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駅から出る際、ボリさんは他の駅員さんに外出することをことわっていた。一応ボリさんもこの鉄道会社で働く駅員さんではあるらしい。バトルトレインのオーナーで、戦闘狂だけど、彼は立派な社会人なのだ。
「ショーゴ、龍姫様、待たせた!さぁ、モンスターを!」
え…と思う前にボリさんがしたこと。それはモンスターをおびき寄せる挑発だった。そんなことしたら。
「グルルルル」
わぁ、デカい熊モンスター出た!ごめん、ブロリア。君はイケメンだからこれとは全然違う。とりあえず剣を構える。ボリさんが熊モンスターに攻撃を仕掛けている。やっぱり強いな。双剣は攻撃を受けても切り返すことで防御もこなす。それに、ボリさんは軽やかに動けるから、相手に攻撃を当てて、下がるヒットアンドアウェイ攻撃が可能だ。また剣撃を加えてボリさんは後ろに跳んだ。俺も負けじと片手剣で攻撃を加える。相手が鋭い爪を俺に向かって振りかざしたので盾で受け止めた。俺だって確実に強くなっているはずなんだ。闘技場のことを思い出せ。
「ショーゴ!一気に行く!」
「はい!」
ボリさんの指示で一気に畳み掛ける。ボリさんは味方だとすごく心強いな。
「グル」
モンスターがズウウンと音を立てて倒れた。よし、勝ったぞ!
「ショーゴ、貴殿に素材を渡しておく」
「え?ボリさんは?」
驚いて尋ねたら、ボリさんは笑った。
「私はこの双剣でどこまで強くなれるか試しているのだ」
なるほど、ゲームでいうところの縛りプレイってやつか。ボリさんならどこまでも強くなれる気がするな。
「ふう、ではもう一戦といこうか」
「勘弁してください!!」
「遠慮しなくても…」
このヒト、本当に戦闘狂だな。呆れていると、ルネが走り寄ってくる。
「ショーゴ、神殿は向こうだよ。急ご」
「うん」
ボリさんはつまらなそうだったけど、なんとか神殿の入口に辿り着いた。ここが「れんびんの神殿」か。
「ふむ。これが神殿か!私は初めて来た!バトルトレインの運行があったのでね」
そうか、ずっと騎士さんたちの育成をしていたのか。
ボリさんが意気揚々と中に入っていく。俺たちも続いた。神殿は必ず地下に繋がる階段がある。途中でボリさんが立ち止まっていた。
「ボリ?どうしたの?」
ボリさんが感じているもの、俺にも分かる。明らかな殺意だ。こんなに強烈なものを感じたのは初めてだ。
「ルネ、ここにも守護精霊が?」
「うん、いるよ。ウランがね。あの子強いからなあ」
おいおいおい、バトル確定かよ。
「行ってみよう」
ボリさんが恐る恐る階段を下り始めた。この殺気をルネは感じないらしい。ルネはやっぱり龍姫だしな。
守るべき存在だと認識されてるんだろう。階段を降りきると、粗末な着物を着た若い男性が背を向けて座っていた。あれがウランか?
