【完結】あなたのいない、この異世界で。

Mhiro

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第一章

24 -ルークside- ⑤

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夜の礼拝堂でのユイとの時間は、俺にとってかけがえのないものとなった。
ユイは俺が触れても一切抵抗することなく、それを受け入れてくれた。もちろん、節度は弁えている。
本当は想いを告げたい。でも、そうすることでユイと距離ができたらと思うと、はっきりと言葉にできなかった。

そうこうしている間に、ユイがこの世界に来て半年が過ぎた。目に見えた変化は髪の長さくらいだが、ユイは日ごとに綺麗になっている気がする。
背が伸びて同じ目線になっても、ユイは年齢をたてにして俺を子ども扱いする。全く意識されていない気がして、少し癪に障る。だから、いつもより少し強めに攻めてみた。

ユイの指先に唇をあて、ゆっくりむようにキスをしてリップ音をたてる。

「大人なんだから、これくらいの子どものイタズラは許してくれるよね?」

煽るように笑顔で言ったら、ユイは焦って顔を赤くした。それを見たら満たされた気分になって、つい笑い声を上げてしまった。



収穫祭が間近になると、当日の礼拝の段取りや持ち寄る料理の打ち合わせで、ユイは慌ただしく動いていた。
アランさんと踊ることになったと聞いたときは胸がもやもやして、ちょっと脅して警戒心を持たせた。けど俺と踊ることを当たり前のように言ってきたときには、アランさんのことはすぐに頭から消えた。

そして収穫祭当日。
初めて見る白の祭服姿は凛としていて、ユイの艶やかな黒髪がよく映えた。

「髪に花飾ったら、花嫁っぽく見えるな」

ライルの一言にちょっと頷いてしまった。同性婚が認められているこの国で、男性同士の一般的な結婚式では、白のタキシードかユイが今着ているような長衣を着る。そして髪が長い人は結い上げて、花をあしらってより華やかな見た目にする。ユイが髪に花を飾れば、ライルのいったとおり、まさに花嫁だ。

「本当の花嫁みたいで綺麗だよ?」

そう耳元で囁いたら、頬がほんのり赤くなっていた。しかし、礼拝が始まるとその時の様子が一変して、凛とした雰囲気でピアノを奏でていた。そんなユイから、俺はずっと目が離せなかった。



礼拝が終わると、シグルド司祭に連れられて先に収穫祭の会場に向かった。本当はユイと一緒に行きたかったけど、ユイは準備があるから院長と後から一緒に行くことになった。

会場内の決まったテーブルにつき、ユアンとふたりで料理が並ぶブースまで取りに行った。
ブースには料理を持ち寄った各家庭の夫人や、それを手伝いに来た妙齢の女性たちが立っている。

「ルーク!この料理持って行って!」
「ちょっと!そんなに押し付けないでよ!ルークっ、これも!」
「こっちもどうぞ!」

持っていたトレイに次から次へと料理を乗せられ、あっという間にいっぱいになった。げんなりしてテーブルに戻ると、リリィとアリスを連れたユイの後ろ姿が見えた。髪を綺麗に編まれ、ところどころに小さな白い花をあしらっている。
黒い髪に青のリボンが一緒に編み込まれていると気づいたとき、自分の色を身に着けてくれているようで胸が高鳴った。


食事が終わったら、各々好きに行動を始めた。ユイは院長の手伝いに行くと言い、俺も同行しようと席を立ったところで、サラに催し物を見に行こうと声を掛けられた。

「無理。今からユイと院長先生の手伝いに行くから」

俺に断られて泣きそうな顔をするサラを見たユイは、俺に一緒に行くよう促してきた。

「ルーク、サラと一緒に行っておいでよ。僕はひとりで大丈夫だから」
「………分かった。サラ、行こう」

ユイが他の男に絡まれないよう一緒にいたいが、彼の優しさを無碍にすることもできない。仕方なく、俺はサラと行動することにした。でも、サラと一緒にいる間もユイのことばかりを考えて、何をしていたのか全く覚えていなかった。


陽が落ち始めると、楽団の演奏を皮切りにダンスの時間が始まった。そして音楽が聞こえてきたら、サラは俺の手をとってフロアに引っ張っていった。

「一緒に踊ろうよ!」

ユイは子ども達と踊る約束をしているから、恐らくフロアのどこかにいるはずだ。早く探しに行きたいのに、サラがなかなか腕を放してくれない。サラと一緒にいると他の女性が寄ってこないからいいけど、そろそろ限界だった。
数曲踊ったらサラが別の人から誘いを受けて、そこでようやく解放された。また誰かに誘われないように、俺は急いでフロアを離れた。

離れたところからフロアを見渡していると、すぐにユイを見つけた。ゆったりした音楽に合わせてアランさんと踊っている。寄り添い合っているふたりを見て、胸の中から黒いものが沸々と湧き上がってきた。

あれだけ言ったのに……!

早くふたりを引き離したくてフロアに向かっている途中で、ユイがアランさんにもたれかかっている姿を目にしたときには、もう何も考えられなくなっていた。
離れる様子もなく抱き合っているふたりを引き離して、気が付けばユイの手を引いて喧騒から離れた場所へ足を向けていた。


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