銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 カツカツと音を鳴らして近づいてくる金髪の男を、俺は凝視した。
 この男がフィル様の心を奪った隣国の王子…。俺と変わらぬ身長に品のある美しい顔。大きな紫の瞳に吸い込まれそうだ。 
 だが美しいだけの王子なら、どこの国にもいるだろう。フィル様は、この男のどこを好きになったのか。
 隣国の王子は、玉座から少し離れた位置で止まり、片膝をついて顔を伏せた。女王からの言葉を待っているのだ。
 俺は目を伏せたままのフィル様に声をかけた。 
 顔を上げて前方で膝をつく王子を見た瞬間、フィル様の身体が揺れた。そのまま飛び出していくのかと身構えたが、フィル様は動かなかった。

「どうぞ立ってください。遠い所からよく来てくださいました。礼を言います」

 フィル様の声に、王子と従者の二人が立ち上がる。王子が顔を上げ、フィル様と見つめ合う。その時、王子の口が確かに「フィル」と動いたのを見た。
 フィル様が冷静に、自分は新しく女王となったフェリだと説明をしている。
 その言葉に王子が険しい顔をして、こちらへと足を踏み出した。
 俺は無礼を承知で王子を止めようとした。しかし気の強そうな王子は、俺の言うことなど聞きもしない。
 警備を任せているトラビスも、なぜか動こうとしない。そうこうするうちに王子がどんどんと近づいてくる。
 咄嗟に前に出ようとした俺の腕を、フィル様が掴んで止めた。
 フィル様に止められて、俺は元の位置に戻る。
 しかしトラビスめ。何を考えているのか。王を護る役目を怠ったのだから、後で罰を与えてやらねば。
 フィル様のすぐ目の前で止まった王子を、俺は鋭く睨みつけた。
 フィル様が俺の失礼な態度に小さく息を吐き、王子に謝罪の言葉を口にする。
 なぜフィル様が謝らなければいけない?失礼なのは目の前の男だ。

「私の側近が失礼をしました。しかしなぜそのように寄られるのか?あなたの部下が立っている場所が、他国の者と会う時の正しい距離です」
「フィル…フィルだろ?なぜよそよそしくする」
「…先ほどもラズールが答えましたけど…フィルとは誰ですか?」
「おまえだ」
「私は…フェリです…フィルではない…」
「フィー」

 フィル様が手に持っていた扇子を落とした。身体が震えている。やはりフェリ様の代わりをすることは無理なのだろうか。
 しかし今、聞き捨てならないことを聞いた。フィーだと?王子はフィル様をそのような愛称で呼んでいるのか。心の底から腹が立つ。
 フィル様が立ち上がり王子のもとへ行こうとする。だが怪我をした足のせいで、前のめりに倒れそうになった。
 名前を呼んで手を伸ばした王子よりも早く、俺はフィル様を抱きとめた。
 俺はフィル様に怪我をさせたことを後悔はしたが、怪我のせいで思う通りに王子のもとへ行けないフィル様を見て、少しだけ満足した。

 
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