【完結】あなたのいない、この異世界で。

Mhiro

文字の大きさ
125 / 128
【番外編】そこにある、確かなもの。

3. -ユイside- ② *

しおりを挟む

 <生命の輪>を使い始めて3週間程が過ぎた頃、それは突然訪れた。
 年が明けたある日の午後、<ノクターナ>での仕事をしてると、それまで特に変化を感じていなかった身体に違和感を覚えた。身体が熱くて脈がいつもより早い。それに、何だかお腹の奥がむず痒いような疼くような変な感覚が、波のように寄せては引いてを繰り返している。

 風邪…ひいたかな?

 はじめのうちは『なんとなく』の違和感だったが、次第に顔が火照り、頭もぼんやりしてきた。

「ユイ君、大丈夫?顔赤いけど……」

 僕の異変に気づいたディーンさんが、心配そうに声をかけてくれた。

「風邪…ですかね。身体が熱くて…お腹も変な感じがして……」
「お腹も?それって…」

 エイミーにフロアを任せ、ディーンさんは僕を控室まで連れていった。いつもは混み合う時間帯だったが、ここ数日で雪が降り積もったこともあり、店内には数人のお客さんしかいない。
 周囲には誰もいないにも関わらず、ディーンさんは声を潜めて話し始めた。

「ユイ君…もしかしたら、君の身体ができあがったのかも…」
「か…身体が、できあがった…?」
「うん」

 僕が<生命の環>を嵌めていることは、ディーンさんとウィルさんは知っている。ディーンさんも同じ方法で子を授かっているから、僕の今の状態に何か心当たりがあるのかもしれない。

「指輪を嵌めてから半月以上は経ったでしょ?個人差はあるけど、それくらいを過ぎると身体が身籠る準備ができたっていう兆候が表れるんだ。俺は2ヵ月くらいかかったけど、似たような違和感を感じたし」
「じゃあ……僕も?」
「うん…。でも、只の風邪の可能性もあるから、念のため今日はもう帰って休みなさい」
「はい……、ありがとうございます」
「それと、もしこのあと───」

 僕が更衣室に移動しようとしたら、ディーンさんはあることを教えてくれた。半ば信じられなかったが、僕はそのことを念頭におきつつ帰宅の途に就いた。降り積もる雪に足を取られ、歩調を緩めていたらちらちらと雪が降り始めた。
 ルークに一声かけようと店舗のある通りを進み、お店が見えてきたところで僕は足をピタリと止めた。
 お店の前に一台の馬車が停まり、そのそばでルークが貴族と思しき女性を抱きとめていた。
 その光景を目にした瞬間、鳩尾にズクンと鈍い痛みが走り、全身に不快感が広がった。体温が急激に下がっていくのを感じ、心臓は早鐘のように胸を打ちつける。
 僕の存在に気づいたらしい女性は、頬をルークの胸に預けたまま、僕に向けてニヤリと卑しい笑い顔を向けてきた。
 ルークに気づかれたくなくて、僕は急いで脇道に逸れて迂回して家に入った。鍵を開けて中に入ると、ルークが家全体にかけた魔法が発動して暖かな空気が僕を包み込む。それでも、胸の中は冷たいままだった。
 さっき目にした光景を思い出し、折り合いをつけたと思っていた忌々しい記憶が脳裏に蘇った。


 この感覚、覚えがある……。

 雨の中、ルークがサラと口づけを交わしていた場面を目にした時の、あの嫌悪感。

 ルークに拒絶された時の、あの絶望感。


 それらを振り払うように、寝室へと駆け上がった。雪で濡れた衣類を脱ぎ捨てて、備え付けのシャワールームに入ると、ハンドルを捻って温かいお湯を頭から浴びた。一度冷めた熱がまたがぶり返すかもしれなかったが、それよりも今は胸の内から湧き上がる感情を抑える方が厄介だった。

 このあと、ルークの顔をまともに見れるかな……。

 涙が零れそうになってぎゅっと目を閉じると、これまで引いていたお腹の疼きが急に押し寄せ、後孔から熱を持った何かがとろりと溢れ出す感覚に襲われた。

 えっ……、なに?

