異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ

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ルネが売店から戻ってきて、二人でしばらくお菓子を食べていた。そこに端末が急に鳴り出して驚いた。そうだった、びっくりするから着信音をどうにか出来ないかって前にも言っていたな。あれからあちこち弄ってみて、結局分からなかったのだ。サイドテーブルに置いた端末を手に取ると、「お振込みが完了しました」というメッセージが2件来ている。あ、もしかして怪しいメールか?ルネが画面を覗き込んでくる。

「ねえショーゴ、これファイトマネーじゃない?」

ん?ファイトマネー?俺はそこでようやく思い出した。そうか、一応勝っていたな俺。バタバタしていたから忘れていたけれど。

「いくら入ったの?」

ルネがニコニコしながら聞いてくる。この闘技場に来て、ルネはお金を増やすのがめちゃくちゃに上手いということを発見していた。とにかく勘がいいのだ。負けそうな選手、つまり穴を見抜くのが上手い。負けそうと皆には思われても実際は勝つのだからすごい。俺は指で画面をスクロールした。えーと、どれどれ…。

「二百万ゲータ?」

俺はもう一回桁を数え直してみた。間違いない。二百万が振り込まれている。これは普通に働くのが馬鹿らしくなるレベルだ。強ければ…だけど。この世界の相場は日本で考えるならかなり安い。
だからしばらく遊んで暮らせるレベルだ。

「わ、すごいね!ショーゴ!やったじゃん」

こんな大金持ったことないから怖すぎる。この間ルネが勝った分のお金は端末から銀行口座を作って全額預けた。その時に資産運用がどうたらこうたらとか言われたけど、そんな場合じゃない。
今はただトーナメントを勝ち上がりたいだけなんだ。怪我もしてるし、しばらく戦えそうにもないけれど。その間の医療費やら食事代やらは闘技場本部が持ってくれるのだという。なんて太っ腹なんだ。
そろそろ病院の面会時間もおしまいだな。

「ショーゴぉ、淋しいよ」

ルネが抱き着いてくる。俺はルネの頭を撫でて軽くキスした。これ以上は許していただきたい。違うところが元気になってしまうからね。

「また明日ね」

ルネが手を振ってくるから振り返す。可愛いな。
この怪我が治るまで丸々二週間かかるとのことだ。仕方がない、ゆっくり休もう。ここも病院と同じで消灯時間があるようだ。俺は目を閉じた。目を開けても暗闇だしな。
ここまで色々あった。シャナとマヨイとチサトは元気かな?とにかく今は、ただ眠ろう。

✢✢✢

ルネは一人、ホテルの部屋に戻っている。翔吾と離れるのは寂しかったが、彼の怪我が治るまでは仕方がない。

「や…ばい…」

部屋に入るなり、ルネはふらりと壁にもたれかかった。こんな時にとルネは自分を叱った。だががどうにもならないこともよく分かっている。

「ショーゴ…っふ…は…」

強い発情である。だが、まだこれより強い発情があることをルネはよく知っている。幼い頃にその感覚を体験させられたのだ。あれはルネにとって一種のトラウマだった。自分はなんていやらしいのだろうと嫌悪した時もあった。今になって動物なのだから性欲を持つのは当たり前だと思えるようになったくらいだ。

「ショーゴ…僕、頑張るね」

ルネはなんとか床から起き上がる。荒い呼吸を整えながらベッドに寝転んだ。いつもなら翔吾が自分の傍にいてくれる。それだけでもルネは安心できる。
だが、いつまでも翔吾に頼ってばかりではいけない、とルネは思うようになってきていた。龍姫だから自分は特別なのだとルネは無意識に周りを見下していた。
だが、龍の里から一歩外へ出てみたら、自分は小さくて何も成し得ることの出来ない弱い龍だったのである。大変なショックだった。あの時に翔吾が自分の危険を顧みず助けてくれたから、ルネは生き永らえている。全てたまたまだ。
だが占い師でもあるルネはそれを、自分を変える契機だと捉えた。発情期もそれを察してなのか訪れ、ルネは一頭の龍として一歩進む時が来たのだと自分に言い聞かせた。翔吾と番になった今、自分は翔吾の種を宿したい。それは発情期の最高潮の時に性行為をする必要がある。最古龍の数が減ってきているのは、子を成すのが難しい所にある。そして、最古龍が完全に育ちきるまでには時間がかかるというのもある。ルネですら最古龍としてようやく成人したばかりである。ここまで約60年ほどかかっているのだ。それまでの間に、他の獣に食べられてしまったり、病気にかかりそのままというケースも少なからずある。ルネは自分の行動にため息をついた。

(僕がそこらのモンスターより大きいなんて、嘘っぱちにも程があるよね)

里の者はルネを大きな龍と評してくれたが、あれは建前だったらしい。フィールドに初めて出たルネは周りの巨大さに固まった。自分が特別小さい龍なのだと思い知ったのである。ルネは発情が収まってきたことを感じ取った。ほぅ、と息をついてようやく眠りに就くことが出来たのだ。


翔吾もルネもお互いの夢を見ていた。
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