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バンッ!!!!ドンッ!!!
部屋で本を読んでいたリーゼは隣から聞こえた大きな音に驚いて本を落としてしまった。
「な、なに!?」
一体何事かとショールを肩にかけ、意を決して隣に続く部屋をノックしてみた。
コンコン……
いつもならすぐ開くドアが今日に限っては中々開かない。
ドアに耳を当てて中の様子を伺うが、さっきのは空耳か?と疑うほど物音一つしない。
仕方なくリーゼはノブに手を置き、そっとドアを開けた。
明かりもつけず真っ暗だが、人の気配はする。目を凝らして良く見ると、窓際に佇むウィルフレッドの姿があった。
いつもと違う雰囲気に、何かあったのが容易に想像できた。
何となく声も掛けづらい感じだし、下手に刺激してはいけない気がして、気付かれる前にゆっくり部屋に戻ろうとした。
「リーゼか?」
「!!」
ドアを閉めようとした瞬間、声がかかり驚きのあまり息が止まるかと思った。
「す、すみません。勝手に入ったりして」
「構わないよ。──こっちおいで。一緒に飲まないか?」
そう言うウィルフレッドの手には栓の空いた酒瓶が握られていた。それをグラスに注がず、直接呷っている。
「そんな飲み方は体に悪いですよ」
「…今日ぐらいは許せ」
何があったのか分からないが、これは相当だな…
リーゼは溜息を吐きながらソファーに座り、目の前に置かれた酒瓶を開けると、グラスに注ぎ一気に飲み干した。
「ほお?結構いける口か?」
楽し気に聞いてくるウィルフレッド。
一気に飲み干したはいいがリーゼ自身、酒を飲んだのは久しぶり。こうでもしなきゃ今のウィルフレッドとまともに向き合えない気がした。
「…何があったんです?」
問いかけるリーゼだったが、ウィルフレッドは黙って空いたグラスに酒を注ぎ、リーゼの前に差し出した。
「…今日陛下に呼ばれた」
「へぇ」
団長が国王に呼ばれるのは別に変った事ではないので、軽く返事を返した。
「今近隣国で戦が起こっているのは知っているか?」
「ああ、どっかの脳筋馬鹿の王が喧嘩吹っ掛けて戦争してるってあれ?」
「そうだ。その脳筋馬鹿の方が、苦戦してるらしくうちの国に助けを求めてきた」
「はぁぁぁ!?」
脳筋だけあって、戦略はまったくだったらしい。相手の国は戦力はいまいちだが、頭がキレる者ばかりで随分と押されているらしい。
事前調査なしで挑む辺り、流石脳筋だと言える。
「えっと、もしかしてとは思いますけど……」
「はぁ~…」
ウィルフレッドの話だと、脳筋王の国では海が近いので珊瑚や真珠の産物が豊富で、流通などで国自体は豊かだと言える。
そんな国からの応援要請に、うちの国王はその産物を見返りとし関税なども免除しろと要請。
脳筋王は勝つことばかりを考えていて、こちらの要求全てを飲んだ。
(そんなだから苦戦すんだよ!!)
要求が通ったとすれば、こちらも兵を出さなければならない。そこで、ウィルフレッドに話が来たと言うことらしい。
「怒りを抑えるのに必死で、最後の方はあまり耳に入ってこなかったが、しばらく留守にする事になるだろう」
「大丈夫…なんですよね…?」
「俺を誰だと思っているんだ?」
そりゃ、自他共に認めるほどの実力があるのは知ってる。知ってはいるが、戦場へ行くと分かっていて心配するなと言う方が無理だ。
折角お互いの心が知れたばかりだと言うのに…これから、仲を深めつつお互いを知っていこうとした矢先にこれだ…
リーゼは俯きながら、酒の入ったグラスを握りしめていた。
「そう心配するな。すぐに戻ってくる」
「………」
そうは言っても易々と戻って来れる訳が無い。怪我をするかもしれないし、最悪の場合…
そう考えると涙が滲んでくる。唇を噛み締め涙を堪えていると、急に浮遊感に襲われた。
「え…!?」
「そんな顔するな。俺だって寂しいんだぞ?」
驚くリーゼを持ち上げながら、ウィルフレッドが言葉をかけると、ポスンッとウィルフレッドの膝の上に座らされ、力強く抱きしめられた。
「出来るだけ早くカタをつけてくる。それまで待っててくれ。…帰ってきたら式を挙げよう」
そう言われ、リーゼは黙って頷いた。
お互いの視線が合うと、どちらかともなく自然と唇が重なった。
❊❊❊
それから数日後、後ろ髪が引かれる中ウィルフレッドは戦場へと向かって行った。
リーゼはウィルフレッドが戻ってくるまでの間、実家であるクンツェル邸に戻る事になった。当初は戻る事を拒否していたのだが、ウィルフレッドに説得された。
「シン一人だけでは守り切れない場合があるかもしれん。向こうにはお前の兄もいる」
そういう理由なら仕方ないと、一月ぶりに屋敷に戻って来た。
「リーゼ!!」
「お兄様」
「待ってたよ!!ああ、顔を良く見せて。元気にしていたかい?」
「ちょっと、お兄様!?」
屋敷に着くなり、兄のマティアスが駆け寄って来た。
全身を確認するように見られ、相変わらずのシスコンぶりに呆れるように溜息を吐いた。
「リーゼ」
「お父様、お母様」
落ち着いた声と共に、両親が顔を出してきた。
「おかえりなさい」と優しく声を掛ける母に、戻って来たんだと実感する。リーゼは笑顔で「ただいま戻りました」と返事を返した。
