異世界で王城生活~陛下の隣で~

文字の大きさ
7 / 57

4-3

しおりを挟む
 残された陛下と私。
 沈黙が続く。
 話題を変えなくてはと思った矢先、陛下が何事も無かったかのように話し掛けて来た。

「ユリカ、この黒いのは何だ?」

 シリウス陛下が手に持ったのは長財布。

「これはお財布です。開けてみて良いですよ」
 暫く眺めていた彼は被せの部分を開いて、中身をじっと見ている。
「こっちの国はお金ってどんな感じなんですか?」
「金か。金貨、銀貨、大銅貨、銅貨が主だな。金貨は普通滅多に使わんが」
 おー、ホントに物語に出てくる感じね。
「それはどうやって持ち歩くんですか?」
「皮の巾着袋だな」
「成る程。財布ってそれと同じ役目ですよ」
「いやでも、こんな薄くては」
 私は中身を出して見せる。お札数枚にカードが二枚、ポイントカード。そしてファスナー部分を開き小銭も並べてみせた。
「えっと、何を基準にしたら良いんだろう?では、銅貨一枚で何が買えますか?」

 そこへキャステルさんが戻って来た。ん、スッキリしたお顔をしてらっしゃる(笑)

「銅貨一枚?おい、キャステル何が買えるんだ?」
 陛下は銅貨一枚の買い物などしたことがないのでしょうね。後ろのキャステルさんを呼び隣に座る様に指示をした。
「銅貨一枚ですか……そうですねー。一枚でこのくらいのパンひとつでしょうか」
 自分の手のひらを上の向けて見せてくれたから、何となくメロンパン位の大きさを予想した。
「じゃぁ、普通に食堂とかで一食たべるのは?」
「城下の食堂であればだいたい銅貨五枚から十五枚の間ですかね」
 そうなのか、何となく一食五百円から千五百円と思えば、銅貨一枚百円くらいかな。
「銅貨十枚で大銅貨一枚、大銅貨十枚で銀貨一枚、銀貨十枚で金貨一枚・・・実際に見てみるか?」
「はい、お願いします!」
 従者の人がお金を取りに行っている間、私は周りを見回し観察をしていた。
 ファンタジーな世界といっても生活はあまり変わりないみたいだ。
 
「失礼します」
 そんなくだらないことを考えながらお茶を啜っていると、侍従さんがワゴンを押して部屋に入って来た。
 ワゴンの上にはパンパンに膨らんだ巾着袋が4つ置いてある。
 するとキャステルさんが端から袋を開けて、それぞれの袋から数枚ずつコインを出して並べてくれた。

「これが銅貨です」(百円玉位の大きさだね)
「そして銅貨十枚でこの大銅貨となります」(五百円玉くらいだわ)
「銀貨は大銅貨十枚」(大きさ的には大銅貨と一緒だ)
「最後が金貨です。銀貨十枚分ですよ。大きな買いもの以外庶民には縁遠いものですね」
 なんとなく、勝手に換算すると
 銅貨1→百円
 大銅貨1→千円
 銀貨1→一万円
 金貨1→十万円て、感じでしょうか。
 私はそれぞれのコインの下に財布から出した小銭とお札を並べる。
「勝手な解釈ですけど、私の国のお金に置き換えるとこんな感じです」

「ほう、銅貨もあるようだが?」
「ええ、先ほどのお話を聞いていたら、この十円硬貨と同じ価値のものが無かったので外しました。私の国の銅貨十円玉一枚ではパンは買えませんからね。十枚でこちらの銅貨一枚と思うと百円で惣菜パン一個かな」
「ふむ。で、大銅貨がこの紙切れ(千円札)一枚、銀貨がこの紙一枚だというのか?(一万円札)」
「そうです、普段の買い物は大銅貨一枚分のこのお札数枚と、銀貨一枚分のこのお札を使います」
「だからこの薄い財布で間に合うのか」
 陛下が感心してらっしゃいますよ。お札についている模様も気になるみたいだ。

 私は一万円札を手に取り、絵柄や数字の部分を指で軽くこすってみせる。
「この模様は僅かな凹凸があり、目の不自由な人でも識別できるようになっているんです。ほら、こっちのお札は模様が違うでしょう?」
 陛下とキャンセルさんは、それぞれのお札を指先でスリスリしながら感触を見比べている。
「我々には直ぐには分からんな」
 キャステルさんも陛下に言葉に頷いている。
 フォノグラムもあるが説明も面倒なのでやめておく。
「他にもお札の偽造防止の為にいろいろ仕組まれていますよ」
「印刷の技術も素晴らしいな」
「ところで、ユリカ嬢。この四角い物は何でしょうか?」
 あらま、キャステルさん。さっきまで「この者」とか「オマエ」とか言ってたのに、急にお嬢様呼ばわりに変えて来た。
「これね、こっちはキャッシュカード。自分のお金を銀行というところに預けて置いて、必要な時にこれを使って引き出すのよ。
 こっちはクレジットカード。私は殆どこれで買い物をしているの。その人や親の信用度によって限度額が設けられていて、次の月に一括、もしくは分割で支払うシステムになってるの」