 恐る恐る触れてみると、いつも使っている潤滑剤のような透明な粘液が後孔を濡らしている。僕はハッとして、帰り際に聞いたディーンさんの言葉を思い出した。

『もし、このあとが勝手に濡れることがあったら、それはもう"準備ができた"っていうサインだからね』

 じゃあ…、今、ルークとシたら……。

 そう思った途端、帰宅前に感じていた熱が再燃し、お腹の疼きが快感にも似た切なさに変わっていく。
 その時、シャワールームのドアをノックする音と共に、僕を呼ぶくぐもった声が聞こえてきた。

「ユイ?」

 ルークの声を聞いた途端、これまでで一番強い疼きが、身体の奥に押し寄せてきた。
 僕は全身濡れたままドアを勢いよく開けると、そこに立っていたルークの胸ぐらを引いて噛みつくように唇を奪った。不意を突かれたルークは戸惑いを隠せない様子で、僕の両肩を掴んで距離をおこうとした。

「…っ!ユイ?どうし──」
「黙って」

 僕はそんなルークの言葉を遮るように再び唇を覆い、舌を絡めて咥内を貪った。淫らに触れ合う舌先の熱が、さっきまで感じていた黒い感情を溶かしていくようだ。
 流したままのシャワーで肌にはりついたルークの服を乱暴に脱がせ、互いに一糸纏わぬ姿となった。僕の普段見せない行動に最初こそ戸惑っていたルークだったが、行為が加熱していくと徐々に自身が屹立し、僕の性感帯を余すところなく愛撫した。
 いやらしく動くルークの手が後孔に及ぼうとした時、僕は彼の手をぐっと掴んでそれを拒んだ。

「ダメ。今日は僕がやる」

 ハンドルを捻ってシャワーを止めると、僕は身体も拭かず、掴んだままのルークの手を引いてベッドへと誘った。そして流されるままに動くルークを押し倒すと、僕は屹立したルークのモノを舌先で弄びながら口に含んだ。

「えっ、ユイ…なんっ…っ」

 ルークは慌てて上半身を起こしたが、抗うことはしなかった。
 口淫する僕の頭に手を添え、ルークは熱い息を漏らした。その淫靡な吐息から見えない表情を想像したら、お腹の奥がゾクゾクして後孔からとろりと愛液がまた溢れてきた。
 ルークが果てる前に、喉元まで咥えたモノを舌を垂らしながら離すと、そこには頬を朱に染めて悩まし気に眉を顰めるルークの顔があった。普段とは違う、僕を求めてやまないというような表情を目にして、胸の内側からじわじわと悦びが湧き上がって思わず頬が緩んだ。

 ルークが、僕を欲しがってる……。

 そんな想いが気分を更に昂揚させ、僕は強引に舌をねじ込むように唇を重ねながらルークに跨った。そして、彼のモノに後孔をあて、愛液を刷り込むように前後にゆっくり腰を動かした。自身の後孔から裏筋にかけて腰を揺らすたび、くちゅっ、くちゅっと濡れた淫音が響き、繋がっていないのに擦り合うところから快感が生まれる。

「あっ、あん、ん…っ。はぁ…これっ、きもちい…っ」
「くっ…っ…ユイっ。もう…ナカ、にっ」

 ルークの熱い視線と切羽詰まったように求めてくる表情にを見ると、もっと焦らしたくなった。自分の中にこんな欲が潜んでいたことに、僕は密かに驚いていた。

「じゃあ…ちゃんとお願いして?」

 腰を揺らしながら、僕はルークの耳元でそっと囁いた。ルークは驚いたように一瞬目を見開いたが、すぐに艶のある笑みを浮かべて僕の頬を両手で包んだ。

「ユイが欲しい。俺を、ナカにれて」

 言葉は懇願しているのに、まるで誘うような顔をしている。ルークの熱を孕んだ瞳を覗き込むと、これから訪れるであろう快感への期待感で全身が粟立つ。

「…ふふっ、よくできました」

 ルークのモノの先端に後孔をあてがい、ゆっくり腰を下ろした。身体が変化したことで濡れるようになったそこはルークを咥え、ナカを擦られながら最奥へといざなった。

「っは、あ…、深…ぃ…っ」

 自身の重みで、今まで届かなかった深いところまで浸蝕されていくようだ。身体が快楽を求めて、自分の意思とは関係なく腰が跳ねる。
 自分で動くのが恥ずかしくて、この体位の時はいつもルークに下から突かれているのに、今はそんな羞恥心を微塵も感じない。

