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27.私、リューさんと少年と
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ギィーン!
ガキンー!
ガリガリ
「楽しいのか?」
「若さを吸いとってるんです」
「……嬢ちゃんが言うと冗談に聞こえないんだが」
「そうですか? もちろん可愛い冗談ですよ」
そんな事が可能ならばとっくに実行している。
ガリガリ…ガリガリ
「さっきから何をやってるんだ?」
リューさんが覗きこんできたのか手元に大きな影ができた。
見づらいなぁと思いながらも私は手元に視線を向けたまま上の空で答える。
「頭の中の整理ですよ」
昨日は、何故かそんなに飲んだ記憶はないのに、いつの間にか寝ていたらしく目が覚めたら朝だった。まあ量も少ないせいもあるのか二日酔いにもならずスッキリだ。
ただ、今後の事を考えないといけないのがね。
「なら何も煩い場所でわざわざする必要ないんじゃないか?」
「一生懸命な人達を見れば、ちょっとやる気がでるかと思って」
そうです。
私は、再び騎士さんの訓練を見学しつつ、前回より少し離れてた場所に陣取り、眺めている合間に地面に木の棒で、脳の整理を兼ね書いているのだ。
空は雲ひとつない青空で、風はやわらかく吹き、時折どこからか花びらがヒラヒラ舞ってくる。
これ以上ないくらい平和そのものだ。でも、のんびりそれに身を委ねている場合じゃない。
私は帰らなければ。
早く早く──。
ポキッ
「あっ」
無意識に力を入れすぎたのか見事に棒が折れた。
「ふぅ」
折れた棒を放り投げ立ち上がり伸びをした。
「うっ」
足が痺れて地味に辛い。
私が痺れと格闘している間に剣の音が止んだ。どうやら休憩にはいったらしく皆は隅に移動している。
「あのな、助かった」
前後の話もなくきいなり声をかけられて意味が分からないまま後ろを見れば、首の後ろに手をあて視線を不自然に横に向けたリューさん。
なんだっけ?
「えっと、何でしたっけ?」
本当にわからない。
昨日、先に寝落ちしたのも私だし。リューさんは、ポリポリ首を掻きながら此方をちらりと見て一言。
「足」
「ん? あー、この前の」
ついポンッと手を叩いてしまった私は、やっぱりオバサンなんだろうか。
「私が油断したせいで、むしろ痛い思いをさせてすみませんでした」
逆だ。
あれは私のミス。今更ながら、ごめんなさいと頭を下げた。
「前に言われた通りでしたよ。自分が温室育ちなんだと改めて実感しました」
でもねとため息をついてしまう。
「ただ、気を付けるというか訓練しかないのかも。こればっかりは急には難しい。まあ、ツメが甘いと自分で気がついているだけマシかと思います」
気づいていないよりは、生存確率は確実に上がるはず。そう思って笑ってしった。生存確率なんて日常で考えた事もなかった。
「嬢ちゃんは、そのままでいい。いや、そのままが一番だ」
俺が勝手に礼を言いたかっただけだ。そう言いながら彼に頭を軽くポンポンされた。
だから子供じゃないから。
その手がピタリと止まったので見上げれば、彼の視線は一点を見ていた。
「地と闇の地形か?」
「はい」
「上手くかけてるが、ここは最近崩れて通れないぞ」
今、私の足元の地面は地図と字でびっしり埋め尽くされている。彼は、転がっている棒を拾うと書きたしながら色々教えてくれた。
あれ、いやに詳しくない?
私は、極秘扱いの地図を閲覧させてもらったのを元に描いたというのに。
特に地の国の情勢に関してはずば抜けている。ああ、そういえば、潜入したりしてたって言ってたっけ。
この時の私はリューさんの様子にまったく気づいていなかった。
「何か用か?」
突然リューさんが私に説明しながら、顔も上げずにそう言った。私はえっと再度しゃがんでいた腰をあげ立ちあがれば1メートル先くらいに青年が立っていた。
「……この前は、すみませんでした」
「それで謝ってんのか?」
青年の精一杯であろう謝罪に対して冷めたリューさんの声が青年に突き刺さる。それでもめげず青年の瞳は私を見ていた。
「あ、思い出した」
いつぞやか中庭でラジの昇進のことで突っかかってきた青年だ。
すぐに思い出したのは、瞳の色が珍しいからだ。
水の国の人の瞳は濃さの違いはあれど水色だと最近知った。
そういえば、今まで会った水の国の人で違う瞳の色はラジしか知らない。何故、彼は瞳の色が違うのかは、なんとなく踏み込まないほうが良いような気がして触れた事はないけれど。
「私も大人げなかったし、気にしてないから」
「嬢ちゃん、そこの甘さは直した方がいいぜ」
リューさんの呆れた声に、いや、あの時は私も大人げない行動をしたと反省している。
「他にも何かあるの?」
話は終わったはずなのに青年は立ち去る気配がない。
「俺、いえ、私も何かやりたい…です!」
拳を強く握りしめながら、叫ぶようにそう言われた。下を向いた青年を観察してみれば、ほっそりとした体は青年というよ少年に近く、無造作に結ばれた長い髪は、とても綺麗な金髪だ。
うん、これでいこう。
私は、あくまでも勝手なイメージ、一昔前のプロデューサーのような偉そうな態度で青年を指差し言った。
「いいわよ。君、採用」
「えっ」
オッケーされると思っていなかったらしく驚く青年。君が言ってきたんじゃないの。
何を驚いてるの?
「おいおい、ラジに怒られるぜ」
知らないぞ俺はと呟くリューさんを無視して青年に聞く。
「ねぇ、君、名前なんだっけ?」
まずそこよね。
ガキンー!