 シリウス陛下が溜息を一つ。
「はぁ、ユリカが異世界人だと云う実感が沸いて来たよ。こちらと全く異なる世界のようだ」
「科学はかなり先に行っていますね。私の感覚から言ったらここは……服装で言うと、ヨーロッパでいう十五、六世紀?私から見たらおとぎ話や昔話の世界ですよ」
「おとぎ話に昔話だと?」
 目の前の二人はガックリと肩を落としてうな垂れてしまった。

 それから私は日本での生活を二人に教えてあげた。その度に唸ったり驚いたり、溜息を吐いたしていて見ていて飽きなかった。

「ユリカ、あのキャンちゃんだっか?見せて貰えないか?」
「えっ、いいですけど」
 どうやら引く馬も無しに、自力で陛下を追い掛けて来たキャンちゃんが気になっていたようだ。
 ぎゅるるる~~~。
「くくっ!」
 その時私のお腹が鳴って二人に笑われた。めちゃくちゃ恥ずかしい。
「では、昼も近いから食事をしてから行くとしよう」
 陛下がベルを鳴らして侍従さんを呼びランチをお願いしてくれましたよ。

 食事は普通にサンドイッチが出て来た。
 パンは少し硬かったけどそこそこイケる。
「王様って言っても結構質素なんですね」
「そうだな、でも夜はもっと豪華だぞ」
「ほんとに?楽しみ~♪」
 会ってまだ二時間も経たないというのに、何故か友人感覚で話が出来てしまう。
 キャステルさんも最初は怖そうな感じだったけれど、さっきの顔を見てからは、なんか親近感を覚えてしまった。

 自動翻訳……言葉が通じるって本当に嬉しい。
 一人ぼっちでこんな世界に来てしまって、言葉も分からなかったらと思うと、ゾッとする。
 会えたのが陛下で良かった~。
 私はその事に心から感謝した。

【それは。君が落ちた場所が良いところだったから心配いらないと思う】
 そうか、もどきが言ってたあの言葉信じて見るわ。

 神様ありがとう♪

 私たちはサンドイッチをペロリと平らげ、キャンちゃんの待つ小屋へと向かったのでした。




**********
※お金の価値は分かり易くしましたが、これ以降出てくる事は殆どございませんので流してくださいませ。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!

楠ノ木雫
恋愛
 貧乏な実家を救うための結婚だった……はずなのに!?  貧乏貴族に生まれたテトラは実は転生者。毎日身を粉にして領民達と一緒に働いてきた。だけど、この家には借金があり、借金取りである商会の商会長から結婚の話を出されてしまっている。彼らはこの貴族の爵位が欲しいらしいけれど、結婚なんてしたくない。  けれどとある日、奴らのせいで仕事を潰された。これでは生活が出来ない。絶体絶命だったその時、とあるお偉いさんが手紙を持ってきた。その中に書いてあったのは……この国の大公様との結婚話ですって!?  ※他サイトにも投稿しています。

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

【完結】身分を隠して恋文相談屋をしていたら、子犬系騎士様が毎日通ってくるんですが?

エス
恋愛
前世で日本の文房具好き書店員だった記憶を持つ伯爵令嬢ミリアンヌは、父との約束で、絶対に身分を明かさないことを条件に、変装してオリジナル文具を扱うお店《ことのは堂》を開店することに。  文具の販売はもちろん、手紙の代筆や添削を通して、ささやかながら誰かの想いを届ける手助けをしていた。  そんなある日、イケメン騎士レイが突然来店し、ミリアンヌにいきなり愛の告白!? 聞けば、以前ミリアンヌが代筆したラブレターに感動し、本当の筆者である彼女を探して、告白しに来たのだとか。  もちろんキッパリ断りましたが、それ以来、彼は毎日ミリアンヌ宛ての恋文を抱えてやって来るようになりまして。 「あなた宛の恋文の、添削お願いします!」  ......って言われましても、ねぇ?  レイの一途なアプローチに振り回されつつも、大好きな文房具に囲まれ、店主としての仕事を楽しむ日々。  お客様の相談にのったり、前世の知識を活かして、この世界にはない文房具を開発したり。  気づけば店は、騎士達から、果ては王城の使者までが買いに来る人気店に。お願いだから、身バレだけは勘弁してほしい!!  しかしついに、ミリアンヌの正体を知る者が、店にやって来て......!?  恋文から始まる、秘密だらけの恋とお仕事。果たしてその結末は!? ※ほかサイトで投稿していたものを、少し修正して投稿しています。

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

処理中です...