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episode.12
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『我はヨルグ。教皇であるロジェ=リュディックを後見人としている』
ヨルグは一瞬たりとも目を逸らさずに名を名乗った。神格を持っているだけあり、騒ぐことも諫めることもせず冷静に落ち着いた口調で話している。だが、ベルベットの心は大いに荒れていた。
(完全に失念してた……!!)
この国にでは白い狼は神に最も近い生き物だと言われて崇められている。特に、ヨルグほどに成長するのは稀で、人々は神の使いだと信じ神格を与えた……──と、ここまでがベルベットが知っているゲーム内での解説だったが、ヨルグが人語が話せるとは記載がなかった。
それに、ヨルグが登場するのはロジェルートだけ……
『すまぬ。驚かしてしまったか?』
顔面蒼白で茫然としているベルベットを心配したヨルグが声を掛けてきた。その声でようやく我に返った。
「ごめんなさい。驚いたのは本当だけど、もう落ち着いたかだ大丈夫」
『そうか、それならこちらを睨みつけているあの二人にも説明を頼めるか?』
ヨルグの声が聞こえないネリーとリアムは怪訝な顔をしながらこちらを見ていた。リアムに至っては、先ほど殴られたのを根に持っているらしく殺気が漏れ出した状態で今にもヨルグの首を掻っ切りそうな雰囲気だ。
ベルベットは溜息を一つ吐くと二人の傍へ寄り、ヨルグの事を話した。何故か分からないが、自分にだけヨルグの言葉が分かることも一緒に伝えた。ネリーはすぐに納得してくれたが、問題はリアムの方。
「肉が神格持ちとかありえないでしょ。ベル騙されてるんじゃない?所詮は獣だよ?」
「騙されるもなにも、調べれば分かる事じゃない」
人の話を聞こうとしないリアムに頭を抱えていると、背後からトントンと大きな爪で肩を叩かれ、腹の底に響くような低音ボイスが聞こえた。
『どうやら、そこの小僧は我を食い物にしたくて仕方ないらしいな』
そう言うヨルグの顔は先程の穏やかな顔から一変、獰猛な獣の顔へと変わっていた。グルルルルと喉を鳴らしながらリアムを睨みつけると、リアムの方も不敵な笑みを浮かべながらヨルグを睨み返した。
「へぇ?僕と殺り合うつもり?いいけど、また気絶するとかやめてよ?」
『小童が……先程は油断しただけだ。本来の力の半分も出ていない』
既に戦闘態勢の二人を目の前にネリーは怯えて、木の影からこちらを見ている。ベルベットは止めに入ろうかと思ったが、今の二人には周りの声は聞こえないだろうと断念した。
本音では、くだない事で時間を潰すな!!と言いたい。
ヨルグがここにいれば、いずれ迎えに来たロジェと鉢合わせしてしまう。それこそ夜逃げ同然で逃げてきたのが無駄足になってしまう。一秒でも早くヨルグをここから遠ざけたい。
まあ、今の二人にはそんな事など関係なしに相手を屈服させることしか考えていない。
『行くぞ、小童!!!』
「さあ、来なよ」
ヨルグの咆哮を合図に飛びかかった。
リアムは身軽さを自慢にしているだけあって、攻撃してくる四本の脚を軽やかに交わしている。ヨルグは大きさも然る事乍ら、攻撃も豪快。家の周りの木々は次々なぎお倒され、地面には幾多の穴と共に土埃が舞い上がっている。
「お、お嬢様!!!」
隙を見て木の影から飛び出したネリーがベルベットの元へ駆け寄ってきた。
「大丈夫!?」
「お嬢様こそ、怪我などありませんか!?」
ネリーを心配して声をかけたが、当のネリーはベルベットの事が心配で仕方ないらしく、全身をくまなく見て怪我ない事を確認するとようやく安堵の表情を浮かべた。
「ここは危ないから離れましょう」
「え、でも……」
ベルベットがネリーの手を引きその場から逃げようとしたが、ネリーは何やら躊躇してその場を動こうとしない。どうしたのか訊ねると、この家が心配だという。
「愛情込めて手入れして、ようやく家らしくなったんですよ?こんな無駄な争いで壊れていいはずありません!!」
ん~……ネリーが言っている事も最もなんだけど……
毎日楽しそうに家や家の周りを手入れしていたネリーには、家も自分の命と同じぐらい大事らしく、中々その場から動かない。
ベルベットが必死にネリーを説得していると、すぐ真横にヨルグの前脚が物凄い勢いで地面に食いこんだ。サーと血の気が引くベルベットに対し、ネリーは口をパクパクさせて地面に目をやっている。
「な、な、なんて事……!!」
その場所はネリーが丁寧に土を耕し、土を入れ替え、種を撒いたばかりのネリーお手製の菜園だった。可愛らしく立て札まで立てていたのに、その立て札も真っ二つ。
ネリーは次第に顔を赤らめ、怒りで体を震わせ始めた。
「えっと……ネリー?」
ベルベットが声をかけると、キッと目の前で庭を破壊していくリアムとヨルグを睨みつけた。
「いい加減に……しなさァァァァァい!!!!!!!」
山に木霊するほどの大声でネリーが叫んだ。
ヨルグは一瞬たりとも目を逸らさずに名を名乗った。神格を持っているだけあり、騒ぐことも諫めることもせず冷静に落ち着いた口調で話している。だが、ベルベットの心は大いに荒れていた。
(完全に失念してた……!!)
