異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ

文字の大きさ
32 / 68

32

しおりを挟む
おいおい…って俺は思っていた。

「すっごーい!高いね、ショーゴ!」

ルネが隣ではしゃいでいる。俺は固まって動けない。ほら、高所恐怖症だからね。俺たちはコトリタクシーなるものに乗っている。黒い翼を持つ巨大な鳥たちがゴンドラを運んで目的地まで送ってくれるのだ。便利だけど、めちゃくちゃ怖い。空が一番安全説あるけど、そんなの絶対に信用できない。

「兄ちゃん、高所恐怖症かい?」

鳥たちに指示を出しているおじさんが固まっている俺に声を掛けてくれた。

「はい、昔小さい頃ジャングルジムから落ちちゃって」

「そりゃ怖いなぁ」

どうやらこの世界にもジャングルジムという遊具はあるらしいな。

「でもこのコトリタクシーは安全が何よりも第一だからね!安心してくれ!」

「はぁ…」

今はおじさんの言う事を信用するしかない。

「ショーゴ、大丈夫?」

ルネが俺の手を掴んで優しく握ってくれた。ルネは前より随分大人びた。いや、成人はしていたみたいだけど、なんていうかすごく綺麗に、更に美人さんになった。前までは幼い可愛らしい感じだったから、その変化に驚く。ドキドキしていたらルネが抱き着いてくる。

「もうすぐ着くよ」

ルネが笑いながら言った。

 ✢✢✢

ここははじまりの神殿。誰もいないはずの空間から聞こえる話し声。

「ね、ルネ姫が妊娠したんだって」

「おぉー、めでたい」

「相手は人間の召喚者なんだって」

「え?人間とかないわー」

「でももう姫は妊娠してるんでしょ?」

「あたしらが姫守んなくてどうすんの?」  

「だよねだよね!その人間の力試しもしたいし」

 クスクスとその声たちが笑い出す。

「やってやろーぜ」

「楽しみになってきたぁ」

 ✢✢✢

「へっくしょい」

なんか寒気がして俺は盛大にくしゃみをした。なんだ?風邪引いたのかな?ルネに感染さないようにしないと。だって赤ちゃんがいるんだしね。ルネが言うには、赤ちゃんが生まれるまで120日ほどらしい。人間に比べると生まれるのは早いけれど、成熟までに時間がかかるそうだ。

「ショーゴ、寒い?」

「ううん、大丈夫」

コトリタクシーから降りた俺たちは神殿に向かって歩き出した。幼かった頃、ルネは龍姫として各地の神殿巡りをしたことがあるらしい。

「ここ坂道なんだよねー」

ルネのお腹はさすがにまだ膨らんでいないけど、無理はさせられないよな。

「ルネ、君は俺が守るから!」

「ショーゴ」

ルネの顔が赤くなる。俺も顔が熱くなった。ルネを抱きしめようとしたら、バスケットボール大の何かが飛んでくる。なんだ?

「こらー!神殿のそばで姫様に触ろうとするな!」

「アイアン…君、なにしてんの?」

アイアンと呼ばれたそのヒト?はルネに深々と頭を下げた。このヒト、もしかして精霊かな?

「ルネ姫、ご懐妊おめでとうございます。ささやかですが、お祝いです」

アイアンさんが取り出したのは紙袋に入ったベビーグッズだった。買ったのかな?どうやって?人間の姿になれるのかな?それは有り得る。

「おい人間!」

アイアンさんにじろりと凄まれたけど、あまり怖くない。アイアンさんは今は小さいし優しそうなヒトに見えるから。

「あ、俺は翔吾です」

「そんなことはとっくに知っている。よくも姫様に手を出したな。どうせ無理やり迫ったんだろう!」

「アイアン、僕からショーゴに頼んだんだよ?」

「な…いいや、姫様はこやつにそう思い込まされているだけです!こんなたかが人間風情に!」

アイアンさんは俺が信じられないみたいだ。まあ無理もないよなぁ。ルネは大事な姫様なんだから。

「俺なりに一生懸命ルネを守ります。約束します」

俺がアイアンさんにそう言って頭を下げたら、アイアンさんが言葉に詰まっていた。

「アイアン、ショーゴに謝って」

「…ぐ…しかし…姫様…!」

「アイアン」

ルネの言葉にアイアンさんは逆らえないらしい。

「…申し訳ない」

彼はそう小声で呟いたのだった。

「ね、アイアン。ペンダント見てくれる?」

ここは神殿内部だ。薄暗いけどぼうっと周りが見えるのが毎回不思議なんだよな。

「なんと!ペンダントを見つけられたのですか?」

「ショーゴが取り返してくれた」

「くっ…」

アイアンさんはどこまでも俺が憎たらしいらしい。もう仕方ないな。俺は黙っているか。

「ペンダントははじまりの神殿にあったの。闘技場に僕たちがたまたまいたから良かったんだよ?ダリアに君たちがアドバイスしたんでしょう?」

アイアンさんが頭を振る。

「姫が闘技場などと…」

あ、そっちか。アイアンさんはぐぐぐとヒトの形になる。そうすると俺より年下であることがはっきり分かった。喋り方からしてかなり年配のヒトを想像していたから意外だった。体は俺よりでかい。