「姫様、俺以外の雄と子供を作るなんて…」
あ、またルネ大好きマンだな。
「ウランは種を持たないじゃない」
「それでも俺は姫様が大好きなんだ!他の男を全員殺して俺も死ぬ!」
思いの外過激なヒトだったな。それにボリさんがやる気を出している。
「ならば、私がお相手しようか」
ウランがスラリと抜いたのは細身の太刀だった。
「姫様は俺のだ!!」
ウランが太刀を振りかざす。ボリさんが追い込まれている?いや、何かを狙っているみたいだ。
「紅蓮の炎よ…」
ボリさんが攻撃しながら詠唱を始める。本当に器用なヒトだな。炎の渦がウランを直撃する。ボリさんはウランの刀を双剣で軽く叩いた。ボキッと綺麗に折れる。
「やはり弱っていたか」
「俺の刀が折れちまった」
ウランが折れた刀のそばに座り込んでいる。勝負アリだな。
「ウラン殿、戦士たるもの、武具の手入れを怠ってはならない。ショーゴ、貴殿もようやく分かってきたようだね」
俺も散々武器を放置したからなぁ。
「師匠!俺にもっと強くなる方法を教えてくれ!」
ウランがボリさんに縋り付いている。気持ちは分からなくもないな。
「いいだろう!だが龍姫様のことを諦めるのが条件だ。ショーゴは自らの力で龍姫様の寵愛を受けたのだからね」
ボリさんの言葉にウランはしょんぼり肩を落としている。
「ウラン、御神体は?」
ルネに声を掛けられて、ウランはぱあっと顔を輝かせた。本当にルネが大好きなんだな。ちょっと可愛いかもしれない。御神体にペンダントを翳すとまた一つ光が消えた。納得してくれたようだな。
「姫様、幸せになってくだせえ!」
「もう幸せだよ。ウランもね!」
なんだか清々しい気分になったのは、きっと俺だけじゃないはずだ。
「さて、貴殿たちはこの先のしっととじょうあいの神殿に向かうのか?」
ボリさんにそう尋ねられて、俺たちは頷いた。
「ならば私は仕事に戻ろう。君たちの旅が安全であることを祈る」
さっき誰よりも危険なことしてましたよね?とはさすがに言えないよな。
俺たちはボリさんに手を振って、次の神殿を目指したのだった。次に目指すのは「しっとの神殿」だ。ここから陸路で向かう。こういう時にハクがいてくれると…と思っていたら、ハクがやってきたのでびっくりした。
「ハク!もしかして走ってきたの?」
ハクの全身は汗で光っている。全力で駆けてきてくれたらしいな。
「今日はこのあたりで野宿しよう。川もあるみたいだし、ハクも水浴びするでしょ?」
「ブル」
当然って感じだな。俺は簡易テントを設営して焚き火をした。ルネとハクはすでに水浴びをして遊んでいる。可愛いな。
「ショーゴ!一緒に遊ぼうよ」
ルネに呼ばれたので俺も参戦したのだった。
「ショーゴ、龍姫様、待たせた!さぁ、モンスターを!」
え…と思う前にボリさんがしたこと。それはモンスターをおびき寄せる挑発だった。そんなことしたら。
「グルルルル」
わぁ、デカい熊モンスター出た!ごめん、ブロリア。君はイケメンだからこれとは全然違う。とりあえず剣を構える。ボリさんが熊モンスターに攻撃を仕掛けている。やっぱり強いな。双剣は攻撃を受けても切り返すことで防御もこなす。それに、ボリさんは軽やかに動けるから、相手に攻撃を当てて、下がるヒットアンドアウェイ攻撃が可能だ。また剣撃を加えてボリさんは後ろに跳んだ。俺も負けじと片手剣で攻撃を加える。相手が鋭い爪を俺に向かって振りかざしたので盾で受け止めた。俺だって確実に強くなっているはずなんだ。闘技場のことを思い出せ。
「ショーゴ!一気に行く!」
「はい!」
ボリさんの指示で一気に畳み掛ける。ボリさんは味方だとすごく心強いな。
「グル」
モンスターがズウウンと音を立てて倒れた。よし、勝ったぞ!
