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第一章
50 -ルークside- ⑳
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二人で向かい合って考え込んでいると、姉さんが先に沈黙を破った。
「最近、領内で不審な魔法具が見つかったという報告が度々上がっている」
"魅了"は洗脳魔法に属する。過去にこれで謂われなき罪を被せられ断罪された者がいたり、国が傾いたという歴史もある。だから今は国が使用を禁止している。そんな魔法が付与された魔法具が、領内で出回っているなんて只事ではない。
「近くの街に用というのは、その調査のために?」
「そうだ」
冒険者ギルドのギルドマスターと最後に会った時も、不審な魔道具を見つけたら教えてほしいと言っていた。ギルドにもこの件の調査を依頼していたのだろう。
俺はひび割れたネックレスを姉さんに渡しながら、サラがこれを手に入れた時の状況と、これまでの経緯を説明した。説明を聞いた姉さんは、自分なりの見解を聞かせてくれた。
「お前にかけられていた魔法から推察すると、この魔法具は対象の最も大切な記憶を"忘却"で消すことで心神喪失状態にし、"魅了"がかかりやすいように作られたんだろう」
「それだけでも高度な技術なのに、更に"改竄"も?」
「ああ。だから過度な魔法付与により魔石が耐えられず、こうなったんだ」
姉さんは、俺から受け取ったひびの入ったネックレスを宙に投げては、手に収めるを繰り返した。
そんなことができる錬金術師は、国内でもそう多くない……。
「おい。ぼおっとしてないで、さっさと"忘却"を解呪する準備をするぞ。私は忙しいんだ」
俺が考え込んでいると、姉さんが無表情ですっと立ち上がり、ドアの前まで移動した。
「それとも、消えた記憶はもう必要ないか?」
「消えたのは俺の最も大切な記憶なんだろ?必要ないわけない」
「では急げ。"忘却"の解呪には時間がかかる。まずは、お前の部屋へ行くぞ」
勢いよく立ち上がって、俺は執務室を出る姉さんの後を追った。
この時間帯は子ども達が学習室で勉強をしている。邪魔しないよう裏口から孤児院に入り、足音をひそめながら2階の俺の部屋へ向かった。部屋の前に着くと姉さんは先に入っていき、俺は向かいにあるユイの部屋のドアをなんとなく見つめた。
……もう、いないんだよな。
その事実に、また胸が苦しくなった。姉さんに急かされて、俺は自分の内側から溢れてくる切なさを引きずりながら部屋に入った。
「ベッドに横になれ。始めるぞ」
言われるがままにベッドに横たわると、姉さんは俺を囲うように解呪の魔法陣を展開させ始めた。発動までに時間がかかるこの魔法は、魔力をかなり消耗させる。
「姉さん、ありがとう」
「礼なら"魅了"と"改竄"を解いた、あの歌声の主に言え。洗脳魔法の同時解呪となったら、これ以上に骨が折れるし時間もかかる」
魔法陣の展開が進むにつれて魔力が満ちていく。その影響か、少しずつ眠気が襲ってきた。
「……どうして、ユイの歌で…」
「…単なる憶測だが、彼のスキルと水を題材にした歌が関係しているかもしれん。水は古来より"浄化"や"再生"の力があると伝えられている。その水の力が、彼のスキルによって具現化した可能性が考えられる」
だんだん目も開けていられなくなり、目を閉じて姉さんの声に耳を傾けた。
「さて、魔法陣の展開が完了した。発動すれば、お前はしばらく眠りにつくことになる。言っておくが、目覚めはいつになるか分からんぞ」
「……うん…」
姉さんの声がだんだん遠くなって、意識が落ちていくのを感じる……。
「おやすみ、ルーク。よい夢を」
まるで揶揄うような声でかけられた最後の言葉に、薄れゆく意識の中、俺は気力をふり絞ってぼそりと言い返した。
