異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)

深月カナメ

文字の大きさ
26 / 30

二十四

しおりを挟む
ブランに優しく、なんども震える唇でくちびるを奪われた。

「ヒーラギ、可愛い」
「ブラン……」

涙目で、幸せそうに笑っちゃって……ブラン、私のこと好き過ぎたよ――私よりもずっと大人の人だけど、可愛い人だな。

スリッと鼻と鼻を擦り合わせた後、時計を見たブラン。

「ヒーラギ、もうすぐ昼だな――お昼は大根とヒヨヒヨ鳥の卵スープにしようかな? あとはマジックバックに、鶏肉があったから香草焼きにでもするかな」

チキンの香草焼き?

「それでお願いします」

「わかった、ヒーラギが持ってきたパンも焼くか」
「私、チーズパンが食べたい」

「チーズパンか、いいな」







ブランのウチでキッチンに並んで、お昼の準備をしていた。料理を作るのはブランで私はもっぱら味見役だ。

「ヒーラギ、あーん」
「あーん」

焼き上がった香草焼きのチキンが口に入ったとき、玄関が開き、ブランと呼びロンがスラと入ってきた。

モグモグ……ゴクン。

「ロンとスラ……」

帰ってきたロンとスラは、私とブランを見て『おじゃまだったな』と、オデコをポリポリかいた。

「別にいいよ、何があったんだ?」

「速報だ、魔王が人の国を制圧して魔王嫁を救出した、アリカも無事だ……そして、ヤン率いる竜人軍は黒狼王国を陥落させた」

その報告にブランがヒュッと息吸い喉を鳴らした。

「……そうか、父さんが陥落したか、これで全部終わったんだな」

「ニュ」

「終わったね……ヤンは殺しはしないと言っていた"ただ、一生怪我が治らない、俺の嫁に頭を下げて欲しい"と言ったらしい」

「プライドが高い狼一族、弟達に頭を下げさせたのか、ヤンらしいな……嫁の怪我は魔王でも治せなかったか」
 
「瞳を再生させるのは、相当な技術と魔力がいると言っていたよ」

「そうか難しいか……」

ロンとブランの話で、人の国と黒狼との戦いが終わったと言った。そして、ヤン? という人の奥さんが怪我が治らないと話している。

「ブラン、ロンさん、私の癒しの力が使えない?」

ブラン、ロン、スラが同時に私を見た。

「そうだ、ヤンの嫁の両目は……ヒーラギの癒しの力で、もしかしたら治るんじゃないか?」

「ブラン嫁の力――聖女の力で治るかも知れないね、僕、ヤンを呼んでくるよ」

「ロン、お昼は?」
「戻ってから食べる」

と、スラを連れて出て行ってしまった。







ロンがヤン達を連れて戻るのを待つ間に、お昼を食べようと、食卓を片付けて料理を並べて座った。

「ヒーラギ、どうぞ」
「いただきます」

先ずはチーズがとろーり、チーズパンから一口かじった。カリカリのパンと濃厚なチーズが美味しい。このチーズに焼いたソーセージ、ジャガイモに乗せても美味しいだろう。

ブランもチーズパンをかじり。

「チーズうまっ、ヒーラギ、残ってたソーセージを焼こう。このチーズをソーセージにかけて食べたら絶対に美味い!」

「私も今そう思っていたわ」

ブランは立ち上がり、マジックバックから朝のホットドックに使った、太いソーセージを出してフライパンで焼き始めた。

「ううん、ソーセージの焼ける匂いって、また食欲をそそる」

「焼けたぞ、火傷に注意な」
「はーい!」

フォークにソーセージをさして、パンからこぼれ落ちたとろーりチーズを乗せて、カリッと食べた。ぷりぷりなソーセージにチーズがよく合う。

「「美味しい!」」

二人の声がハモった。


「香草焼きのチキンはハーブの香りがいいわ。大根のスープは優しい味付けね。ブランにお行儀悪いって言われるかもしれないけど、ご飯にかけて食べたい」

アクセントに黒胡椒を振ると良さそう。

「それ、残ったスープで俺もよくやるよ。アクセントにカリカリに焼いたベーコンと、黒胡椒を振るとまた美味い」

「うわぁ、美味しそう」
「ヒーラギ、夕食はそれにするか」

「ええ、ブラン」

私たちの賑やかな昼食は続いた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

巻き込まれではなかった、その先で…

みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。 懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………?? ❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。 ❋主人公以外の他視点のお話もあります。 ❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。 ❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。

【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!

夏灯みかん
ファンタジー
生まれながらに強い魔力を持つ少女レイラは、聖女として大神殿の小部屋で、祈るだけの生活を送ってきた。 けれど王太子に「身元不明の孤児だから」と婚約を破棄され、国外追放されてしまう。 「……え、もうお肉食べていいの? 白じゃない服着てもいいの?」 追放の道中で出会った冒険者のステファンと狼男ライガに拾われ、レイラは初めて外の世界で暮らし始める。 冒険者としての仕事、初めてのカフェでのお茶会。 隣国での生活の中で、レイラは少しずつ自分の居場所を作っていく。 一方、レイラが去った王国では魔物が発生し、大神殿の大司教は彼女を取り戻そうと動き出していた。 ――私はなんなの? どこから来たの? これは、救う存在として利用されてきた少女が、「自分のこれから」を選び直していく物語。 ※スピンオフ外伝を連載中です 『悪食エルフと風魔法使いの辺境遺跡探索記』 肉も魔物も食べる“悪食エルフ”エドラヒルと、 老魔法使いオリヴァーの若き日の出会いと冒険を描いた物語です。 ▼外伝はこちら https://www.alphapolis.co.jp/novel/417802211/393035061 ※表紙イラストはレイラを月塚彩様に描いてもらいました。 【2025.09.02 全体的にリライトしたものを、再度公開いたします。】

婚約破棄されたので、聖女になりました。けど、こんな国の為には働けません。自分の王国を建設します。

ぽっちゃりおっさん
恋愛
 公爵であるアルフォンス家一人息子ボクリアと婚約していた貴族の娘サラ。  しかし公爵から一方的に婚約破棄を告げられる。  屈辱の日々を送っていたサラは、15歳の洗礼を受ける日に【聖女】としての啓示を受けた。  【聖女】としてのスタートを切るが、幸運を祈る相手が、あの憎っくきアルフォンス家であった。  差別主義者のアルフォンス家の為には、祈る気にはなれず、サラは国を飛び出してしまう。  そこでサラが取った決断は?

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

婚約破棄された悪役令嬢が実は本物の聖女でした。

ゆうゆう
恋愛
貴様とは婚約破棄だ! 追放され馬車で国外れの修道院に送られるはずが…

聖女の妹によって家を追い出された私が真の聖女でした

天宮有
恋愛
 グーリサ伯爵家から聖女が選ばれることになり、長女の私エステルより妹ザリカの方が優秀だった。  聖女がザリカに決まり、私は家から追い出されてしまう。  その後、追い出された私の元に、他国の王子マグリスがやって来る。  マグリスの話を聞くと私が真の聖女で、これからザリカの力は消えていくようだ。

処理中です...