部屋で本を読んでいたリーゼは隣から聞こえた大きな音に驚いて本を落としてしまった。
「な、なに!?」
一体何事かとショールを肩にかけ、意を決して隣に続く部屋をノックしてみた。
コンコン……
いつもならすぐ開くドアが今日に限っては中々開かない。
ドアに耳を当てて中の様子を伺うが、さっきのは空耳か?と疑うほど物音一つしない。
仕方なくリーゼはノブに手を置き、そっとドアを開けた。
明かりもつけず真っ暗だが、人の気配はする。目を凝らして良く見ると、窓際に佇むウィルフレッドの姿があった。
いつもと違う雰囲気に、何かあったのが容易に想像できた。
何となく声も掛けづらい感じだし、下手に刺激してはいけない気がして、気付かれる前にゆっくり部屋に戻ろうとした。
「リーゼか?」
「!!」
ドアを閉めようとした瞬間、声がかかり驚きのあまり息が止まるかと思った。
「す、すみません。勝手に入ったりして」
「構わないよ。──こっちおいで。一緒に飲まないか?」
そう言うウィルフレッドの手には栓の空いた酒瓶が握られていた。それをグラスに注がず、直接呷っている。
「そんな飲み方は体に悪いですよ」
「…今日ぐらいは許せ」
何があったのか分からないが、これは相当だな…
リーゼは溜息を吐きながらソファーに座り、目の前に置かれた酒瓶を開けると、グラスに注ぎ一気に飲み干した。
「ほお?結構いける口か?」
楽し気に聞いてくるウィルフレッド。
一気に飲み干したはいいがリーゼ自身、酒を飲んだのは久しぶり。こうでもしなきゃ今のウィルフレッドとまともに向き合えない気がした。
「…何があったんです?」
問いかけるリーゼだったが、ウィルフレッドは黙って空いたグラスに酒を注ぎ、リーゼの前に差し出した。
「…今日陛下に呼ばれた」
「へぇ」
団長が国王に呼ばれるのは別に変った事ではないので、軽く返事を返した。
「今近隣国で戦が起こっているのは知っているか?」
「ああ、どっかの脳筋馬鹿の王が喧嘩吹っ掛けて戦争してるってあれ?」
「そうだ。その脳筋馬鹿の方が、苦戦してるらしくうちの国に助けを求めてきた」
「はぁぁぁ!?」
脳筋だけあって、戦略はまったくだったらしい。相手の国は戦力はいまいちだが、頭がキレる者ばかりで随分と押されているらしい。
事前調査なしで挑む辺り、流石脳筋だと言える。
「えっと、もしかしてとは思いますけど……」
「はぁ~…」
ウィルフレッドの話だと、脳筋王の国では海が近いので珊瑚や真珠の産物が豊富で、流通などで国自体は豊かだと言える。
そんな国からの応援要請に、うちの国王はその産物を見返りとし関税なども免除しろと要請。
脳筋王は勝つことばかりを考えていて、こちらの要求全てを飲んだ。
(そんなだから苦戦すんだよ!!)
要求が通ったとすれば、こちらも兵を出さなければならない。そこで、ウィルフレッドに話が来たと言うことらしい。
「怒りを抑えるのに必死で、最後の方はあまり耳に入ってこなかったが、しばらく留守にする事になるだろう」
「大丈夫…なんですよね…?」
「俺を誰だと思っているんだ?」
そりゃ、自他共に認めるほどの実力があるのは知ってる。知ってはいるが、戦場へ行くと分かっていて心配するなと言う方が無理だ。
折角お互いの心が知れたばかりだと言うのに…これから、仲を深めつつお互いを知っていこうとした矢先にこれだ…
リーゼは俯きながら、酒の入ったグラスを握りしめていた。
「そう心配するな。すぐに戻ってくる」
「………」
そうは言っても易々と戻って来れる訳が無い。怪我をするかもしれないし、最悪の場合…
そう考えると涙が滲んでくる。唇を噛み締め涙を堪えていると、急に浮遊感に襲われた。
「え…!?」
「そんな顔するな。俺だって寂しいんだぞ?」
驚くリーゼを持ち上げながら、ウィルフレッドが言葉をかけると、ポスンッとウィルフレッドの膝の上に座らされ、力強く抱きしめられた。
「出来るだけ早くカタをつけてくる。それまで待っててくれ。…帰ってきたら式を挙げよう」
そう言われ、リーゼは黙って頷いた。
お互いの視線が合うと、どちらかともなく自然と唇が重なった。
❊❊❊
それから数日後、後ろ髪が引かれる中ウィルフレッドは戦場へと向かって行った。
リーゼはウィルフレッドが戻ってくるまでの間、実家であるクンツェル邸に戻る事になった。当初は戻る事を拒否していたのだが、ウィルフレッドに説得された。
「シン一人だけでは守り切れない場合があるかもしれん。向こうにはお前の兄もいる」
そういう理由なら仕方ないと、一月ぶりに屋敷に戻って来た。
「リーゼ!!」
「お兄様」
「待ってたよ!!ああ、顔を良く見せて。元気にしていたかい?」
「ちょっと、お兄様!?」
屋敷に着くなり、兄のマティアスが駆け寄って来た。
全身を確認するように見られ、相変わらずのシスコンぶりに呆れるように溜息を吐いた。
「リーゼ」
「お父様、お母様」
落ち着いた声と共に、両親が顔を出してきた。
「おかえりなさい」と優しく声を掛ける母に、戻って来たんだと実感する。リーゼは笑顔で「ただいま戻りました」と返事を返した。
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