「フン、人間。チビだな」

「アイアン…」

ルネが呆れてジト目になっている。アイアンさんはそれを華麗にスルーした。

「確かにダリア嬢にアドバイスしたのは我々です。神殿の周りにはモンスターもあまり沸かないですからね。施設を作るなら神殿の周りに!常識です!ダリア嬢はカイエン様から大切なものを預かったと驚いてましたから」

「なんで直接僕に返してくれないのさ?」

確かに。ルネがむううと膨れているのをみて、アイアンさんは不敵に笑った。

「それは全てこの人間のせいなのです!」

ビシィッと指を差される。え?そうなの?

「理由を分かりやすく説明して?」

「この人間は召喚される直前に不思議な力を持っていると判定されました。だからこそ召喚することになったのですが…」

「それで?」

「この世界に来る際、その能力のほとんどを離散させてしまった!つまり、失敗だったということなのです!」

確かに俺はここに来た時、失敗って言われたな。

「ふーん」

「どうですか!姫様!こんな男はやめて、私のおすすめする方と番になられるというのは?」

「僕、子供はちょっと…」

ルネが冷たい!!!アイアンさんが汗だくになっている。

「姫様!何故この男がそんなに良いのですか?なにか弱みを握られてるのでは?」

ルネはにっこり笑った。

「僕、ショーゴが大好きなんだよね!」

がくっとアイアンさんが地面に崩れ落ちた。気持ちいいくらいの展開だったな。

「ルネ、ありがとう」

「ふふ」

神殿は地下に向かって広がっている。ルネが言うにはアイアンさんが管理しているとのことだ。今まで魔王がいておちおち外出も出来なかったと彼はぼやいていた。なにより瘴気がすごかったらしい。あの重苦しい空気は瘴気だったのか。神殿の最深部には祭壇があった。水槽のようなものが置いてある。

「あれがアイアンの本体。御神体だよ」

ルネが教えてくれた。

「どうだ人間!かしずいてみせろ!」

アイアンさんはチョロそうだなと思ったことは言わないことにする。

「調子に乗らないのー!」

ルネに怒られてアイアンさんはまたしょんぼりしていた。ちょっと面白い。

ペンダントをルネが翳すと、御神体も光り出した。

「龍の加護を得るためにはそれぞれの土地の神々との連携が必要ですから」

だから各地に神殿があるのか。この神殿は誰が作ったんだろう?遥か昔のことなのだろうか。本当に不思議だなぁ。

「アイアン、僕たち行くね。お祝いありがとう」

「姫、何卒お気を付けて!人間、姫を守れよ」

「分かった」

ルネがアイアンさんに手を振る。そして俺の手を握り締めてきた。

「ショーゴ、ごめんね。アイアン、頑固な子なの」

「全然気にしてないよ。それだけルネを好きなんだから」

「ショーゴは僕のことどう思う?」

俺はルネを抱きしめた。さっきは出来なかったからな。

「大好きに決まってるだろう!」

「うん!」

さあ次の神殿を目指そう!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。

カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。 異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。 ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。 そして、コスプレと思っていた男性は……。

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

動物アレルギーのSS級治療師は、竜神と恋をする

葉空
BL
SS級治療師、ルカ。それが今世の俺だ。 前世では、野犬に噛まれたことで狂犬病に感染し、死んでしまった。次に目が覚めると、異世界に転生していた。しかも、森に住んでるのは獣人で人間は俺1人?!しかも、俺は動物アレルギー持ち… でも、彼らの怪我を治療出来る力を持つのは治癒魔法が使える自分だけ… 優しい彼が、唯一触れられる竜神に溺愛されて生活するお話。

【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!

黒木  鳴
BL
「これが人生に三回訪れるモテ期とかいうものなのか……?そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!そして俺はモブっ!!」アクションゲームの世界に転生した主人公ラファエル。ゲームのキャラでもない彼は清く正しいモブ人生を謳歌していた。なのにうっかりゲームキャラのイケメン様方とお近づきになってしまい……。実は有能な無自覚系お色気包容主人公が年下イケメンに懐かれ、最強隊長には迫られ、しかも王子や戦闘部隊の面々にスカウトされます。受け、攻め、人材としても色んな意味で突然のモテ期を迎えたラファエル。生態系トップのイケメン様たちに狙われたモブの運命は……?!固定CPは主人公×年下侯爵子息。くっついてからは甘めの溺愛。

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

処理中です...