80 / 89
40
しおりを挟む
「どこに?」
「私の実家。少し前からおばあちゃんの体調が悪いのよ。あなた大学生なってから会ってないでしょ?たまには顔を見せてあげて」
俺の目を見ずに早口でまくしたてる母さんの口元を、ぼんやりと見ていた。
ばあちゃん家に行くのは本当なのか、それとも俺を連れ出す口実なのか。でも断れそうな雰囲気ではない。青だって会ってないじゃんと思ったけど、口には出さない。
俺も母さんから視線を逸らすと、「別にいいけど」と呟いた。
「よかった。じゃ、行こっか」
「泊まり?荷物はどうする?」
リビングに鞄を取りに戻る母さんの背中に向かって聞く。
母さんは、一瞬動きを止め、振り向かずに言う。
「日帰りよ。だから荷物はいらない」
「…ふーん、わかった」
今から行くと帰りが遅くなると思うけど。日帰りなんだ。
母さんが何を思っているのか、わかるようでわらからない。でも今は、従うしかないんだろうな。それに、気分転換にはいいかもしれない。じっとしてると、今の俺はいらないことを考えてしまうから。
リビングの入口で母さんを待つ。ぼんやりとリビングを見ていた俺は、違和感を感じた。それが何かわからなかったけど、車に乗り、ばあちゃん家がある隣県に入ったところで、ようやく気づいた。
隣でハンドルを握る母さんを盗み見て、納得する。
そうか…そういうことか。いいよ、母さんがそうしたいなら。
俺は窓の外を流れる景色を眺めながら、女の子の肩を抱いた青の姿を思い出した。
どうせ元より叶わなかった想いだ。兄弟として傍にいるだけでよかったのに、身体を繋げることができた。愛してるとも言ってくれた。それが嘘だったとしても、嬉しかった。幸せだった。もう満足だろ。これ以上を望んだら、贅沢ってもんだ。
先ほどまで暗く重苦しかった胸の中が、フッと軽くなった気がした。
ばあちゃん家には、暗くなりかけた頃に着いた。ばあちゃんもじいちゃんも、突然訪ねてきた母さんと俺に、驚いていた。だけどすごく喜んでくれた。それに心配していたけど、ばあちゃんの体調は、それほど悪くはなかった。よかった。
夕飯を一緒に食べ、すぐに帰るという母さんに、「家が大丈夫なら泊まっていって」とばあちゃんが言う。その寂しそうな顔に、俺はぜひそうしろと頷いた。
「母さんは泊まって行きなよ。明日、父さんに迎えに来てもらえばいいじゃん」
「ダメよ。今日出なきゃ…え?父さんにって、昊は?」
「俺は帰るよ。明日はバイトがあるし」
「なら私も一緒に帰る」
「なんでだよ。たまには親孝行しなよ、母さん。俺は一人で大丈夫」
「昊…?」
不安そうな様子の母さんの目を見つめて、俺は深く頷いた。
大丈夫だ、母さんの不安は取り除いてあげるから。だから母さんはここにいて。俺と一緒にいくことはない。
昊も泊まりなさいと言うばあちゃんとじいちゃんに謝って、俺は母さんから車のキーを受け取った。そしてばあちゃんとじいちゃんに元気でいてくれるように、母さんには気をつけて帰るように言うと、車に乗りこみ真っ暗な闇に向かってアクセルを踏んだ。
「私の実家。少し前からおばあちゃんの体調が悪いのよ。あなた大学生なってから会ってないでしょ?たまには顔を見せてあげて」
俺の目を見ずに早口でまくしたてる母さんの口元を、ぼんやりと見ていた。
ばあちゃん家に行くのは本当なのか、それとも俺を連れ出す口実なのか。でも断れそうな雰囲気ではない。青だって会ってないじゃんと思ったけど、口には出さない。
俺も母さんから視線を逸らすと、「別にいいけど」と呟いた。
「よかった。じゃ、行こっか」
「泊まり?荷物はどうする?」
リビングに鞄を取りに戻る母さんの背中に向かって聞く。
母さんは、一瞬動きを止め、振り向かずに言う。
「日帰りよ。だから荷物はいらない」
「…ふーん、わかった」
今から行くと帰りが遅くなると思うけど。日帰りなんだ。
母さんが何を思っているのか、わかるようでわらからない。でも今は、従うしかないんだろうな。それに、気分転換にはいいかもしれない。じっとしてると、今の俺はいらないことを考えてしまうから。
リビングの入口で母さんを待つ。ぼんやりとリビングを見ていた俺は、違和感を感じた。それが何かわからなかったけど、車に乗り、ばあちゃん家がある隣県に入ったところで、ようやく気づいた。
隣でハンドルを握る母さんを盗み見て、納得する。
そうか…そういうことか。いいよ、母さんがそうしたいなら。
俺は窓の外を流れる景色を眺めながら、女の子の肩を抱いた青の姿を思い出した。
どうせ元より叶わなかった想いだ。兄弟として傍にいるだけでよかったのに、身体を繋げることができた。愛してるとも言ってくれた。それが嘘だったとしても、嬉しかった。幸せだった。もう満足だろ。これ以上を望んだら、贅沢ってもんだ。
先ほどまで暗く重苦しかった胸の中が、フッと軽くなった気がした。
ばあちゃん家には、暗くなりかけた頃に着いた。ばあちゃんもじいちゃんも、突然訪ねてきた母さんと俺に、驚いていた。だけどすごく喜んでくれた。それに心配していたけど、ばあちゃんの体調は、それほど悪くはなかった。よかった。
夕飯を一緒に食べ、すぐに帰るという母さんに、「家が大丈夫なら泊まっていって」とばあちゃんが言う。その寂しそうな顔に、俺はぜひそうしろと頷いた。
「母さんは泊まって行きなよ。明日、父さんに迎えに来てもらえばいいじゃん」
「ダメよ。今日出なきゃ…え?父さんにって、昊は?」
「俺は帰るよ。明日はバイトがあるし」
「なら私も一緒に帰る」
「なんでだよ。たまには親孝行しなよ、母さん。俺は一人で大丈夫」
「昊…?」
不安そうな様子の母さんの目を見つめて、俺は深く頷いた。
大丈夫だ、母さんの不安は取り除いてあげるから。だから母さんはここにいて。俺と一緒にいくことはない。
