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フィル様が第二王子を見上げて首を小さく傾ける。
「どうしたの?リアムも一緒に泊まりに行こうよ」
「…フィー、おまえは優しいな。愛してるよ」
「ありがとう。僕もだよ」
フィル様が第二王子の胸に頬を寄せて、幸せそうに笑う。
フィル様の幸せそうな姿を見るのは嬉しいが、第二王子の腕の中というのが腹立たしい。
俺は咳払いをすると、「フィル様」と大きめの声を出した。
「長旅でお疲れでしょう。早く中に入って休まれた方がいい。荷解きや食事の用意は俺がします」
「いいの?ラズールも家の片付けとか…」
「片付けも何も、ほとんど物がありませんので大丈夫です。ああそうだ。フィル様が来られる日には、ノアも呼びましょう。彼がいると場が明るくなる」
「ほんとに?ふふっ、ラズールの家に行くの、楽しみ。明日は?行ってもいい?」
「いつでも。ただ、あなたの伴侶に許可をいただかねばならないようですよ」
俺の視線を追って、フィル様が顔を上げる。しかし予想通りフィル様がねだると、第二王子は渋い顔をしながらも、俺の家での宿泊を承諾した。
「フィーがラズールを大切に思っていることはわかっている。だから行きたい時に行っていい。俺に許可を取らなくてもいい。だが、あまり頻繁に行きすぎるなよ?おまえの家はここだからな」
「ありがとうリアム。わかってる。ラズールの家には遊びに行くだけ。必ず僕とリアムの家に戻ってくるよ。僕の居場所はここだから!」
「フィー」
第二王子がフィル様に顔を寄せ、接吻をしそうになったので、俺は再び咳払いをする。
「んんッ、フィル様の顔色が少し悪いようですが。早く中へ入ってください」
ちらりと横目で俺を見て息を吐き出した第二王子が、フィル様の頬を撫で「入るか」と微笑んだ。
フィル様も第二王子の手に頬を寄せて「うん」と笑う。そして二人並んで扉に向かう。
その後ろ姿を見ていると、ゼノに肩を叩かれた。
「あの二人、常にこんな感じだぞ。大丈夫か?」
「俺の目にはフィル様しか映っていないから大丈夫だ」
「なるほど。それなら大丈夫か」
ゼノが笑って、荷物を手に二人を追いかける。他の二名の騎士は、馬を繋ぎに家の裏へと行ってしまった。
家の中から「ラズール」と愛しい人の明るい声が聞こえ、足を前に出したその時、風が吹いた。風に乗って、どこからか微かに甘い花の香りが流れてきた。まるで今の俺の心の中を表しているような心地よい香りに、静かに目を閉じ、しばらくその場を動かなかった。
(終)
「どうしたの?リアムも一緒に泊まりに行こうよ」
「…フィー、おまえは優しいな。愛してるよ」
「ありがとう。僕もだよ」
フィル様が第二王子の胸に頬を寄せて、幸せそうに笑う。
フィル様の幸せそうな姿を見るのは嬉しいが、第二王子の腕の中というのが腹立たしい。
俺は咳払いをすると、「フィル様」と大きめの声を出した。
「長旅でお疲れでしょう。早く中に入って休まれた方がいい。荷解きや食事の用意は俺がします」
「いいの?ラズールも家の片付けとか…」
「片付けも何も、ほとんど物がありませんので大丈夫です。ああそうだ。フィル様が来られる日には、ノアも呼びましょう。彼がいると場が明るくなる」
「ほんとに?ふふっ、ラズールの家に行くの、楽しみ。明日は?行ってもいい?」
「いつでも。ただ、あなたの伴侶に許可をいただかねばならないようですよ」
俺の視線を追って、フィル様が顔を上げる。しかし予想通りフィル様がねだると、第二王子は渋い顔をしながらも、俺の家での宿泊を承諾した。
「フィーがラズールを大切に思っていることはわかっている。だから行きたい時に行っていい。俺に許可を取らなくてもいい。だが、あまり頻繁に行きすぎるなよ?おまえの家はここだからな」
「ありがとうリアム。わかってる。ラズールの家には遊びに行くだけ。必ず僕とリアムの家に戻ってくるよ。僕の居場所はここだから!」
「フィー」
第二王子がフィル様に顔を寄せ、接吻をしそうになったので、俺は再び咳払いをする。
「んんッ、フィル様の顔色が少し悪いようですが。早く中へ入ってください」
ちらりと横目で俺を見て息を吐き出した第二王子が、フィル様の頬を撫で「入るか」と微笑んだ。
フィル様も第二王子の手に頬を寄せて「うん」と笑う。そして二人並んで扉に向かう。
その後ろ姿を見ていると、ゼノに肩を叩かれた。
「あの二人、常にこんな感じだぞ。大丈夫か?」
「俺の目にはフィル様しか映っていないから大丈夫だ」
「なるほど。それなら大丈夫か」
ゼノが笑って、荷物を手に二人を追いかける。他の二名の騎士は、馬を繋ぎに家の裏へと行ってしまった。
家の中から「ラズール」と愛しい人の明るい声が聞こえ、足を前に出したその時、風が吹いた。風に乗って、どこからか微かに甘い花の香りが流れてきた。まるで今の俺の心の中を表しているような心地よい香りに、静かに目を閉じ、しばらくその場を動かなかった。
(終)
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