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同棲
ep.89
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「…ごめん」
『……ううん』
「怖い?」
『え…?』
「この先するの」
なぜわかったのだろう。
私の微々たる恐怖心を蒼ちゃんは感じ取ってくれ、唇を離してくれた。
この手の経験はかなり少ない。
あまり好きでもなかった。
恐怖心の方が勝ってしまう。
いい年した大人が情けない。
『……そんなことは』
「無理しなくていいよ。別にそういうことしたくて一緒にいるわけじゃないから」
『でも…』
「俺以外としてない?」
『するわけないじゃん。無理だよ』
「ならいい。少しずつ慣れてくれればいいよ」
『…ん』
蒼ちゃんは嫌な顔一つしなかった。
むしろ少し嬉しそうにさえ見える。
自分でも面倒くさいと思う。
こんな女。
彼以外の男を私は知らない。
三年間誰かを許したこともない。
だから余計、恐怖があるのだろうか。
蒼ちゃんは私を安心させるように腕の中に包み込んでくれる。
甘やかされてるなぁ。
「帰ろうか。明日も仕事なんだし」
『うん』
「送るよ」
『ありがと…』
私は立ち上がって帰る準備をした。
仕事の書類やらパソコンやらが入って重たいトートバッグを肩にかけようとしたが、それは蒼ちゃんに奪われた。
スタスタ、と彼は玄関へと歩いていく。
『重くない?』
「…よく持ってたね。こんな重いの」
『パソコンとか書類入ってるから…』
ほぼ毎日、この重さのトートバッグを通勤で使っている。
重たいには重たいが、あまり苦に思ったことがない。
多分、身体が麻痺しているのだろう。
私達はマンションを出た。
蒼ちゃんの運転する車で私のマンションまで向かう。
車内の音楽は当然のごとく、メタルミュージック。
少し短いドライブを楽しんだ。
「……愛………美愛…!」
『……ん…
あ……』
「起きた?」
『……ごめん。寝ちゃって』
いつの間にか車の窓の外の景色は私のマンション前。
程よい車の揺れが心地よく、眠気を誘ったようだ。
気づかぬうちに眠ってしまった。
この激しい音楽の中、よく眠れたと思う。
自分でも驚いた。
「いいよ。疲れてたんでしょ」
『…そうかも』
「仕事頑張って」
『うん。蒼ちゃんもね』
「時間あるときまたランチしようか」
『連絡するね』
「…ん。よろしく」
私はシートベルトを外して車を降りようとした。
だが、それは蒼ちゃんに阻止される。
腕を引かれ、頬に何かが触れた。
『!』
「忘れ物」
蒼ちゃんは優しく微笑んで言った。
頬に触れたのは彼の唇。
毎回、去り際に蒼ちゃんはキスしてくる。
嫌ではない。
嫌ではないのだが、まだ慣れない。
どう反応したらいいのか困ってしまう。
『……ううん』
「怖い?」
『え…?』
「この先するの」
なぜわかったのだろう。
私の微々たる恐怖心を蒼ちゃんは感じ取ってくれ、唇を離してくれた。
この手の経験はかなり少ない。
あまり好きでもなかった。
恐怖心の方が勝ってしまう。
いい年した大人が情けない。
『……そんなことは』
「無理しなくていいよ。別にそういうことしたくて一緒にいるわけじゃないから」
『でも…』
「俺以外としてない?」
『するわけないじゃん。無理だよ』
「ならいい。少しずつ慣れてくれればいいよ」
『…ん』
蒼ちゃんは嫌な顔一つしなかった。
むしろ少し嬉しそうにさえ見える。
自分でも面倒くさいと思う。
こんな女。
彼以外の男を私は知らない。
三年間誰かを許したこともない。
だから余計、恐怖があるのだろうか。
蒼ちゃんは私を安心させるように腕の中に包み込んでくれる。
甘やかされてるなぁ。
「帰ろうか。明日も仕事なんだし」
『うん』
「送るよ」
『ありがと…』
私は立ち上がって帰る準備をした。
仕事の書類やらパソコンやらが入って重たいトートバッグを肩にかけようとしたが、それは蒼ちゃんに奪われた。
スタスタ、と彼は玄関へと歩いていく。
『重くない?』
「…よく持ってたね。こんな重いの」
『パソコンとか書類入ってるから…』
ほぼ毎日、この重さのトートバッグを通勤で使っている。
重たいには重たいが、あまり苦に思ったことがない。
多分、身体が麻痺しているのだろう。
私達はマンションを出た。
蒼ちゃんの運転する車で私のマンションまで向かう。
車内の音楽は当然のごとく、メタルミュージック。
少し短いドライブを楽しんだ。
「……愛………美愛…!」
『……ん…
あ……』
「起きた?」
『……ごめん。寝ちゃって』
いつの間にか車の窓の外の景色は私のマンション前。
程よい車の揺れが心地よく、眠気を誘ったようだ。
気づかぬうちに眠ってしまった。
この激しい音楽の中、よく眠れたと思う。
自分でも驚いた。
「いいよ。疲れてたんでしょ」
『…そうかも』
「仕事頑張って」
『うん。蒼ちゃんもね』
「時間あるときまたランチしようか」
『連絡するね』
「…ん。よろしく」
私はシートベルトを外して車を降りようとした。
だが、それは蒼ちゃんに阻止される。
腕を引かれ、頬に何かが触れた。
『!』
「忘れ物」
蒼ちゃんは優しく微笑んで言った。
頬に触れたのは彼の唇。
毎回、去り際に蒼ちゃんはキスしてくる。
嫌ではない。
嫌ではないのだが、まだ慣れない。
どう反応したらいいのか困ってしまう。
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