62 / 89
33
しおりを挟む
「ど…」こに行くの?という俺の声は、昊の言葉によって遮られた。
「おまえさぁ、近所のコンビニの前であんなことするなよ。誰かに見られたらどうすんだよ」
「どうもしない…」
前を向いたまま話す昊の後頭部に向かって、小さく呟く。
昊はチラリと振り返って俺を見ると、「とりあえず家に帰るぞ」と握る手に力を込めた。
俺は手を引かれるままに足を前に出す。昊に言いたいこと、したいことがたくさんある。だけど今は言わないしやらない。口を開くと、また昊に逃げられてしまうかもしれない。繋がれているこの手を離したくない。だけど一つ気になることがあって、静かに聞いた。
「買い物は?いいの?」
「もう用事は済んだ。家に帰ろうと思ったら、おまえがすごい顔で走ってったからさ、気になって後を追いかけた」
「え?すれ違ってた?どこで?」
「手前のコンビニの近く。ただごとじゃない様子にビビったっつーの」
「なんだ…いたんだ」
「…俺を探してたのか?」
「そうだよ…」
「ふーん」
それから二人で無言で歩いた。家に着き手を繋いだまま玄関を入りリビングに向かう。まだ母さんが帰っていなくて、相変わらず時計の音だけが響いている。……いや、今は俺の鼓動の方が大きく聞こえている。
リビングの扉を閉めると、昊が手を離して俺の正面に立った。俺を見上げて何か言いたそうにしているけど、口を開かない。
俺はもう、我慢しない。我慢できない。だから、そっと昊を抱きしめて、耳のそばで「昊」と囁いた。緊張していたから想像以上の掠れた声が出た。でも名前を呼んだ瞬間、想いが溢れて涙も出た。声も出さずに涙を流していると、昊の手が俺の腰に触れた。拒絶されなかったことに安堵して、小さく息を吐く。それが首をかすめたのか、昊が微かに震えた。
「なぁ」
「…ん」
「先生に送ってもらったのか?」
「違うよ…。俺が課題を忘れたから、取りに来たんだ」
「そっか」
「うん」
先生のこと、気にしてたの?なんで?と聞きたいけど、その前に言いたいことがある。
俺は深呼吸をすると、抱きしめる腕に力を込めた。
「昊」
「なに」
「俺の話…聞いてくれる?」
「ああ」
「ちゃんと最後まで、聞いてくれる?」
「聞くよ」
「約束だよ」
「わかった」
もう一度深呼吸をして、秘めてきた想いを伝える。
「俺は、昊が好き」
「うん」
「兄弟の好きじゃない。恋人としての好きだよ。それに昊のこと、性的に見てる」
「……」
「ごめん…昊に気持ち悪いと思われても、俺は昊が好きだよ」
「青…」
昊の声が震えている。やっぱり怖がらせてしまったのかな。今、どんな顔をしてるのだろう。見るのが怖い。けど見たい。
俺は昊の首に伏せていた顔を上げた。そして目を瞠る。だって昊も、俺と同じように泣いていたんだ。
「おまえさぁ、近所のコンビニの前であんなことするなよ。誰かに見られたらどうすんだよ」
「どうもしない…」
前を向いたまま話す昊の後頭部に向かって、小さく呟く。
昊はチラリと振り返って俺を見ると、「とりあえず家に帰るぞ」と握る手に力を込めた。
俺は手を引かれるままに足を前に出す。昊に言いたいこと、したいことがたくさんある。だけど今は言わないしやらない。口を開くと、また昊に逃げられてしまうかもしれない。繋がれているこの手を離したくない。だけど一つ気になることがあって、静かに聞いた。
「買い物は?いいの?」
「もう用事は済んだ。家に帰ろうと思ったら、おまえがすごい顔で走ってったからさ、気になって後を追いかけた」
「え?すれ違ってた?どこで?」
「手前のコンビニの近く。ただごとじゃない様子にビビったっつーの」
「なんだ…いたんだ」
「…俺を探してたのか?」
「そうだよ…」
「ふーん」
それから二人で無言で歩いた。家に着き手を繋いだまま玄関を入りリビングに向かう。まだ母さんが帰っていなくて、相変わらず時計の音だけが響いている。……いや、今は俺の鼓動の方が大きく聞こえている。
リビングの扉を閉めると、昊が手を離して俺の正面に立った。俺を見上げて何か言いたそうにしているけど、口を開かない。
俺はもう、我慢しない。我慢できない。だから、そっと昊を抱きしめて、耳のそばで「昊」と囁いた。緊張していたから想像以上の掠れた声が出た。でも名前を呼んだ瞬間、想いが溢れて涙も出た。声も出さずに涙を流していると、昊の手が俺の腰に触れた。拒絶されなかったことに安堵して、小さく息を吐く。それが首をかすめたのか、昊が微かに震えた。
「なぁ」
「…ん」
「先生に送ってもらったのか?」
「違うよ…。俺が課題を忘れたから、取りに来たんだ」
「そっか」
「うん」
先生のこと、気にしてたの?なんで?と聞きたいけど、その前に言いたいことがある。
俺は深呼吸をすると、抱きしめる腕に力を込めた。
「昊」
「なに」
「俺の話…聞いてくれる?」
「ああ」
「ちゃんと最後まで、聞いてくれる?」
「聞くよ」
「約束だよ」
「わかった」
もう一度深呼吸をして、秘めてきた想いを伝える。
「俺は、昊が好き」
「うん」
「兄弟の好きじゃない。恋人としての好きだよ。それに昊のこと、性的に見てる」
「……」
「ごめん…昊に気持ち悪いと思われても、俺は昊が好きだよ」
「青…」
昊の声が震えている。やっぱり怖がらせてしまったのかな。今、どんな顔をしてるのだろう。見るのが怖い。けど見たい。
俺は昊の首に伏せていた顔を上げた。そして目を瞠る。だって昊も、俺と同じように泣いていたんだ。
10
あなたにおすすめの小説
うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。
春雨
BL
前世を思い出した俺。
外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。
愛が重すぎて俺どうすればいい??
もう不良になっちゃおうか!
少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。
初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。
※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。
※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。
もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。
なるべく全ての感想に返信させていただいてます。
感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!
【完結】みにくい勇者の子
バナナ男さん
BL
ある田舎町で農夫をしている平凡なおっさんである< ムギ >は、嫁なし!金なし!の寂しい生活を送っていた。 そんなある日、【 光の勇者様 】と呼ばれる英雄が、村の領主様に突然就任する事が決まり、村人達は総出で歓迎の準備をする事に。 初めて会うはずの光の勇者様。 しかし、何故かムギと目が合った瞬間、突然の暴挙に……? 光の勇者様 ✕ 農夫おっさんのムギです。 攻めはヤンデレ、暴走ロケット、意味不明。 受けは不憫受け(?)だと思いますので、ご注意下さい。ノリよくサクッと終わりますm(__)m 頭空っぽにして読んで頂けると嬉しいです。
弟が兄離れしようとしないのですがどうすればいいですか?~本編~
荷居人(にいと)
BL
俺の家族は至って普通だと思う。ただ普通じゃないのは弟というべきか。正しくは普通じゃなくなっていったというべきか。小さい頃はそれはそれは可愛くて俺も可愛がった。実際俺は自覚あるブラコンなわけだが、それがいけなかったのだろう。弟までブラコンになってしまった。
これでは弟の将来が暗く閉ざされてしまう!と危機を感じた俺は覚悟を持って……
「龍、そろそろ兄離れの時だ」
「………は?」
その日初めて弟が怖いと思いました。
【完結】勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話
バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん<山野 石郎>改め【イシ】
世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中……俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない<覗く>という能力だけ。
これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。
無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。
不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!
新訳 美女と野獣 〜獣人と少年の物語〜
若目
BL
いまはすっかり財政難となった商家マルシャン家は父シャルル、長兄ジャンティー、長女アヴァール、次女リュゼの4人家族。
妹たちが経済状況を顧みずに贅沢三昧するなか、一家はジャンティーの頑張りによってなんとか暮らしていた。
ある日、父が商用で出かける際に、何か欲しいものはないかと聞かれて、ジャンティーは一輪の薔薇をねだる。
しかし、帰る途中で父は道に迷ってしまう。
父があてもなく歩いていると、偶然、美しく奇妙な古城に辿り着く。
父はそこで、庭に薔薇の木で作られた生垣を見つけた。
ジャンティーとの約束を思い出した父が薔薇を一輪摘むと、彼の前に怒り狂った様子の野獣が現れ、「親切にしてやったのに、厚かましくも薔薇まで盗むとは」と吠えかかる。
野獣は父に死をもって償うように迫るが、薔薇が土産であったことを知ると、代わりに子どもを差し出すように要求してきて…
そこから、ジャンティーの運命が大きく変わり出す。
童話の「美女と野獣」パロのBLです
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない
Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。
かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。
後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。
群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って……
冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。
表紙は友人絵師kouma.作です♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる