35 / 57
26キャンちゃんで添い寝?
しおりを挟む
「ユリカ、そんなところで寝ていると風邪をひくぞ」
「ん、…………」
メルヴィンの上着を羽織っている友梨香の頬にかかる髪を、後ろへと長い指で流しながら優しく声を掛ける。
――まったく、無防備な姿で……
ほんの少し反応はあったもののまたすぐに寝てしまったので、シリウスは諦めてユリカの隣に腰を下ろした。
ワインで少しピンクに染めた目尻から頬に掛けて涙の跡が見えた。
メルヴィンが、故郷を思い出し寂しそうにしていたと言っていたが。
――可哀相に……
少し乾いている涙の跡を親指でなぞると眉間にほんの少し皺を寄せた。
グラスに残っていたワインを口にしながら優しく友梨香の頭を撫でる。
――風呂に浸かっただろうにすっかり身体が冷えてしまっているではないか。
メルヴィンの上着を取り丁寧にたたむと反対側の椅子の上に置いて、友梨香を抱き上げた。
――まだ外は宵の口だ。少し仮眠を取れば夕餉の時間になるだろう。
シリウスは抱き上げた友梨香を、後部のベッドに運び自分も横に添い寝する。
この国の女性と比べると一回り小さな身体を抱き寄せた。
「んん」
吐息のような声を洩らし友梨香がシリウスの胸に頭を摺り寄せて来た。
――トクン――
シリウスの胸の中にあった何かがすとんと落ち波紋のように広がりじわりと消えていく。
小さく息を吐いた。
何時ぞ夜はユリカが私の疲れた身体を解してくれた。
しかし、その後元カレの話を聞いて無性に腹が立った。
ユリカが処女であろうと無かろうとそんな事は気にしていない。
ただ、他の男のからだに触れたという事は、彼女も触れられていたということだ。
それが何故か気に食わなかったのだ。
しかし、それは過去の事。
これからは誰に触れさせない。
――ユリカにとってはこの異世界でたった一人。
守ってやらなくては……
庇護欲ではなく私はユリカのことを愛し始めているのだと自覚する。
胸に寄り添うユリカの頭に口づけ自分も瞳を閉じた。
*ー*ー*
友梨香は夢を見ていた。
天国のような雲の上の世界に自分はいるようだ。
真綿に包まれているかのように暖かく心地が良い。
ずっとこの温もりの中にいたい。
そう思った。
赤子の様に無防備な自分の頭を優しく撫でてくれている大きな手。
『お爺ちゃん?』
しかし、その手は皺も無く艶やかだ。指に何かのタコがるようにも思うが、はっきりとしたものではなく一部分が少し硬く感じるくらいで頬を撫でられても気になるほどでは無かった。
『パパ?それともお兄ちゃん?』
目を開けて確認したいけれど、どうやっても瞼が開かないのだ。
『誰なの?』
聞いても応えは返って来なかった。
不思議に思いながらも温もりの心地良さに負けて、また眠りにと落ちていく。
目が覚めると自分の横に確かな温もりが残っていた。
上半身を起こし車内を見回すとソファに金髪を束ねた後ろ姿が見えた。
「陛下?」
友梨香の声に振り向いたのはシリウスに間違いなかった。
彼は少し前に起きてソファへと移動していたのだ。
「起きたか、ユリカ」
「ど、どうして陛下がここにいるの?ルードさんは?」
「ユリカが酔って寝てしまいそうだから迎えに来てくれとメルヴィンからの伝言が侍女に来た」
「あたし、寝ちゃったのね。でも陛下が迎えに来てくれるなんて。忙しいんでしょう?ごめんなさい」
「気にするな。今日の執務はもう終わっている」
――コンコン――
誰かがキャンちゃんのドアをノックしている。
「ユリカが起きた。開けて良いぞ」
シリウスの声にドアが開くとそこにはキャステルとルードウィックが少し頬を赤らめ立っていた。
「そこそこ飲んだようだな」
「ええ、約二時間お待ちしていましたらね」
キャステルの言葉に慌ててベッドから出て来た友梨香。
「えっ、私そんなに……ごめんなさい、キャステルさんにルードさん」
「いいんですよ、ユリカ嬢。陛下も良いカラダ休めになったようですから」
と、笑顔で答える。
――ああ、もしかしてあの温もり。やっぱり陛下が隣で寝ていたんだ。
友梨香は温もりの正体に気付き赤面してしまう。
「そろそろ夕餉の時間であろう。戻るか」
「「はい!」」
声を揃えるキャステルとルードウィック。
友梨香も自分の上着を羽織りながらソファの上に畳まれた騎士の上着を見つけた。
「これは……」
「ああ。メルヴィンがユリカに掛けてくれていた物だ」
「そうだったんですね。ありがとうルードさん。今度は非番の時にゆっくり飲みましょう」
上着を返して申し訳なそうにユリカは肩を竦めた。
「はい、喜んで」
「ユリカ嬢、次回は私もご一緒しますよ。護衛とはいえ、男と2人ではよくありませんからね。
ねっ、陛下?」
キャステルがチラリとシリウスの顔を見ながら言った。
「申し訳ありません。自分も気を付けます」
「ああ、キャステルの言う通りだ。良からぬ噂が立つかもしれんからな」
ポンと友梨香の頭に大きな手を乗せてシリウスにも念を押されてしまった。
「ハ―イ、分かりました」
先に車から降りた陛下に手を差し出され、その大きな手に自分の手を重ねキャンちゃんのステップを降りる。
ぺこりと頭を下げ、顔を上げると優しい笑顔が三つ並んでいた。
***************
※今宵は久々の女子会?なので早めの投稿させて頂きました~(^_^.)