「姉さんに…愛称、で呼ばれるなんて…、気持ち悪いんだけど…」
「最近、領内で不審な魔法具が見つかったという報告が度々上がっている」
"魅了"は洗脳魔法に属する。過去にこれで謂われなき罪を被せられ断罪された者がいたり、国が傾いたという歴史もある。だから今は国が使用を禁止している。そんな魔法が付与された魔法具が、領内で出回っているなんて只事ではない。
「近くの街に用というのは、その調査のために?」
「そうだ」
冒険者ギルドのギルドマスターと最後に会った時も、不審な魔道具を見つけたら教えてほしいと言っていた。ギルドにもこの件の調査を依頼していたのだろう。
俺はひび割れたネックレスを姉さんに渡しながら、サラがこれを手に入れた時の状況と、これまでの経緯を説明した。説明を聞いた姉さんは、自分なりの見解を聞かせてくれた。
「お前にかけられていた魔法から推察すると、この魔法具は対象の最も大切な記憶を"忘却"で消すことで心神喪失状態にし、"魅了"がかかりやすいように作られたんだろう」
「それだけでも高度な技術なのに、更に"改竄"も?」
「ああ。だから過度な魔法付与により魔石が耐えられず、こうなったんだ」
姉さんは、俺から受け取ったひびの入ったネックレスを宙に投げては、手に収めるを繰り返した。
そんなことができる錬金術師は、国内でもそう多くない……。
「おい。ぼおっとしてないで、さっさと"忘却"を解呪する準備をするぞ。私は忙しいんだ」
俺が考え込んでいると、姉さんが無表情ですっと立ち上がり、ドアの前まで移動した。
「それとも、消えた記憶はもう必要ないか?」
「消えたのは俺の最も大切な記憶なんだろ?必要ないわけない」
「では急げ。"忘却"の解呪には時間がかかる。まずは、お前の部屋へ行くぞ」
勢いよく立ち上がって、俺は執務室を出る姉さんの後を追った。
この時間帯は子ども達が学習室で勉強をしている。邪魔しないよう裏口から孤児院に入り、足音をひそめながら2階の俺の部屋へ向かった。部屋の前に着くと姉さんは先に入っていき、俺は向かいにあるユイの部屋のドアをなんとなく見つめた。
……もう、いないんだよな。
その事実に、また胸が苦しくなった。姉さんに急かされて、俺は自分の内側から溢れてくる切なさを引きずりながら部屋に入った。
「ベッドに横になれ。始めるぞ」
言われるがままにベッドに横たわると、姉さんは俺を囲うように解呪の魔法陣を展開させ始めた。発動までに時間がかかるこの魔法は、魔力をかなり消耗させる。
「姉さん、ありがとう」
「礼なら"魅了"と"改竄"を解いた、あの歌声の主に言え。洗脳魔法の同時解呪となったら、これ以上に骨が折れるし時間もかかる」
魔法陣の展開が進むにつれて魔力が満ちていく。その影響か、少しずつ眠気が襲ってきた。
「……どうして、ユイの歌で…」
「…単なる憶測だが、彼のスキルと水を題材にした歌が関係しているかもしれん。水は古来より"浄化"や"再生"の力があると伝えられている。その水の力が、彼のスキルによって具現化した可能性が考えられる」
だんだん目も開けていられなくなり、目を閉じて姉さんの声に耳を傾けた。
「さて、魔法陣の展開が完了した。発動すれば、お前はしばらく眠りにつくことになる。言っておくが、目覚めはいつになるか分からんぞ」
「……うん…」
姉さんの声がだんだん遠くなって、意識が落ちていくのを感じる……。
「おやすみ、ルーク。よい夢を」
まるで揶揄うような声でかけられた最後の言葉に、薄れゆく意識の中、俺は気力をふり絞ってぼそりと言い返した。
「姉さんに…愛称、で呼ばれるなんて…、気持ち悪いんだけど…」
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