることになりそうだ。今日も相変わらず歓声がすごいな。控室に入ると、誰かがいた。白髪の綺麗な女性だった。腕を組んで壁にもたれかかっている。あれ?俺、部屋間違えたか?
「あ、スミマセン、間違えました」
「いいや、合っているよ」
軽やかな声だった。淡々と彼女はしゃべった。
「父上からおもちゃを私宛に送ったと聞いてね」
もしかして、この人がダリアさん?!それにおもちゃって俺のことか?あまりに酷すぎない?
唖然としていると、彼女は笑った。
「私はダリア。お前は龍姫に認められたと聞いている。私を楽しませてくれよ」
「あ、えーと…」
口ごもっている間にダリアさんはいなくなっていた。
「ダリア来たんだ」
ルネが小声で話しかけてくる。ずっと波導で聞いていたらしいな。
「ショーゴ、次だね」
「うん」
いよいよ二回戦が始まるんだ。俺は入場口に向かった。昨日の事から鑑みて、肉体改造は普通らしいからな。今日はその点も踏まえて戦ってみよう。外へ出ると今日も歓声があがる。昨日の俺の戦いを見てくれていたヒトがいるんだろう。
相手はまたデカかった。俺を威圧的に見下ろしてくる。イノシシの獣人だ。
「坊主、あのカヅキに勝ったんだってな?」
「あぁ」
俺が頷くとイノシシは笑った。
「ならば俺が叩きのめしてやろう」
言うが早いか、イノシシがこちらに突進してくる。さすがイノシシ、猪突猛進ってやつか。
避けるのは多分間に合わない。俺は盾を構えた。
「かはっ…!」
ドスンという重たい衝撃に、俺は後ろに思い切り弾き飛ばされていた。いってえ。俺はぺっと血液を吐いた。やれやれ、怪我したじゃないか。
「そんな防御力じゃ俺は止められないぜ」
ふふん、とイノシシが自慢そうに笑う。次は俺の番だ。俺は剣を構えて、イノシシに向かっていった。エンオウさんと一緒に毎日走っておいた甲斐があったな。随分タフになった気がする。
俺は走るスピードを更にぐん、と上げた。
「すごい!ショーゴが分裂した!」
ルネが驚いている。俺なりに編み出した影分身っていうやつである。イノシシは俺の分身に殴りかかっては攻撃を外していた。そりゃあそうだろう。本体と同じだけのオーラを持たせた分身だからな。
「く、くそ…」
俺はイノシシの首を鞘で力いっぱい殴ったのだった。
「ぐぬぅ…」
イノシシがふらついている。そしてドズンとやつは沈んだのだった。
「勝者!ショーゴ・カノ!」
わあああと歓声が上がる。やれやれ、疲れた。俺もその場に座りこんだ。そこから意識がない。
✢✢✢
「んぁ…」
「ショーゴ!起きたの!!」
消毒液の匂い…ルネが泣きそうな顔で俺を覗き込んでくる。そうか俺、あの後気絶したんだっけ。ここは個室みたいだ。
「ルネ…平気だよ」
笑うとルネの瞳からボロボロ涙が溢れてきた。わあ、泣かせるつもりじゃなかったのに。
「ルネ、泣かないで。お願い」
「無理だよ。ショーゴ、もうペンダントなんて…っひ…要らないんだから」
ルネが涙声で言った。
「そんなこと言わないでよ。ルネにはいつも助けられてるんだよ。俺に出来ることはさせて」
「ショーゴ…」
「ゆっくり体を休めることだな」
声を掛けてきたのはダリアさんだった。この人にはおもちゃ認定されてるからな。俺が使い物にならなくなっていないか、確認しにきたんだろう。
「お前、あのイノシシと真正面からぶつかり合うなんて正気か?死ぬぞ」
ダリアさんが呆れている。
「そうだよ!ショーゴ!あんな大きなヒトと!」
ルネが便乗してくる。
「ちょっと判断ミスりました」
へへ、と笑ったら二人に盛大にため息を吐かれた。そこまで?
「ショーゴ、ゆっくり休んでてね。僕、売店で何か買ってくるよ」
「私も行こう」
俺は白い天井を見上げた。闘技場って医療施設まであるんだな。まあヒトを戦わせるんだから当然か。この怪我はどれくらいで治るんだろう。あとでルネに聞いてみるか。
✢✢✢
「龍姫、あれがお前の番か?」
「そうだよ」
ダリアが楽しそうに笑う。
「なかなか面白い男じゃないか。私にくれないか?」
「嫌だよ。ダリアは美人なんだし、他を当たってよね」
ルネはあくまでも突っぱねた。ダリアはまた楽しそうに笑う。
「私より強い男を探しているんだがなかなかいないんだ」
「だからってショーゴに手を出したら許さないよ」
むむむ、とルネはダリアを睨む。
「そんなに怒らないでくれ。冗談だ」
ダリアは笑いが止まらないらしい。口に手を当てて笑っている。それだけ見れば可憐な乙女なのだが、実際は闘技場のトップに君臨する猛者だ。
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