「ん、…………」
メルヴィンの上着を羽織っている友梨香の頬にかかる髪を、後ろへと長い指で流しながら優しく声を掛ける。
――まったく、無防備な姿で……
ほんの少し反応はあったもののまたすぐに寝てしまったので、シリウスは諦めてユリカの隣に腰を下ろした。
ワインで少しピンクに染めた目尻から頬に掛けて涙の跡が見えた。
メルヴィンが、故郷を思い出し寂しそうにしていたと言っていたが。
――可哀相に……
少し乾いている涙の跡を親指でなぞると眉間にほんの少し皺を寄せた。
グラスに残っていたワインを口にしながら優しく友梨香の頭を撫でる。
――風呂に浸かっただろうにすっかり身体が冷えてしまっているではないか。
メルヴィンの上着を取り丁寧にたたむと反対側の椅子の上に置いて、友梨香を抱き上げた。
――まだ外は宵の口だ。少し仮眠を取れば夕餉の時間になるだろう。
シリウスは抱き上げた友梨香を、後部のベッドに運び自分も横に添い寝する。
この国の女性と比べると一回り小さな身体を抱き寄せた。
「んん」
吐息のような声を洩らし友梨香がシリウスの胸に頭を摺り寄せて来た。
――トクン――
シリウスの胸の中にあった何かがすとんと落ち波紋のように広がりじわりと消えていく。
小さく息を吐いた。
何時ぞ夜はユリカが私の疲れた身体を解してくれた。
しかし、その後元カレの話を聞いて無性に腹が立った。
ユリカが処女であろうと無かろうとそんな事は気にしていない。
ただ、他の男のからだに触れたという事は、彼女も触れられていたということだ。
それが何故か気に食わなかったのだ。
しかし、それは過去の事。
これからは誰に触れさせない。
――ユリカにとってはこの異世界でたった一人。
守ってやらなくては……
庇護欲ではなく私はユリカのことを愛し始めているのだと自覚する。
胸に寄り添うユリカの頭に口づけ自分も瞳を閉じた。
*ー*ー*
友梨香は夢を見ていた。
天国のような雲の上の世界に自分はいるようだ。
真綿に包まれているかのように暖かく心地が良い。
ずっとこの温もりの中にいたい。
そう思った。
赤子の様に無防備な自分の頭を優しく撫でてくれている大きな手。
『お爺ちゃん?』
しかし、その手は皺も無く艶やかだ。指に何かのタコがるようにも思うが、はっきりとしたものではなく一部分が少し硬く感じるくらいで頬を撫でられても気になるほどでは無かった。
『パパ?それともお兄ちゃん?』
目を開けて確認したいけれど、どうやっても瞼が開かないのだ。
『誰なの?』
聞いても応えは返って来なかった。
不思議に思いながらも温もりの心地良さに負けて、また眠りにと落ちていく。
目が覚めると自分の横に確かな温もりが残っていた。
上半身を起こし車内を見回すとソファに金髪を束ねた後ろ姿が見えた。
「陛下?」
友梨香の声に振り向いたのはシリウスに間違いなかった。
彼は少し前に起きてソファへと移動していたのだ。
「起きたか、ユリカ」
「ど、どうして陛下がここにいるの?ルードさんは?」
「ユリカが酔って寝てしまいそうだから迎えに来てくれとメルヴィンからの伝言が侍女に来た」
「あたし、寝ちゃったのね。でも陛下が迎えに来てくれるなんて。忙しいんでしょう?ごめんなさい」
「気にするな。今日の執務はもう終わっている」
――コンコン――
誰かがキャンちゃんのドアをノックしている。
「ユリカが起きた。開けて良いぞ」
シリウスの声にドアが開くとそこにはキャステルとルードウィックが少し頬を赤らめ立っていた。
「そこそこ飲んだようだな」
「ええ、約二時間お待ちしていましたらね」
キャステルの言葉に慌ててベッドから出て来た友梨香。
「えっ、私そんなに……ごめんなさい、キャステルさんにルードさん」
「いいんですよ、ユリカ嬢。陛下も良いカラダ休めになったようですから」
と、笑顔で答える。
――ああ、もしかしてあの温もり。やっぱり陛下が隣で寝ていたんだ。
友梨香は温もりの正体に気付き赤面してしまう。
「そろそろ夕餉の時間であろう。戻るか」
「「はい!」」
声を揃えるキャステルとルードウィック。
友梨香も自分の上着を羽織りながらソファの上に畳まれた騎士の上着を見つけた。
「これは……」
