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第一章
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しおりを挟む僕を呼んだあの声は誰だったんだろう……?
聞いたことがある気がするのに、うまく思い出せない。
でも、あの声を思い出すと、なぜか愛しさと切なさが湧き上がってくる………。
「泣かないで──」
声を掛けられたような気がしてうっすらと目を明ける。ぼんやりした意識の中、視線を動かすと誰かがそばに座っているのが分かる。声の主は僕の額に手を当てながら、優しく言った。
「大丈夫、俺がそばにいるから……」
声の主を確認したかったけど、ひんやりした手と優しい声が心地よくて、僕は再び意識を手放した。
それは、懐かしい夢だった。
幼い頃から瞳の色が周りとは違うことで、ジロジロ見られたり心無いことを言われることがあった。それが煩わしくて、そのうち髪を伸ばして瞳を見られないようにしていた。
『隠すなんて…いないよ。結の瞳は………たいで、すご……いなんだから』
僕の前髪をかき上げながら言った理人さんの言葉が、とても嬉しかったのを憶えてる。
でもあの時、理人さんは何て言ってたかな……?
鳥の囀りで目が覚めると、窓から光が差し込んでいた。熱を冷ますために額に乗せられていたであろうタオルは、もう冷たさがなくなっている。起き上がって辺りを見回すと、そこは簡素な部屋だった。自分が寝ているベッド以外に、机とサイドテーブルしかないようだ。そして、ベッドの傍らで座ったまま眠っている人に目を向けた。
中性的な顔立ちで、とてもキレイな銀色の髪をしている。大人びた雰囲気を持っているが、眠っているその顔にはどこか幼さが残っている。
キレイだな…。それに、この人なんだか──。
ぼんやり考えながら観察していると、瞼が震えてゆっくり目を開いた。
雨上がりの空のように澄んだ青色の瞳をしていて、一瞬ドキッとした。
「目が覚めた?気分はどう?」
「うん。気分は……、悪くない」
声の感じからして、男の子…なのかな?
そんなことを考えていると、彼は前髪をあげて僕の額に自身の額をくっつけてきた。至近距離で目が合って思わず固まってしまったけど、彼の瞳の青につい見入ってしまう。
「……ん。熱下がったみたい。良かった」
「ありがとう……。君が看病してくれてた……んだよね?」
「俺だけじゃない。ここの司祭やその奥さんと、交代であなたのこと看てた」
「そうなんだ…。ありがとう」
「待ってて。あなたが目覚めたこと、ふたりに知らせてくる」
司祭がいるということは、ここは教会なのか……。そう考えながら部屋を出て行こうとする彼を目で追っていると、ピタリと止まって振り返りながら微笑んだ。
「あなたの瞳、夜明けの空みたいで、すごくキレイだ」
その言葉に驚いて目を見開く僕を尻目に、彼は部屋を出ていった。
だんだん恥ずかしくなってきて、毛布を頭まで勢いよく被る。熱がぶり返したように顔が熱くなって、鼓動が激しくなる。
『隠すなんて勿体ないよ。結の瞳は夜明けの空みたいで、すごくキレイなんだから』
──ああ、思い出した。
さっき見た夢の中で、理人さんも同じことを言っていたんだ。
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