銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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「フィル様これを」
「なに?」

 部屋を出る直前に、ゼノから折りたたまれた布を渡された。ずしりと重い布は、リアムのマントと同じ色だ。
 僕はこれが何かを察してリアムを見た。
 リアムが笑って頷き、僕の手から布を取って広げる。

「わあ…いいの?僕がこれを身につけても」
「いい。これは兄上が…王が準備してくれたものだ」
「え…クルト王子…王が?」
「俺は城を出たが、まだ王族に籍があるらしい。だから伴侶であるフィーも、これを身につけるべきだと」
「ほんとに?嬉しい」

「ただ…」とリアムがマントの刺繍の箇所を僕に見せる。

「フィーのこれは、俺のと比べて刺繍部分が少ない。ほら…こんなふうに裾に少し縫われているだけで質素なんだ。すまない…」
「どうして謝るの?すごく素敵だよ!リアムとお揃いで嬉しいよっ」
「だがこれをまとうと、おまえのキレイな服が隠れてしまうな」
「いいよ、目立ちたくないもの。これだと皆リアムの方を見るでしょ」
「それはどうかな。濃い色の服を着てる時ほど、おまえの銀髪が美しく映えるからな。おまえが注目されるかと思うと面白くない」
「えー、リアムは心配性だねぇ。そんなこと思うのリアムだけだよ。ゼノもそう思うでしょ?」

 僕は後ろに控えるゼノに聞く。
 ゼノは頷きながらリアムの手からマントを取って、僕の肩にかけてくれた。

「そうですね、リアム様は過保護が過ぎますからね。でも確かに…こうして見ると、後ろに流した銀髪が絹の糸のようにサラサラとして輝いて…とても美しいですよ」
「ゼノまでそんなことを言う。でも、褒めてくれてありがとう」
「真実を述べたままです。あ、リアム様、そんな怖い目で俺を見ないでください。リアム様もとても美しいですよ。お似合いのお二人です。さ、早く参りましょう。クルト様よりも遅れて入ったら、あなた達が主役になってしまいます」
「口の達者なヤツめ」
「お褒めいただきありがとうございます」
「褒めてはいない」
「素直じゃありませんねぇ」
「おいっ」

 リアムとゼノの軽快なやり取りに、僕は声を出して笑う。

「ふふっ、二人は本当に仲がいいね。続きは帰ってからにしてね。今は早く王の間へ行こう」

 歩き出そうとした僕を、リアムがいきなり抱きしめた。でもすぐにゼノに引き剥がされる。

「ちょっと!何してるんですか!マントと服がシワになってしまいます!それにキレイに整えた髪も乱れてしまうっ」
「うっ…悪い。フィーはいつもかわいいが、今日はより一層かわいくて触れたくなった」
「即位式が終わった後で、いくらでも触れてください。それまでは理性を保ってください」
「…できるかな」
「リアム様!」
「わかったよ」

 兄弟のような二人を見ていると楽しい。
 即位式に出席するにあたって、粗相をしないかとか好奇の目で見られるかなとか不安だったけど、一気に気持ちが晴れた。僕はリアムのマントを掴んで引き寄せ、軽くキスをする。

「フィー?」
「今はこれで我慢してね」
「善処する…」

 真面目な顔で頷くリアムに僕はまた笑うと、リアムの手をしっかりと握りしめて足を前に出した。
 大きくて温かいリアムの手。出会った時から、僕を守り続けてくれている。そしてこれからも、僕を幸せな未来へと導いてくれる手だ。
 この手を僕は決して離さない。もし僕が離そうとしても、この手が離してくれないとわかっている。
 リアム、僕を見つけてくれて、僕の手を掴んでくれてありがとう。僕はあなたの隣で、こんなにも輝けるんだ。僕を光のもとに連れ出してくれてありがとう。リアムと出会って、僕は生まれてきてよかったと心から思えるようになったんだ。リアムが僕を幸せにしてくれたように、これからは僕もリアムを幸せにしたい。とりあえずは式が終わったら、たくさん甘やかせてあげるから。
 ふと視線を感じて横を向く。
 ゼノが僕を見て微笑んでいる。

「なあに?」
「いえ…フィル様は、リアム様の隣にいる時、とても笑顔が眩しいと思いまして。今も、とても輝いていらっしゃいますよ」
「そ、そう…?恥ずかしいな…」

 僕は両手を頬に当てて下を向く。

「なにも恥ずかしくなどありません。あなたの眩しい笑顔は、周りの者を幸せな気持ちにさせます。それにリアム様も同じです。お二人ともが、輝いて見えますよ」
「ゼノ、おまえはいいこと言うな。よくわかっている」
「どれだけリアム様と一緒にいると思ってるのですか。さ、お話はまた後で。急ぎましょう」
「ああ。フィー」
「うん」

 リアムが僕の手を握り直すと「走るぞ」と駆け出した。僕とリアムの後ろから、ゼノが「走ってはダメです!」と怒りながら追いかけてくる。
それを見たリアムが笑い、僕も笑う。僕とリアムは笑いながら、廊下の先の、窓から降り注ぐ光の中に向かって走り続けた。


(終)
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