離した手の温もり

橘 凛子

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同窓会

ep.129

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『……いつからですか?』
「ん?」
『その人事異動…』
「正式には来月だが、来週には千葉さんはエリアから外れる。今月までには引き継ぎを済ませてほしい」
『……わかりました』

基本的にこの人事に拒否権はない。

来週に千葉さんがエリアから外れるということはそこから私が担当することになるのだろう。

憂鬱だ。

まだ本社勤務になってから数ヶ月しか経過していない自分には荷が重すぎる。

「如月くん、わたしは?」
「千葉さんは北関東エリアに異動」
「関東エリア…栃木、群馬あたり?」
「あとでリスト送る」
「お願い」

千葉さんはすんなり、と異動の話を受け入れていた。

彼女くらい歴が長いと異動も珍しい話ではないのだろう。

平然とした顔をしている。

「………原田さん大丈夫?」
『え…?』
「この世の終わりって顔してるわよ」
『あは…は…』

もう笑うしかない。

就業時間はもう始まっているが、私たちは今後のスケジュール確認をしてから今日の業務に戻った。

自分のデスクに腰を下ろす頃にはドッと疲れが増した気がする。

まだ今日の業務は始まっていないというのに。

「原田さん、おはよう。なんか…疲れてない?」
『あ…相澤さん、おはようございます。
ちょっと異動の話で…』
「あ、やっぱり原田さんにも話いったんだ」
『はい。千葉さんのエリアまるまる抱えることになりました』
「うわぁ…」

相澤さんはまるで毛虫を見るような表情で顔を歪めた。

やっぱり普通じゃないらしい。

彼女のその表情で私は悟った。

『相澤さんも声、かかりました?』
「あー…うん。でも、わたしは数店舗増えたくらいだったよ。エリアは変わったけど…」
『どこに異動になったんですか?』
「神奈川」
『へぇ…』

神奈川なら都内からの巡回も楽だろう。

羨ましいが、妬んでも私の担当エリアが減るわけでもない。

相澤さんとの雑談もそこそこに私は今日の業務を開始する。

ここ一週間は忙しくなるだろう。

通常業務にプラスして千葉さんとの引き継ぎ業務もあるので、普段よりハードスケジュールになることは間違いない。

しばらくは残業続きになるだろうな。

私はため息混じりに仕事に集中した。


その日、私が帰宅したのは二十二時を過ぎた頃。

不機嫌そうな蒼ちゃんが待っていたのは言うまでもない。

『ぁ…あの…
ただいま…』
「……遅かったね。仕事?」
『ごめん、遅くなって…』
「連絡よこさないから心配したよ」
『ごめんなさい…』
「………ご飯は?食べた?」
『あ、うん。職場の人と…』

すっかり連絡をするのを忘れていた。

千葉さんとの引き継ぎ業務で思ったより遅くなってしまい、いつもの居酒屋で食事してこの時間に至る。

一緒に暮らす以上、こういう連絡は怠るべきではない。
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