私は、聖女っていう柄じゃない

波間柏

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20.番外編 目玉焼きには醤油よね!

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「おはようございます」
「箸置くぞ」
「はよー、ありがと。あれ?まだ朝早いし二人いるの珍しいわね」
「連休と伺っていたので迷惑にはならないかと思いまして」

 既に炬燵、とは言っても今は夏なので単なるテーブルになっているそれに着席している魔術師ギュナイルは、朝から爽やかな笑みを浮かべている。

 え、魔術師なんてアナタ頭をやられてると思った方々、私は正常ですからね。

「野菜は量を減らしたから食べるか?」
「ありがと」

 サラダの入った小ぶりな器を渡してきたエプロン男のランクルは、最近手際の良さに磨きがかかっているが、本職は騎士である。

 何故こんな濃ゆいメンバーと絡む事になったかというと、ある夜勤明けの日にいきなり異世界に落ちたのだ。いやーあの時に打ったお尻は見事なアザができたわよ。

 まぁ、それで聖女様と気持ち悪い呼び方を訂正しつつ権力の渦に巻き込まれないよう帰るまで婚約しろとか言われましてね。

 え? イケメンでも断ったわよ。だって面倒じゃないの。自分の世話だけで精一杯なのに。イケメンはテレビ越しで充分でしょ。

 なのにさ。せっかく戻ってきて通常生活を送れていたはずが、いまや向こうから定期的に遊びに来る二人。しかも嫁になれと煩いし。

「これ使います?」
「ん」

 受け取ってかけようとした手を寸前で止めた。

「ギュナイル~。目玉焼きは醤油でしょ」

 そう、彼が手にしたのはソースである。私は断然、目玉焼きには醤油なのだ。

「私は、ソースが合うと思うのですが」
「醤油でしょ! そんでもってご飯に乗せて食べるのが一番よ!ランクルもそう思うでしょ?!」

エプロンを几帳面に畳んだ彼は。

「俺はどちらも好きだが」

あー、いるよね!こういう中立派。

「好みはそれぞれだ。醤油、濃口でいいか?」
「君は分かってる! さらに醤油派ならイケメンよ!」
「貴方は元気ですね。昨日はあんなに落ち込んでいたのに」
「ギュナイル煩い!」

 ギュナイルを睨みつけ、ランクルから醤油を受けとった瞬間。

ピカッ

「え?」

なんで、私まで光ってんの?
まさか。

「あれ? なんでアンタがいるの?」

 眩しさで閉じていた目を開けは、目の前にはあの生意気な見た目少年、中身100歳の魔術師が。

「レイちゃんじゃない!」
「その呼び方はヤメロ!」

という事は?

「私の休みがー!奇跡の連休がぁー!」
「煩い」
「落ち着いてください」
「それ、吹き出ている」

 私は、醤油を握りつぶしながら再び異世界に来てしまった。






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