気がつけば異世界

蝋梅

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42.まったりとした時間は一瞬で

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「美味しい」
「当然だな。俺の店だし」

 意外にも出された軽食はとても口に合った。

 パンケーキの様な円形の生地にディップをつけて食べる。生地はよく噛むと自然な甘味が微かにあるくらいなので香辛料が効いたディップにも合うし飽きたら甘いソースや果物をのせるように小さな器に粗めにカットされた果物が品よくおさまっている。

なかなかやるな。

 勿論作った調理の方々に対してだけど。

「よく不安にならないですね」

 ナウル君が小声で私に話しかけてくる。ラジも私が食べようとしたら先に私がと言い毒味をしてくれたけど、私は正直心配はしていない。

「だって利用価値がある人間に何か盛らないでしょ?」
「声が大きいですよ!」
「あんたホントいい度胸してんな」

 焦るナウル君に呆れ半分馬鹿にしたような表情の青年メルベ様。

 ふ~ん、なら君はどうなのよ。

 話す前に光に音が外に漏れていないか確認して、大丈夫なようだから遠慮なく話す。

「なら、貴方は本当にメルベ様?」
「どういう意味だ?」

 今、まさにお茶のおかわりをカップに注いでくれている焦げ茶色の綺麗な髪の青年に話しかけた。

「実は貴方は王子様だったり」

 ほんの一瞬だけ動きが止まったように見えた。

 けれど、乱れることもなく淹れ終えると優雅に後ろにさがった。

凄いね君。

 あっ、それとも。私は更に可能性をあげてみた。目の前の上座に座る自称メルベ様に。

「ついでに君も王子だったり。それと、さっきの美女も実在する人で、血が繋がっているお姉さんとか」
「えっ!本当ですか?!」

「……ナウル君。後でおしとやかな女性になれるよう訓練しましょうね」

 はしたない妄想をしたであろうナウル君を見て私は鬼になる決意をした。

「どうしてそう思う?」

 メルベ様、いい顔できんじゃない。

「ラジ、狭いから。それに本気じゃないのはラジなら分かっているでしょ?」

 苛々とした様子を隠さないなんて珍しい。

 よっぽど、べたべたされたのが嫌だったのかな。

 男性なら、あのオムネはお近づきになりたくて仕方がないように思うけどな。あっ、タイプが違う?

「ユラ、変な想像をするのは、やめてもらいたい」
「はいはい」

 ラジに叱られた。しかし、なんで分かったのか不思議だわ。

 それで、なんだっけ。話が逸れたな。

「思い出した。何でそう思ったかね。上品過ぎるからよ」
「上品?」
「そう」

 淹れてもらった甘くないレモンティーにそっくりな飲み物を一口。話すと喉が渇くのよ。あぁ、お茶まで美味しい。

 私は、出来るだけソーサーにそっとカップを戻して機嫌が悪そうなメルベ様と会話を進める。

「上品過ぎて変なんですよ。あと外見は似てないけれど皆雰囲気が同じだと感じたから」
「それだけか?」
「しいて言うなら此処に来るまでの道で見かけた建物、人を観察してかな」

 いくら言葉使いが悪かろうが、かたや地味にしていても、この二人は別格にしか見えない。伊達に歳をくっていないのだよ。ある程度働いてきたのだ。ようは勘。

「何?」
「問題ない。伝達だ」

 いきなり白いクロスがかかっているテーブルの上に砂が現れた。

 それはドーナツの形になると穴からなにやら光るリボンが出てきて、メルベ様がそれを引き抜いた。それには字が書いてあるようだ。

「なあ」

 メルベ様に呼ばれたが、そんな馴れ馴れしい仲じゃないし。私が返事をしなかったら、リボンを投げてきた。

「あんたらのお仲間、捕まったらしいぜ」

私は、ラジにリボンを渡した。

 ひったくるように受け取ったラジは、読み私に顔を向けた。

「確かに捕らえられたと書かれている」

私はメルベ様に文句を言った。

「それだけでは信じられない」

何かをまた投げてきた。

 掴んだ手を広げてみると涙の形の綺麗な水色の石。ネックレスだったのか鎖が切れている。

「見せて下さい」

 ラジの手に渡せば、瞬時に険しい顔になった。

「彼のだ」
「なんで分かるの?」

 見た目は何も綺麗な石なだけなのに。

 量産している品なら罠の可能性だって充分ある。

「今は戦をしていませんが、戦になれば顔の判別もつかない場合もある。その際に、これで本人かどうか判断できるようになっている。これは本人の魔力と名が中にいれられているからだ」

危機なのはわかった。

 でも、そんなに青ざめるなんてラジらしくない。まるで、私の考えが聞こえたかのように琥珀色の瞳と目が合う。

「これは、そう簡単には外れない」
「引き千切られたみたいだけど」

ブツリと切られている鎖。

「それは魔力で外れにくくなっている。だから外れる時は、余程外からの力が強かったか」

 ラジは、ネックレスが壊れそうなくらい握りしめ。

「または、保持者が死んだ時に外れる」

…リューさん。




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