この国にでは白い狼は神に最も近い生き物だと言われて崇められている。特に、ヨルグほどに成長するのは稀で、人々は神の使いだと信じ神格を与えた……──と、ここまでがベルベットが知っているゲーム内での解説だったが、ヨルグが人語が話せるとは記載がなかった。
それに、ヨルグが登場するのはロジェルートだけ……
『すまぬ。驚かしてしまったか?』
顔面蒼白で茫然としているベルベットを心配したヨルグが声を掛けてきた。その声でようやく我に返った。
「ごめんなさい。驚いたのは本当だけど、もう落ち着いたかだ大丈夫」
『そうか、それならこちらを睨みつけているあの二人にも説明を頼めるか?』
ヨルグの声が聞こえないネリーとリアムは怪訝な顔をしながらこちらを見ていた。リアムに至っては、先ほど殴られたのを根に持っているらしく殺気が漏れ出した状態で今にもヨルグの首を掻っ切りそうな雰囲気だ。
ベルベットは溜息を一つ吐くと二人の傍へ寄り、ヨルグの事を話した。何故か分からないが、自分にだけヨルグの言葉が分かることも一緒に伝えた。ネリーはすぐに納得してくれたが、問題はリアムの方。
「肉が神格持ちとかありえないでしょ。ベル騙されてるんじゃない?所詮は獣だよ?」
「騙されるもなにも、調べれば分かる事じゃない」
人の話を聞こうとしないリアムに頭を抱えていると、背後からトントンと大きな爪で肩を叩かれ、腹の底に響くような低音ボイスが聞こえた。
『どうやら、そこの小僧は我を食い物にしたくて仕方ないらしいな』
そう言うヨルグの顔は先程の穏やかな顔から一変、獰猛な獣の顔へと変わっていた。グルルルルと喉を鳴らしながらリアムを睨みつけると、リアムの方も不敵な笑みを浮かべながらヨルグを睨み返した。
「へぇ?僕と殺り合うつもり?いいけど、また気絶するとかやめてよ?」
『小童が……先程は油断しただけだ。本来の力の半分も出ていない』
既に戦闘態勢の二人を目の前にネリーは怯えて、木の影からこちらを見ている。ベルベットは止めに入ろうかと思ったが、今の二人には周りの声は聞こえないだろうと断念した。
本音では、くだない事で時間を潰すな!!と言いたい。
ヨルグがここにいれば、いずれ迎えに来たロジェと鉢合わせしてしまう。それこそ夜逃げ同然で逃げてきたのが無駄足になってしまう。一秒でも早くヨルグをここから遠ざけたい。
まあ、今の二人にはそんな事など関係なしに相手を屈服させることしか考えていない。
『行くぞ、小童!!!』
「さあ、来なよ」
ヨルグの咆哮を合図に飛びかかった。
リアムは身軽さを自慢にしているだけあって、攻撃してくる四本の脚を軽やかに交わしている。ヨルグは大きさも然る事乍ら、攻撃も豪快。家の周りの木々は次々なぎお倒され、地面には幾多の穴と共に土埃が舞い上がっている。
「お、お嬢様!!!」
隙を見て木の影から飛び出したネリーがベルベットの元へ駆け寄ってきた。
「大丈夫!?」
「お嬢様こそ、怪我などありませんか!?」
ネリーを心配して声をかけたが、当のネリーはベルベットの事が心配で仕方ないらしく、全身をくまなく見て怪我ない事を確認するとようやく安堵の表情を浮かべた。
「ここは危ないから離れましょう」
「え、でも……」
ベルベットがネリーの手を引きその場から逃げようとしたが、ネリーは何やら躊躇してその場を動こうとしない。どうしたのか訊ねると、この家が心配だという。
「愛情込めて手入れして、ようやく家らしくなったんですよ?こんな無駄な争いで壊れていいはずありません!!」
ん~……ネリーが言っている事も最もなんだけど……
毎日楽しそうに家や家の周りを手入れしていたネリーには、家も自分の命と同じぐらい大事らしく、中々その場から動かない。
ベルベットが必死にネリーを説得していると、すぐ真横にヨルグの前脚が物凄い勢いで地面に食いこんだ。サーと血の気が引くベルベットに対し、ネリーは口をパクパクさせて地面に目をやっている。
「な、な、なんて事……!!」
その場所はネリーが丁寧に土を耕し、土を入れ替え、種を撒いたばかりのネリーお手製の菜園だった。可愛らしく立て札まで立てていたのに、その立て札も真っ二つ。
ネリーは次第に顔を赤らめ、怒りで体を震わせ始めた。
「えっと……ネリー?」
ベルベットが声をかけると、キッと目の前で庭を破壊していくリアムとヨルグを睨みつけた。
「いい加減に……しなさァァァァァい!!!!!!!」
山に木霊するほどの大声でネリーが叫んだ。
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