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36.悔しいが言い返せない
しおりを挟む「なんか、色々お世話になったわ。ありがとう」
私は、海辺で遭遇した風の人達にお礼を伝えた。
結局、あれから簡易寝床まで貸して頂き、夕食だけでなく今朝の朝食も提供してもらった。食事は硬い携帯用のパンと現地調達のおかずだった。
そして昨日から今日迄に私が痛感した事がある。
今の私では一人での夜営は無理だという現実。
ダッガーの視線を感じ昨夜の彼のムカつくけれど正論な言葉を思いだした。
『アンタさ~、偉そうな態度のわりに何もできないのな』
簡易テントのような物もやり方がいまいち分からないから組み立てられない。飲み水を運ぶにも力が足りないので少量しか持てず、現地調達の食事、ようは動物は、光達の力を使えばすぐ仕留める事ができるのに的をはずしっぱなしで出来ない。
下処理なんてもっと駄目だった。
魚は大丈夫だけれど、あのつぶらな瞳の動物を…。結局お肉は食べられなくて焼いた魚を食べた。
あれも駄目、これも駄目。出来るのに出来なかった事ばかり。
これでは駄目だ。
私は、不思議な例えるならガチョウに似た生き物に乗っているダッガーに言った。
「今度、森の中で夜を明かす時は、必ず獲物を仕留めるから捌き方教えて」
違う。
「教えて下さい」
ダッガーに頭を下げた。
遠目に見た彼の狩りや処理の動きは皆の中で一番無駄がなく、見た目に似合わずとても丁寧な仕草だったから。
正直、元の世界に戻るのだから、そんな事を覚える必要はない。でも、出来るはずの事をしないのは違う気がした。なにより生きる事は誰かの命を奪う事。
生きるた為に獲物を狩るのは必須であり必要な分だけを狩り無駄なく食べる。
当たり前だけれど、今の元の世界ではリアルに感じることがないものだった。
いや、感じないままのが良かったのかもしれない。
『いただきます』
『なんだ、そりゃ?』
『感謝しているんです。気にしないで下さい』
『へんな奴だな』
昨夜、私は人生で初めて心から戴きますと口にした。
私は、誰かの命を奪い生きていると自覚させてくれたこの世界に後悔とほんの少しだけど感謝したくなったりと、矛盾な感情を抱いている。
「ふ~ん。教えてやってもいいが、その時までにもっと成長しとけよ」
「下品ですよ」
こことかと、言いながら身体のラインを手を使い空中で表すダッガーをすかさず叱るリース君。
悪かったわね!足りてないのは自分が一番わかっているわよ。それに27歳の私は少しはくびれがあるんだから!
この男、無駄にイライラさせられるんだけど。
***
「じゃ、機会があったらまたね」
私は、大人げないから口にはださず、でも心で覚えてなさいよ! と捨て台詞を吐き、挨拶をして教えてもらった地の国の方角へと足を向けた。
…ん?
背後に視線を感じ後ろを振り向けば。
「なんで付いてくるの?」
別れたはずのリース君とダッガーが、ガチョウもどきに乗って真後ろにいた。
「あ?リースが行くってごねたんだよ!」
「あなただって、あいつすぐ獣に食われるんじゃねーかって言ってましたよね」
なんだか二人で言い合いが始まったと思ったら、息ぴったりにこちらを向き。
「危なっかしいので」
「死んだら後味わりぃし」
うん、言い方に差はあれど、気にはしてくれているらしい。
「他の人は?」
「任務は終わったから先に帰らせましたよ」
だから私達だけですとリース君。
目的地迄の距離はそう遠くないが、この大型の獣がいつ出没するかわからない環境で1人よりはこの二人がいたほうが良いわよね。
「見返り求められても何もないわよ?」
「そんな事なんて考えていませんよ」
「俺好みに成長しろ」
最後の台詞は無視。
まぁ、いっか。ラジが騒いだら逃げてもらおう。
「じゃあ近くまでお願いします」
私は、ガチョウもどきに乗っている二人によろしくと手を差し出した。
だいたい目的地まで4時間くらいだ。でも、その間だけ限定の珍妙なチームがこうして出来上がったのだった。
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