昊も泊まりなさいと言うばあちゃんとじいちゃんに謝って、俺は母さんから車のキーを受け取った。そしてばあちゃんとじいちゃんに元気でいてくれるように、母さんには気をつけて帰るように言うと、車に乗りこみ真っ暗な闇に向かってアクセルを踏んだ。
4
あなたにおすすめの小説
うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。
春雨
BL
前世を思い出した俺。
外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。
愛が重すぎて俺どうすればいい??
もう不良になっちゃおうか!
少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。
初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。
※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。
※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。
もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。
なるべく全ての感想に返信させていただいてます。
感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!
【完結】みにくい勇者の子
バナナ男さん
BL
ある田舎町で農夫をしている平凡なおっさんである< ムギ >は、嫁なし!金なし!の寂しい生活を送っていた。 そんなある日、【 光の勇者様 】と呼ばれる英雄が、村の領主様に突然就任する事が決まり、村人達は総出で歓迎の準備をする事に。 初めて会うはずの光の勇者様。 しかし、何故かムギと目が合った瞬間、突然の暴挙に……? 光の勇者様 ✕ 農夫おっさんのムギです。 攻めはヤンデレ、暴走ロケット、意味不明。 受けは不憫受け(?)だと思いますので、ご注意下さい。ノリよくサクッと終わりますm(__)m 頭空っぽにして読んで頂けると嬉しいです。
弟が兄離れしようとしないのですがどうすればいいですか?~本編~
荷居人(にいと)
BL
俺の家族は至って普通だと思う。ただ普通じゃないのは弟というべきか。正しくは普通じゃなくなっていったというべきか。小さい頃はそれはそれは可愛くて俺も可愛がった。実際俺は自覚あるブラコンなわけだが、それがいけなかったのだろう。弟までブラコンになってしまった。
これでは弟の将来が暗く閉ざされてしまう!と危機を感じた俺は覚悟を持って……
「龍、そろそろ兄離れの時だ」
「………は?」
その日初めて弟が怖いと思いました。
【完結】勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話
バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん<山野 石郎>改め【イシ】
世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中……俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない<覗く>という能力だけ。
これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。
無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。
不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!
新訳 美女と野獣 〜獣人と少年の物語〜
若目
BL
いまはすっかり財政難となった商家マルシャン家は父シャルル、長兄ジャンティー、長女アヴァール、次女リュゼの4人家族。
妹たちが経済状況を顧みずに贅沢三昧するなか、一家はジャンティーの頑張りによってなんとか暮らしていた。
ある日、父が商用で出かける際に、何か欲しいものはないかと聞かれて、ジャンティーは一輪の薔薇をねだる。
しかし、帰る途中で父は道に迷ってしまう。
父があてもなく歩いていると、偶然、美しく奇妙な古城に辿り着く。
父はそこで、庭に薔薇の木で作られた生垣を見つけた。
ジャンティーとの約束を思い出した父が薔薇を一輪摘むと、彼の前に怒り狂った様子の野獣が現れ、「親切にしてやったのに、厚かましくも薔薇まで盗むとは」と吠えかかる。
野獣は父に死をもって償うように迫るが、薔薇が土産であったことを知ると、代わりに子どもを差し出すように要求してきて…
そこから、ジャンティーの運命が大きく変わり出す。
童話の「美女と野獣」パロのBLです
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない
Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。
かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。
後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。
群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って……
冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。
表紙は友人絵師kouma.作です♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる