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おかしい。お愛想で可愛いと言われてただけなのにドキッとするなんて
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「......それにしても殿下、よく気づきましたね?」
「当たり前じゃないか」
何を阿呆なことを言ってるんだと言いたげな口調で即答され、ノアは目を丸くする。
隠す気は無かったけれど、あからさまに痛いと主張をする気もなかった。それに、歩けないほどの痛みでもなかったから、足を引きずるような動きをしたつもりもなかった。
なのに、たった1曲踊っただけで、他人の足の裏の状態に気づけるアシェルは、本当にすごい御仁なのだとノアは心から尊敬する。
しかし、片足を異性に持ち上げられた状態でそんなことを思うのは些か場違いである。
もちろんノアとて素足を掴まれたままでいるのは居心地が悪い。
だからそっとアシェルの手から自分の足を引っこ抜こうとした。けれども、アシェルの手はぴったりと張り付いたまま。
そしてノアがもう少し力を込めて足を抜こうとした瞬間、ノックも無く扉が開く。
無作法に入室してきたのは側近その1の、イーサンだった。彼は、アシェルに命じられ医務室から薬箱を借りに行っていたのだ。
「殿下、お待たせしました。お持ちしました───って、ごめんなさい!すんませんっ」
小脇に抱えていた薬箱を両手に持ち直し、アシェルに手渡そうとしたイーサンであったが、ノアの姿を視界におさめると慌てて反転した。
ちなみに現在、ノアはソファに寝そべった状態で、膝まで素足を晒している状態だ。
孤児院では膝下のワンピースで生活していたノアからすれば、さほど恥ずかしいことではない。だが、ある程度教養がある男にとったらそれは目の毒だ。
そして”彼女の足を見たら、即刻殺す”という独占欲と嫉妬が混ざった視線を主から受けたイーサンは、気合いでノアの姿を脳内から消去した。
「イーサン、それは机の上に置いておけ。あと、しばらく外で待機していろ。ワイアット、お前もだ」
ノアに向けるそれとは別人の口調で命じたアシェルに、側近二人は略式の礼を取りすぐさま部屋を出ていった。その素早さたるや、お魚を咥えた野良猫すら追い付けないほどだった。
「─── じゃあノア、ちょっと染みるかもしれないけれど少し我慢してくれるかな?」
半身を起こしながら秒速で消えた側近二人に唖然としていたノアだったけれど、アシェルの言葉ではっと我に返る。
(え?......手当て??......まさか、殿下が自らやる気なの!?)
塗り薬と包帯を手にしているアシェルをノアは食い入るように見つめる。
まさかと思いたいが、アシェルは手当てする気満々である。
しかし、雲の上の存在である彼から手当てを受けるなんてとんでもない。そして、そんな図々しい足などノアは持っていない。
だからノアは首を横に振って、失礼が無いよう言葉を選びながら辞退しようとした。
けれども、アシェルの耳は調子が悪いようで、ノアの言葉などまったく聞こえていないといった感じで手当てを始めてしまった。
「当たり前じゃないか」
何を阿呆なことを言ってるんだと言いたげな口調で即答され、ノアは目を丸くする。
隠す気は無かったけれど、あからさまに痛いと主張をする気もなかった。それに、歩けないほどの痛みでもなかったから、足を引きずるような動きをしたつもりもなかった。
なのに、たった1曲踊っただけで、他人の足の裏の状態に気づけるアシェルは、本当にすごい御仁なのだとノアは心から尊敬する。
しかし、片足を異性に持ち上げられた状態でそんなことを思うのは些か場違いである。
もちろんノアとて素足を掴まれたままでいるのは居心地が悪い。
だからそっとアシェルの手から自分の足を引っこ抜こうとした。けれども、アシェルの手はぴったりと張り付いたまま。
そしてノアがもう少し力を込めて足を抜こうとした瞬間、ノックも無く扉が開く。
無作法に入室してきたのは側近その1の、イーサンだった。彼は、アシェルに命じられ医務室から薬箱を借りに行っていたのだ。
「殿下、お待たせしました。お持ちしました───って、ごめんなさい!すんませんっ」
小脇に抱えていた薬箱を両手に持ち直し、アシェルに手渡そうとしたイーサンであったが、ノアの姿を視界におさめると慌てて反転した。
ちなみに現在、ノアはソファに寝そべった状態で、膝まで素足を晒している状態だ。
孤児院では膝下のワンピースで生活していたノアからすれば、さほど恥ずかしいことではない。だが、ある程度教養がある男にとったらそれは目の毒だ。
そして”彼女の足を見たら、即刻殺す”という独占欲と嫉妬が混ざった視線を主から受けたイーサンは、気合いでノアの姿を脳内から消去した。
「イーサン、それは机の上に置いておけ。あと、しばらく外で待機していろ。ワイアット、お前もだ」
ノアに向けるそれとは別人の口調で命じたアシェルに、側近二人は略式の礼を取りすぐさま部屋を出ていった。その素早さたるや、お魚を咥えた野良猫すら追い付けないほどだった。
「─── じゃあノア、ちょっと染みるかもしれないけれど少し我慢してくれるかな?」
半身を起こしながら秒速で消えた側近二人に唖然としていたノアだったけれど、アシェルの言葉ではっと我に返る。
(え?......手当て??......まさか、殿下が自らやる気なの!?)
塗り薬と包帯を手にしているアシェルをノアは食い入るように見つめる。
まさかと思いたいが、アシェルは手当てする気満々である。
しかし、雲の上の存在である彼から手当てを受けるなんてとんでもない。そして、そんな図々しい足などノアは持っていない。
だからノアは首を横に振って、失礼が無いよう言葉を選びながら辞退しようとした。
けれども、アシェルの耳は調子が悪いようで、ノアの言葉などまったく聞こえていないといった感じで手当てを始めてしまった。
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