【完結】あなたのいない、この異世界で。

Mhiro

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第一章

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いつの間にか外は夕暮れ時になっていて、西の空は茜色に染まっていた。
ルークと並んで歩きながら、僕は周辺を見渡した。道の途中には作物を育てる畑が遠くまで広がり、側で流れる川は土地を潤している。

「ルークの言ってたとおり、ここは長閑のどかでいい所だね」
「気に入った?」
「うん。こんな穏やかな景色を見られるなんて──」

理人さんも、こういう景色が好きだったな……。

景色に見とれてつい足を止めてしまった。でもルークは何も言わず、僕に合わせてくれている。

「立ち止まってごめんね。もうすぐ日が暮れるし、急ごうか」
「うん。また昼間にゆっくり来よう?」


孤児院からさほど遠くない場所に、院長が言っていたパン屋があった。可愛らしいおもむきの建物で、ファンタジー映画に出てきそうな外観をしていた。既に閉店しているらしく、ガラス窓のついたドアにはカーテンが引かれていた。

「あれ?閉まってる。遅かったかな?」
「いや。この時間帯は裏口に回れば、店主が対応してくれるよ。こっち」

ルークはそう言うと、店の裏手の方に向かった。何度もこの店に来ているのか、慣れている様子だ。裏口の前に到着すると、ルークはドアをノックした。

「こんばんは、ルークです。パンを受け取りに来ました」

するとドアが開き、中から白い調理服を着た中年の男性が出てきた。

「おぉルーク、来たか!わざわざ悪いな。サラが急に熱出したもんだから」
「大丈夫だよ。いつもありがとう」
「おっ?そっちのにぃさんはもしかして…」

男性が僕を見つけて、興味津々な顔をして尋ねてくる。するとルークが男性と僕の間に入ってくれた。

「彼はユイ。今日から司祭様の補佐をすることになったんだ。ユイ、この人が店主のトミーさん」
「はじめまして、ユイといいます。これからお世話になります」
「アランの言ってたとおり、えらいべっぴんさんだなぁ!」

べっぴんさんって……、アランは何を言ったんだ?もしかして、さっき知り合ったばかりの僕のことを、変な風に村中に言いふらしてないよね?

「おじさん、ユイをあまり困らせないで。それより…」
「おぉそうだ、パンだったな。ちょっと待ってな!」

そう言うと、トミーさんは厨房の中に戻った。僕がふぅと溜息をついたとき、2階の方からパタパタと階段を駆け降りる音が聞こえてきた。

「ルークが来たって!?」

長い茶髪を乱した女の子が、厨房に飛び込んできた。寝間着にショールを羽織って、顔を紅潮させている。

「おい、サラ!お前熱出てんだろ!?ベッドで寝とけ!」
「ルークが来てるのに、寝てなんていられない!」
「サラ、おじさんのいうとおりだよ。早くベッドに戻って」

やれやれという顔をしながら、トミーさんが紙袋に入れたパンを僕に手渡してくれた。

「まったく…。ルークの前だといつもこうだ。騒がしくしちまって悪ぃな、ユイ。ほら、子ども達とたくさん食べな!」
「ありがとうございます、トミーさん」

ルークの前だといつもこうなんだ…。きっと彼女は、素直な子なんだろう。
そんな風に考えていたら、急に彼女の関心が僕に向いた。

「ねぇ、その人誰?」
「後でおじさんから聞いて。ユイ、帰ろう」
「えぇ~、もう少しいいじゃん」
「ダメ。みんな待ってる」
「もぅ~。じゃあ熱が下がったら、また孤児院に行くね!」
「はいはい」

そうしてパン屋を後にして、僕達は孤児院に向かって足早に歩いた。さっきのルークとサラの会話を思い出すと、なんだか微笑ましくなる。

「どうかした?」

僕の表情を見て、ルークが不思議そうに聞いてきた。

「いや。ふたりは仲が良いんだなぁと思って」
「言っとくけど、ユイが思っているような関係じゃないからね?」
「ふぅん?」

僕が含み笑いをしたら、ルークがちょっと不機嫌な顔を見せた。それを見たら、なんだかちょっと揶揄いたくなってしまった。
でもこれ以上何か言ったら怒るような気がするから、今はやめておこう。

サラはともかく、ルークに全くがないのは、見ていて分かったから。


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