盲目王子の策略から逃げ切るのは、至難の業かもしれない

当麻月菜

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そういうことをされたら、思わず触れてしまいたくなるのは仕方がない

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「──── と、いうわけで殿下、今日から私の護衛はフレシアさんにお願いしたいと思います」
「ん。ノアがそうしたいなら、それで良いよ」


 ここは離宮の食堂。そして現在は夕方をだいぶ過ぎた頃、夕食のお時間である。

 本日もシェフが腕をふるってくれたキノコ料理がテーブルに並べられているが、それを食す前にノアは挙手をしてきっぱりと自己主張させてもらった。

 ただ、自分の主張が通ったことには喜ぶべきなのだけれど、拍子抜けするほどあっさり通ってしまった為、有り余る意気込みをどう処分していいのかわからず、ちょっとだけ途方に暮れてしまうノアであった。



***




 時をさかのぼること数時間前、グレイアス先生のオモシロ発言に腹筋が崩壊するほど笑ったノアは、その勢いで思いついてしまったのだ。

 もし仮に浮気云々という話が本当なら、それを逆手に取ってイーサンをアシェル専属の側近に戻すことができるのではないか、と。

 ただグレイアス先生の見解では、アシェルはノアに護衛を付けることは絶対であり、誰が何を言ったって、どんな主張をしたって、この護衛の件に関しては必ず耳が遠くなるらしい。

 んな馬鹿なとノアは思った。

 そして五体満足の自分に護衛を付ける余裕があるなら、もっとアシェルの護衛を増やすべきだとグレイアスに強く主張した。

 秒で鼻で笑われ挙句、却下された。

 それでも食い下がるノアにグレイアスは、まるでお菓子を買ってとギャン泣きする子供を抱えるお母さんのように「無理なものは無理!」と一喝した。

 もちろんそんな程度で諦めるノアではない。

 一旦、納得したと見せかけて、別方向からグレイアスの知恵を頂戴することにした。

 女性で腕がそこそこ立ち、アシェルからそこそこ信頼を得ている人はいないかとグレイアスに尋ねたのだ。

 まぁ内心、そんな都合の良い人はいないと思っていた。しかし結構身近にいた。

 それがメイドのフレシアだったのだ。

 実は彼女はグレイアス先生の妹で、見ての通り女性で、しかも宮廷魔術師だったりもする。

 もちろんフレシアには、ちゃーんと許可を得ている。ノアの護衛になったのは命令ではなく、彼女の意思である。

 余談であるがグレイアス先生のポロリ発言未遂事件の時に、彼女は部屋の隅に居た。完璧に気配を消していて、気付かなかったけれど始終そのやり取りを見ていた。

 そしてアシェルの護衛問題についてノアが強引に話を戻して、グレイアスが『なら、自分の妹が適任だ』と言った時も、同じ場所にいて壁と同化していた。

 その際、グレイアスがフレシアを指差したのを機に、ノアはようやっと彼女の存在に気付いた。

 あまりに驚きすぎてノアが「ひやぁ~」っという聞いているほうが脱力する間抜けな悲鳴を上げても、フレシアは無表情かつノーリアクションだった。肝が据わった、とても頼りがいのある女性である。

 ただその3秒後、ちょっとだけ床に散らばってしまっていたレポート用紙を拾いながら、こちらを見ずに、しかも淡々とした声で『喜んで引き受けます』と言った。

 本当に良いの?と思わず聞きたくなるくらいそっけない態度だけれど、グレイアスお兄さま曰く、これがフレシアのデフォルトらしい。

 あと、何か動作をしながら口を動かす時は、本気で喜んでいるそうだ。

 ノアの目から見たら喜んでいらっしゃる様子が皆無だけれど、同じ血を引く人間がそう言っているのだから、きっとそうなのだろう。

 ちなみにフレシアはグレイアスと瓜二つの容姿で大層美人であるが、ちょっとだけグレイアスより背が高い。

 だから宮廷魔術師として活躍していた時は、それはそれは男性にモテたそうだ。でも、この無愛想というか無表情というか、リアクションの薄さのせいで男女交際にまで発展することがなかったそうだ。
 
 そんなフレシアは、女性宮廷魔術師からのやっかみで心を病んでしまい、現在メイドとして兄の傍にいる。

 ノアは女性であるが、別段お喋りを好む人種ではない。そして、フレシアとは仲良くなりたいが交際に発展することは望んでいない。

 無愛想も無表情もリアクションが薄いのも個性の一つだと思っているので、きっとつかず離れずの良い関係を築けると思っていたりする。
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