「ああ。メルヴィンがユリカに掛けてくれていた物だ」
「そうだったんですね。ありがとうルードさん。今度は非番の時にゆっくり飲みましょう」
上着を返して申し訳なそうにユリカは肩を竦めた。
「はい、喜んで」
「ユリカ嬢、次回は私もご一緒しますよ。護衛とはいえ、男と2人ではよくありませんからね。
ねっ、陛下?」
キャステルがチラリとシリウスの顔を見ながら言った。
「申し訳ありません。自分も気を付けます」
「ああ、キャステルの言う通りだ。良からぬ噂が立つかもしれんからな」
ポンと友梨香の頭に大きな手を乗せてシリウスにも念を押されてしまった。
「ハ―イ、分かりました」
先に車から降りた陛下に手を差し出され、その大きな手に自分の手を重ねキャンちゃんのステップを降りる。
ぺこりと頭を下げ、顔を上げると優しい笑顔が三つ並んでいた。
***************
※今宵は久々の女子会?なので早めの投稿させて頂きました~(^_^.)
42
あなたにおすすめの小説
元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!
楠ノ木雫
恋愛
貧乏な実家を救うための結婚だった……はずなのに!?
貧乏貴族に生まれたテトラは実は転生者。毎日身を粉にして領民達と一緒に働いてきた。だけど、この家には借金があり、借金取りである商会の商会長から結婚の話を出されてしまっている。彼らはこの貴族の爵位が欲しいらしいけれど、結婚なんてしたくない。
けれどとある日、奴らのせいで仕事を潰された。これでは生活が出来ない。絶体絶命だったその時、とあるお偉いさんが手紙を持ってきた。その中に書いてあったのは……この国の大公様との結婚話ですって!?
※他サイトにも投稿しています。
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
【完結】身分を隠して恋文相談屋をしていたら、子犬系騎士様が毎日通ってくるんですが?
エス
恋愛
前世で日本の文房具好き書店員だった記憶を持つ伯爵令嬢ミリアンヌは、父との約束で、絶対に身分を明かさないことを条件に、変装してオリジナル文具を扱うお店《ことのは堂》を開店することに。
文具の販売はもちろん、手紙の代筆や添削を通して、ささやかながら誰かの想いを届ける手助けをしていた。
そんなある日、イケメン騎士レイが突然来店し、ミリアンヌにいきなり愛の告白!? 聞けば、以前ミリアンヌが代筆したラブレターに感動し、本当の筆者である彼女を探して、告白しに来たのだとか。
もちろんキッパリ断りましたが、それ以来、彼は毎日ミリアンヌ宛ての恋文を抱えてやって来るようになりまして。
「あなた宛の恋文の、添削お願いします!」
......って言われましても、ねぇ?
レイの一途なアプローチに振り回されつつも、大好きな文房具に囲まれ、店主としての仕事を楽しむ日々。
お客様の相談にのったり、前世の知識を活かして、この世界にはない文房具を開発したり。
気づけば店は、騎士達から、果ては王城の使者までが買いに来る人気店に。お願いだから、身バレだけは勘弁してほしい!!
しかしついに、ミリアンヌの正体を知る者が、店にやって来て......!?
恋文から始まる、秘密だらけの恋とお仕事。果たしてその結末は!?
※ほかサイトで投稿していたものを、少し修正して投稿しています。
『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』
ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています
この物語は完結しました。
前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。
「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」
そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。
そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる