離した手の温もり

橘 凛子

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同棲

ep.75

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『ありがとう』
「サンキュ」

彗くんは私達の目の前に出来立てのパスタを提供してくれた。

ベーコンとエビのペペロンチーノ。

本当はエビアレルギーなので食べない方がいいのだが、エビは好き。

彗くんに言うと取り上げられてしまうので黙っておこう。

幸い、エビアレルギーは軽症。

大量に食べなければ、症状は発症しない。

ちょっとくらい、いいだろう。

「なんか、懐かしいな。この感じ」
『え…?』

私と蒼ちゃんが食事する姿を眺めながら彗くんは言った。

目を細め、優しげな眼差しでこちらを見つめている。

「前、よく二人でここにメシ食いに来てたよな。毎週のように」
「そうだったね…」
『結構入り浸ってたっけ』

前というのは、三年前。

私と蒼ちゃんがまだ恋人同士だった頃を言っているのだろう。

あの頃はよくこの店に入り浸っていた。

用がなくてもただ一杯、酒を飲みに足を運んでいた。

確かに懐かしいな。

「またさ、昔みたいにおいで。気軽にさ」
『……そう…だね』

蒼ちゃんの気持ちを知る前だったら二つ返事で頷いていただろう。

特に制限かけるつもりはない、と彼は言ってくれたけどそれを鵜呑みにするのも気が引ける。

全くの関係を遮断することはできないが、少し控えるかもしれない。

彗くんには後で説明するが。

「そうだ。美愛」
『ん?』
「同窓会の幹事から連絡あったけど、参加する?」
『あー…来月だっけ』
「そう」
『……面倒くさいなぁ』
「そう言うなよ。皆んな会いたがってんだから」
『……顔出したらすぐ帰っていい?』
「帰れるもんなら」
『………』

会いたくないわけではない。

ただあの同窓会の煩いガヤガヤ、した感じが苦手だ。

酒を飲むなら静かに飲みたい。

出来ることなら顔出してすぐに帰ることが出来れば理想的。

だが、きっとそれは無理だろうな。

絶対引き止められる。

それを振り解ける自信は私にはない。

「同窓会あるの?」
『あ、うん。高校の』
「行っておいで。久しぶりでしょ」
『まぁ…』
「迎えいってあげるから」
『え、それはいいよ。彗くんいるし』
「ん?なんか言った?」
『…なんでもない』

蒼ちゃんから圧を感じた。

彗くんが送迎するのは駄目らしい。

そこら辺の境界線がよくわからない。

「決まりな。幹事に連絡しとく」
『…ん』

来月の頭ということはちょうど半月後。

面倒だが、行くしかない。

憂鬱だ。

私はため息をつきながら彗くんの作ってくれたパスタを口にする。

酒を飲みながらの食事を楽しんだ。

蒼ちゃんと彗くんが楽しそうに会話する姿を何度か目にすることが出来た。

よかった。

久しく会っていなくてもこうやって顔を合わせれば、何事もなかったかのように会話する。

男の人って不思議。

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