銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 苦しそうな声に気づいて目を開ける。慌ててラズールの顔を見るけど変わらず辛そうだ。
 僕はラズールの額に乗せていた布を手に取ると、水に浸して絞り再び額に乗せた。

「ラズール…苦しいよね。病気なんてしたことのない丈夫な身体なのに…。一体あの矢には何が塗られていたの?」

 別の布でラズールの汗を拭きながら、ふとあることを思いついた。
 僕と姉上は同じ時に同じ母上の腹から生まれた双子だ。元は一つのものから二つにわかれたのだ。だから姉上が死にかけた時に、僕の血を飲ませれば姉上の代わりに僕が死ぬと母上は言ったのだろう。
 それをラズールにしてみたらどうなる?もちろん僕とラズールは他人だ。ただ僕の血を飲むという気持ち悪い行為で終わるだけかもしれない。でも試しにやってみてはどうだろうか。ラズールは今、苦しんではいるけど死にかけてるわけじゃないから、少しだけ舐めてもらうのは…。
 そこまで考えて僕は首をふる。

「僕の血にそんな効き目があるわけないじゃないか。なにかあるとすれば、呪いが移ることだけだよ…」

 僕は布を置いてラズールの手を握った。
 その時、ラズールが僕の手を握り返した。そして何かを口の中で言っている。
 僕がラズールの口に耳を寄せると「みず…」と聞こえた。

「水?水が飲みたいの?ちょっと待ってて」

 ベッド横の棚に置いてある水差しからコップに水を注ぎ、ラズールの口に持っていく。コップを傾けるけど、うまく口の中に入らない。
 僕は「ラズールごめんね」と言うと、水を口に含んでラズールの唇を塞いだ。そしてゆっくりと水を流し込む。口端からこぼれたけど、ラズールの喉が動いたのを確認して少しは飲めたと安堵する。「もっと…」という声に、もう一度水を口に含んで飲ませた。再び飲めたのを確認して顔を離そうとすると、頭の後ろを強く掴まれキスをされた。

「んっ、まっ…」

 ラズールの肩を叩くけど放してくれない。熱い舌が入ってきて歯列を舐め僕の舌に絡まる。大好きなラズールだけど嫌だ。リアムじゃないと気持ち悪い。僕は激しく顔を動かして暴れた。

「いたっ…」

 暴れたために僕の唇にラズールの歯が当たって切れた。思わず上げた声に、ようやくラズールが放してくれる。ぼんやりとした目で僕を見つめながら唇についた血を舐めると、すぐに目を閉じて荒い呼吸を繰り返す。

「もう…なに…寝ぼけてたの…?」

 再び眠りについたラズールを見ながら、僕は手の甲で口を拭く。手の甲についた血を見て、ドクンと心臓がはねた。
 ラズール…僕の血を舐めちゃった。大丈夫だよ…ね?ほんの一、二滴程度の血だ。なにも影響はないに違いない。
 せっかく水を飲ませたのに気持ち悪いものを舐めさせてしまったと思ったけど、三度口移しで水を飲ませる気はなくて、僕は汗を拭いた布を濡らしてラズールの唇をきれいに拭いた。

 
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