銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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「そうか…そうだよな。いや、すまない。フィーのことになると、どうしても冷静な判断ができなくなるんだ。以後気をつける」

「そんなことで、これからフィル様を守れるのか」と後ろで呟く低い声が聞こえたが、無視しておく。
 僕は「そういえば」とノアを見る。

「リコは?出かけてるの?」
「姉ちゃんはいないよ。フィーが運ばれてきた少し前に結婚して、今は街に住んでるよ」
「そうなの?そうかぁ…リコ、幸せなんだね。おめでとう!」
「ありがとう。よかったら、また姉ちゃんにも会いに行ってやってよ。フィルのこと心配してたからさ」
「うん。お祝いもしたい」
「フィルの顔を見せるだけで、十分だよ」

 僕は微笑みながら頷いた。頷いた拍子に涙がこぼれ、自分でも驚いて慌てて手の甲で拭う。
 
「フィー?大丈夫か」
「うん…なんか胸が詰まって…嬉しくて」
「そうだな」

 リアムが僕の頭を抱き寄せる。
 嬉しい。僕と関わった人が、幸せになることが嬉しい。姉の幸せを嬉しそうに報告するノアも幸せそうで嬉しい。リアムもラズールも、トラビスもネロも、レナードやゼノやジルも、みんなには幸せになってほしい。辛いことがあっても、それを乗り越えた先には必ず幸せがあると信じてほしい。僕がそうだったから。呪われた子として辛い思いをしてきたけれど、しぶとく生き続けた先に幸せがあった。愛した人に愛されるという、大きな幸せがあった。長くは一緒にいられないけれど、十分だよ。欲を望めばキリがないもの。

「フィル…大丈夫?」
「…大丈夫。ノアは、一人になって寂しくないの?」
「全然。街に出る度に姉ちゃんに会いに行ってるし、友達も遊びに来てくれるから。それに、
これからはフィルも来てくれるんだろ?」
「うん。僕たちの家にも遊びに来て」
「え?いいの…ですか?」

 ノアが僕ではなくリアムに聞く。先ほどリアムにいらぬ誤解で睨まれたからだと思う。

「…いい。だが俺がいる時にだ。まあ家にフィーを一人で置いて出かけたりしないがな!」
「はあ…わかりました」

 僕はリアムとノアを見て笑った。
 誰かと話していると、気持ちが紛れて落ち込まなくていいし全身の痛みがマシになる。だけど着実に痛みの間隔が短くなっている気がする。背中の痣に赤い花が咲く前に、やっておきたいことがある。本当は今日にもノアを家に呼んで一晩中語り明かしたいところなんだけど、時間がない。やっておきたいことは明日でもいいかなと思っていたけど、やはり今日にしよう。
 ノアが食器を片付けに部屋を出た時に、僕はリアムに頼んだ。

「リアム、お願いがある。前にリアムが連れて行ってくれた湖に行きたい。リアムの母上の故郷にある…」
「ん、いいぞ。いつにする?」
「今…今すぐに行きたい。お願い」

 僕は無意識にリアムの腕を掴んでいた。
 僕の必死な様子に何かを感じ取ったのだろう。リアムが「わかった」と深く頷いた。
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