ガリガリ
「楽しいのか?」
「若さを吸いとってるんです」
「……嬢ちゃんが言うと冗談に聞こえないんだが」
「そうですか? もちろん可愛い冗談ですよ」
そんな事が可能ならばとっくに実行している。
ガリガリ…ガリガリ
「さっきから何をやってるんだ?」
リューさんが覗きこんできたのか手元に大きな影ができた。
見づらいなぁと思いながらも私は手元に視線を向けたまま上の空で答える。
「頭の中の整理ですよ」
昨日は、何故かそんなに飲んだ記憶はないのに、いつの間にか寝ていたらしく目が覚めたら朝だった。まあ量も少ないせいもあるのか二日酔いにもならずスッキリだ。
ただ、今後の事を考えないといけないのがね。
「なら何も煩い場所でわざわざする必要ないんじゃないか?」
「一生懸命な人達を見れば、ちょっとやる気がでるかと思って」
そうです。
私は、再び騎士さんの訓練を見学しつつ、前回より少し離れてた場所に陣取り、眺めている合間に地面に木の棒で、脳の整理を兼ね書いているのだ。
空は雲ひとつない青空で、風はやわらかく吹き、時折どこからか花びらがヒラヒラ舞ってくる。
これ以上ないくらい平和そのものだ。でも、のんびりそれに身を委ねている場合じゃない。
私は帰らなければ。
早く早く──。
ポキッ
「あっ」
無意識に力を入れすぎたのか見事に棒が折れた。
「ふぅ」
折れた棒を放り投げ立ち上がり伸びをした。
「うっ」
足が痺れて地味に辛い。
私が痺れと格闘している間に剣の音が止んだ。どうやら休憩にはいったらしく皆は隅に移動している。
「あのな、助かった」
前後の話もなくきいなり声をかけられて意味が分からないまま後ろを見れば、首の後ろに手をあて視線を不自然に横に向けたリューさん。
なんだっけ?
「えっと、何でしたっけ?」
本当にわからない。
昨日、先に寝落ちしたのも私だし。リューさんは、ポリポリ首を掻きながら此方をちらりと見て一言。
「足」
「ん? あー、この前の」
ついポンッと手を叩いてしまった私は、やっぱりオバサンなんだろうか。
「私が油断したせいで、むしろ痛い思いをさせてすみませんでした」
逆だ。
あれは私のミス。今更ながら、ごめんなさいと頭を下げた。
「前に言われた通りでしたよ。自分が温室育ちなんだと改めて実感しました」
でもねとため息をついてしまう。
「ただ、気を付けるというか訓練しかないのかも。こればっかりは急には難しい。まあ、ツメが甘いと自分で気がついているだけマシかと思います」
気づいていないよりは、生存確率は確実に上がるはず。そう思って笑ってしった。生存確率なんて日常で考えた事もなかった。
「嬢ちゃんは、そのままでいい。いや、そのままが一番だ」
俺が勝手に礼を言いたかっただけだ。そう言いながら彼に頭を軽くポンポンされた。
だから子供じゃないから。
その手がピタリと止まったので見上げれば、彼の視線は一点を見ていた。
「地と闇の地形か?」
「はい」
「上手くかけてるが、ここは最近崩れて通れないぞ」
今、私の足元の地面は地図と字でびっしり埋め尽くされている。彼は、転がっている棒を拾うと書きたしながら色々教えてくれた。
あれ、いやに詳しくない?
私は、極秘扱いの地図を閲覧させてもらったのを元に描いたというのに。
特に地の国の情勢に関してはずば抜けている。ああ、そういえば、潜入したりしてたって言ってたっけ。
この時の私はリューさんの様子にまったく気づいていなかった。
「何か用か?」
突然リューさんが私に説明しながら、顔も上げずにそう言った。私はえっと再度しゃがんでいた腰をあげ立ちあがれば1メートル先くらいに青年が立っていた。
「……この前は、すみませんでした」
「それで謝ってんのか?」
青年の精一杯であろう謝罪に対して冷めたリューさんの声が青年に突き刺さる。それでもめげず青年の瞳は私を見ていた。
「あ、思い出した」
いつぞやか中庭でラジの昇進のことで突っかかってきた青年だ。
すぐに思い出したのは、瞳の色が珍しいからだ。
水の国の人の瞳は濃さの違いはあれど水色だと最近知った。
そういえば、今まで会った水の国の人で違う瞳の色はラジしか知らない。何故、彼は瞳の色が違うのかは、なんとなく踏み込まないほうが良いような気がして触れた事はないけれど。
「私も大人げなかったし、気にしてないから」
「嬢ちゃん、そこの甘さは直した方がいいぜ」
リューさんの呆れた声に、いや、あの時は私も大人げない行動をしたと反省している。
「他にも何かあるの?」
話は終わったはずなのに青年は立ち去る気配がない。
「俺、いえ、私も何かやりたい…です!」
拳を強く握りしめながら、叫ぶようにそう言われた。下を向いた青年を観察してみれば、ほっそりとした体は青年というよ少年に近く、無造作に結ばれた長い髪は、とても綺麗な金髪だ。
うん、これでいこう。
私は、あくまでも勝手なイメージ、一昔前のプロデューサーのような偉そうな態度で青年を指差し言った。
「いいわよ。君、採用」
「えっ」
オッケーされると思っていなかったらしく驚く青年。君が言ってきたんじゃないの。
何を驚いてるの?
「おいおい、ラジに怒られるぜ」
知らないぞ俺はと呟くリューさんを無視して青年に聞く。
「ねぇ、君、名前なんだっけ?」
まずそこよね。
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