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第一章
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しおりを挟む病み上がりでもあるから今日のところはこの部屋で過ごして、明日から孤児院の一室に移ることになった。子ども達には夕食の際に、僕のことを話しておくとのことだ。
「明日の朝食前にみんなを紹介しよう。その時にあいさつをしてくれ」
「わかりました」
「それと、ルークが君に会いたがっていたよ」
「…ルークが?」
「ああ。顔には出さないが、妙に落ち着つきがなかった。普段はそんな様子を見みせないから、なかなか新鮮だったよ」
くすくす笑うシグルドさんは、どこか楽しそうだ。普段は大人びた振る舞いをするルークの、年相応な一面を見て嬉しく思ったのかも。
「よければ、夕飯は彼と一緒にどうだ?私やルーシーと一緒に食べるのもいいが、歳が近い子との方が話も弾むだろう」
「えっ…、でも──」
「食事は誰かと一緒の方が、よりおいしく感じるものだよ?」
「……そうですね。お気遣い、ありがとうございます」
「では、時間になったら声をかけるよ。その時にでも、ルークからこの世界のことをいろいろ教わるといい」
シグルドさんの言葉は優しげだが、有無を言わせぬ雰囲気があった。ルークと上手く会話ができるだろうかと不安感を抱きながら、僕は彼との食事を了承した。
シグルドさんとのお茶会が終わって陽が傾き始めた頃、再び誰かが訪ねてきた。ノックに応えて入室を促すと、ルークが顔を覗かせた。
「ユイ、体調はどう?ちょっと早いけど夕食ができたんだ。食べられそう?」
「ありがとう。いただこうかな」
「分かった。すぐ準備するね」
会話が終わってもルークは僕をじっと見つめて動かず、かと思ったら何かを思い出したように部屋を出て行った。
服装は……、このままでいいのかな?
僕は今、膝が隠れる長さのナイトシャツを着ている。普段は着ないタイプの服だし、なんだか心許ない。それに、ここに来た時に着ていた服は洗濯中らしいし。
………ルークと二人だけだし、いいか。
そんな僕の考えを察してくれたのか、次にルークが呼びに来たとき、手にはショールが握られていた。
「その格好だと冷えるから、これを羽織って」
そう言うと僕の正面に立って、身体を抱きこむようにショールをかけてくれた。今朝はいろいろ動揺して気にしてなかったけど、ルークは僕より少しばかり目線が低い。やや上目遣いで見てくる青い瞳に、つい魅入ってしまった。
「今夜は向かいのダイニングで食べよう?ずっと同じ部屋にいたら気が滅入るでしょ?」
彼の気づかいに胸が温かくなって、自然と笑みがこぼれる。
「うん。ありがとう、ルーク」
ルークとの会話を不安に思っていたことが、なんだか馬鹿らしくなった。彼はこんなに温かくて、優しい言葉をかけてくれるのに。
理人さんがいなくなって以降、久しく感じていなかった胸の温かさに気を取られていて、その時ルークが僕を見つめているのに気づかなかった。
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