 あたま…おかしくなっちゃったのかも……。

 指を絡ませるように両手を繋ぎ、身体を濡らしていた雫が律動できらきらと宙を舞う。互いの吐息と繋がった部分から響く淫らな音、全身を駆け抜ける快感が僕を絶頂に押し上げていく。

「ル、ぅクっ…!んっ、あっ、イき…そうっ」

「ん…俺、も…」

 自重とルークの下から突き上げられる力が重なり、身体の奥で感じていた快感が一気に極まる。

「ぁ、は、ルークっ…もっ、と、奥にっ…!」

 最奥にルークの先端が当たった感覚と同時に身体が快感で震え、お腹の中で温かなものが広がるのを感じた。
 力が抜けてルークの胸に凭れかかるように頬を寄せ、息を整えながら胸に溢れる悦びに浸った。


 ……これでら、ルークはもう逃げられな───。





 ───…僕、今…何て考えた……?


 


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

忠犬男子が懐きすぎて異世界までついてきた「件」

竜弥
BL
異世界に転生する直前、天貴(てんき)が選べた“持ち物”は三つ── だが、彼はひとつしか持たなかった。 残されたのは部屋と、布団と、そして──忠犬。 「クータンを頼む」。それが、最後の言葉だった。 ぽつんと現代に残された玄太は、天貴の部屋で布団にくるまりながら泣いていた。 でも、捨てられたわけじゃなかった。 天貴が“本当に”持っていきたかったのは、玄太だったのだ。 その事実を知った瞬間、忠犬は立ち上がる。 天貴の武器を手に、異世界転送の手はずを整え、 天貴が今どんな敵と向き合い、何に苦しんでいるのかを知った玄太は、叫ぶ。 ──忘れ物はおれ!…届けに行くっすから! これは、異世界に送られた大好きな先輩を追って、 “忠犬男子”が次元を越えて追いかける、少しおかしくてちょっと泣ける物語。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

ルイとレオ~幼い夫が最強になるまでの歳月~

芽吹鹿
BL
夢を追い求める三男坊×無気力なひとりっ子 孤独な幼少期を過ごしていたルイ。虫や花だけが友だちで、同年代とは縁がない。王国の一人っ子として立派になろうと努力を続けた、そんな彼が隣国への「嫁入り」を言いつけられる。理不尽な運命を受けたせいで胸にぽっかりと穴を空けたまま、失意のうちに18歳で故郷を離れることになる。 行き着いた隣国で待っていたのは、まさかの10歳の夫となる王子だった、、、、 8歳差。※性描写は成長してから(およそ35、36話目から)となります

【8話完結】恋愛を諦めたおじさんは、異世界で運命と出会う。

キノア9g
BL
恋愛を諦め、ただ淡々と日々を過ごしていた笠原透(32)。 しかし、ある日突然異世界へ召喚され、「王の番」だと告げられる。 迎えたのは、美しく気高い王・エルヴェル。 手厚いもてなしと優しさに戸惑いながらも、次第に心を揺さぶられていく透。 これは、愛を遠ざけてきた男が、本当のぬくもりに触れる物語。 ──運命なんて、信じていなかった。 けれど、彼の言葉が、ぬくもりが、俺の世界を変えていく。 全8話。

【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗
BL
この世界には、二つの特別な称号を持つ者たちが存在する。 一つは、絶対的な権力を持つ王の称号――ルガル(lugal)。 もう一つは、ルガルと対をなし、その力を補う「番」――ムル(mul)。 ルガルは生まれながらに選ばれし存在。 国家からエリート教育と地位を与えられ、能力に応じて厳格なランク分けが行われる。 最上位のルガルは、政治さえも動かす絶対者だ。 一方で、ムルは生まれた瞬間にはその正体がわからない。 遺伝子検査や学力テストを経て候補が絞られるが、 最終的に「真のムル」かどうかを見極められるのは――ルガルだけ。 ムルが覚醒したとき、同じ場所に「紋章」が現れ、その瞬間から、ルガルとムルの力は共鳴し始める。 ムルの能力はルガルの力を最大限に引き出す。 ゆえにルガルたちは、自らのムルを求め、時には他人のムル候補を奪い合う。 そして、すべての出生データと遺伝情報を管理するのは、 巨大企業イルジオン――国家をも超える存在。 その頂点に立つ社長、一条レイ。 冷徹なルガルの頂点に君臨する彼が「自分のムル」と出会った。

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

処理中です...