「ショーゴ、貴殿に素材を渡しておく」
「え?ボリさんは?」
驚いて尋ねたら、ボリさんは笑った。
「私はこの双剣でどこまで強くなれるか試しているのだ」
なるほど、ゲームでいうところの縛りプレイってやつか。ボリさんならどこまでも強くなれる気がするな。
「ふう、ではもう一戦といこうか」
「勘弁してください!!」
「遠慮しなくても…」
このヒト、本当に戦闘狂だな。呆れていると、ルネが走り寄ってくる。
「ショーゴ、神殿は向こうだよ。急ご」
「うん」
ボリさんはつまらなそうだったけど、なんとか神殿の入口に辿り着いた。ここが「れんびんの神殿」か。
「ふむ。これが神殿か!私は初めて来た!バトルトレインの運行があったのでね」
そうか、ずっと騎士さんたちの育成をしていたのか。
ボリさんが意気揚々と中に入っていく。俺たちも続いた。神殿は必ず地下に繋がる階段がある。途中でボリさんが立ち止まっていた。
「ボリ?どうしたの?」
ボリさんが感じているもの、俺にも分かる。明らかな殺意だ。こんなに強烈なものを感じたのは初めてだ。
「ルネ、ここにも守護精霊が?」
「うん、いるよ。ウランがね。あの子強いからなあ」
おいおいおい、バトル確定かよ。
「行ってみよう」
ボリさんが恐る恐る階段を下り始めた。この殺気をルネは感じないらしい。ルネはやっぱり龍姫だしな。
守るべき存在だと認識されてるんだろう。階段を降りきると、粗末な着物を着た若い男性が背を向けて座っていた。あれがウランか?
「姫様、俺以外の雄と子供を作るなんて…」
あ、またルネ大好きマンだな。
「ウランは種を持たないじゃない」
「それでも俺は姫様が大好きなんだ!他の男を全員殺して俺も死ぬ!」
思いの外過激なヒトだったな。それにボリさんがやる気を出している。
「ならば、私がお相手しようか」
ウランがスラリと抜いたのは細身の太刀だった。
「姫様は俺のだ!!」
ウランが太刀を振りかざす。ボリさんが追い込まれている?いや、何かを狙っているみたいだ。
「紅蓮の炎よ…」
ボリさんが攻撃しながら詠唱を始める。本当に器用なヒトだな。炎の渦がウランを直撃する。ボリさんはウランの刀を双剣で軽く叩いた。ボキッと綺麗に折れる。
「やはり弱っていたか」
「俺の刀が折れちまった」
ウランが折れた刀のそばに座り込んでいる。勝負アリだな。
「ウラン殿、戦士たるもの、武具の手入れを怠ってはならない。ショーゴ、貴殿もようやく分かってきたようだね」
俺も散々武器を放置したからなぁ。
「師匠!俺にもっと強くなる方法を教えてくれ!」
ウランがボリさんに縋り付いている。気持ちは分からなくもないな。
「いいだろう!だが龍姫様のことを諦めるのが条件だ。ショーゴは自らの力で龍姫様の寵愛を受けたのだからね」
ボリさんの言葉にウランはしょんぼり肩を落としている。
「ウラン、御神体は?」
ルネに声を掛けられて、ウランはぱあっと顔を輝かせた。本当にルネが大好きなんだな。ちょっと可愛いかもしれない。御神体にペンダントを翳すとまた一つ光が消えた。納得してくれたようだな。
「姫様、幸せになってくだせえ!」
「もう幸せだよ。ウランもね!」
なんだか清々しい気分になったのは、きっと俺だけじゃないはずだ。
「さて、貴殿たちはこの先のしっととじょうあいの神殿に向かうのか?」
ボリさんにそう尋ねられて、俺たちは頷いた。
「ならば私は仕事に戻ろう。君たちの旅が安全であることを祈る」
さっき誰よりも危険なことしてましたよね?とはさすがに言えないよな。
俺たちはボリさんに手を振って、次の神殿を目指したのだった。次に目指すのは「しっとの神殿」だ。ここから陸路で向かう。こういう時にハクがいてくれると…と思っていたら、ハクがやってきたのでびっくりした。
「ハク!もしかして走ってきたの?」
ハクの全身は汗で光っている。全力で駆けてきてくれたらしいな。
「今日はこのあたりで野宿しよう。川もあるみたいだし、ハクも水浴びするでしょ?」
「ブル」
当然って感じだな。俺は簡易テントを設営して焚き火をした。ルネとハクはすでに水浴びをして遊んでいる。可愛いな。
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