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59.復活
しおりを挟む「ダッガー殿!この場所では剣を禁じられているのを忘れてはいまい!」
ダッガーが投げた腕輪のような物は、形を変えてラジの両腕、胴、両足を拘束しいて空中で縫いとめられているように見えた。
ラジの殺気立つ強い視線は、何故かダッカーから私に移動した?
「ノアは?!」
あ~、貴方がそれ言っちゃうんだ。
緊迫感漂うなか場違いなのは理解しているけど、ついラジに怒鳴り返した。
「怒鳴んないでよ!私にラジの匂いが付いちゃったから嫌で近づいてこないよ! 私だってモフリたいのに!」
癒しが足りない!
その思いを込めラジを睨みつければ。
固まったラジは、数秒後に顔から耳まで真っ赤になった。
そこ恥じらうとこ?
いや、これはこれで可愛いけどさ。
「なー、いちゃついているところ悪いが状況わかってんのか?」
「「いちゃついて(など)ない!」」
ラジと見事にハモった。
なんか、太い首を痒いと掻きだすダッガーにもムカついてきたわ。
「そろそろいいか? あぁ、水が邪魔だな。あんま感覚がないが丁度良い。試してみるか」
ダッガーはよくわからない事を呟くと空いている手を軽く振った。
「なんかこれぞ魔法って感じだわぁ」
私とダッカーの足元から水が消え地面は平らな白い石畳になり、無くなった水は周囲を取り囲んでいる。よく目をこらせば、さっき見た魚もいた。
「動きやすいだろ?」
ダッガーは、片手に剣を持ちだらりと下げ力を完全に抜いている。
「いっとくが、遊びじゃないぜ?」
分かってる。ダッカーから少しだけど、ピリッとした空気を感じるから。
でも、なんで私がこの人とやり合わないといけないのか?
ギィン!
「つぅ!」
「おいおい、考え事か? 余裕だな」
デカイのに速い!
なんとか寸前で武器を腰から外し大きくして剣を受け止めたが、危なかった。
「ほぉ。反応は悪くねぇな。っと」
武器に力を込めてあっても、この馬鹿力ダッガー相手だと負ける。特に長期戦は不味い。
剣を合わせたまま、タイミングをずらすように力を逃がしていく。
「イッ!」
ホント馬鹿力だ!
ただ受けてるだけなのに手が痺れ腕が震える。
「どうすんだ? これじゃあ持たねぇぞ?」
言われなくても分かってるわよ! このままだとすぐに武器も役立たずになる。
……無力だな私。
でも、死にたくないよ。
光の事、たまに煩いって思う時もあるけれど、応える声がないのが寂しい。
私、まだいける?
穢れてない?
あの時、人ではなくなった者とはいえ、手にかけてしまった。恐ろしい事に麻痺して徐々に武器を振るうのが快感にさえ感じていた。
光…私は、帰れるかな?
皆も答えてよ。
「アンタみたいなのは、これのが効くか」
「え?」
ダッガーの手から何かが放たれた。
その先は。
「ラジっ!」
ラジに緑色の剣が刺さった。
「どうだ? ちったぁやる気になったか? 急所は外したが次は…」
頭の中が真っ白になって。
「剣になれ」
気づいたら、持っていた武器を手から放し、口にしていた。
次に感じたのは、剣の重みといままでにない感覚。
「まあ、もうちょい上がよかったが短剣にしたのはいい考えだな。力も長さもないお前は接近して殺るほうが消耗しない」
「あ…」
私は、今度こそ人を。
どうしよう。
手が、身体の震えがとまらない。剣を離さなければ。抜かなきゃいけないのに!
「ユラ、上向け」
「え、つう」
全てを飲み込むようなキスをされた。
まるで獣だ。
だが、荒々しく奪われた唇とは真逆なダッガーの冷静な瞳が私を見ていた。
「はぁっ」
数秒だったはずなのに苦しくて。膝が崩れた私は濡れた石畳に手をついて体を支えた。
カラン
その手の近くに刺した剣が投げられたらしく軽い音をたて床を転がって行く。
「手間かけてやったんだから、これでも足りねぇ。残りは次回にとっておくか」
なんで?
「…痛くないの?」
自分の重たい頭を上げてダッガーをみれば。
「何で透けて」
「俺は暇じゃねぇって言っただろうが。こんな場所に生身で来るわけねーだろうが」
確かに私は刺した。
それに、たった今されたキスだって。
「あー、リースの力だ。触れた感覚もあるんだろ? まだ奴いわく実験中だそうだ」
「でもっ! 傷は? ラジは?!」
ダッガーの傷と同時にラジの状態も気になり、ラジのほうへ向ければ、彼は倒れていた。
「痛みのある幻ってヤツで死にやしねぇよ。あー、ただ痛みに耐えられないのは死ぬって言ってたな。そいつなら、かすり傷みたいにしか感じてないはずだ。拘束具が奴が出した魔力を吸いとったから単に倒れてるだけだぜ」
ラジは無事。
目の前の消えかかっているダッガーを見た。
「…怪我は?」
私の言葉に、ダッガーは黒い笑いを返してきた。
「なんだ? 添い寝でもしてくれんのか?」
「なっ、真面目に聞いてんのよ!」
なんて奴!
「残念だが無傷」
──コイツは。
苛ついた私の頭に何かが当たった。
「探しるんだろ?」
腕輪がシャラリと鳴った。
ダッガーが、投げてきたのは、黒い小さな鉄の塊。
片割れの神器だ。
「何故?」
何故、わざわざ渡しに来てくれたの?
「勘違いすんな」
低く強い、抑制された上に立つに相応しい声が更に耳元で響く。
「お前を手に入れれば、この世界が手に入る」
思わず顔が上がった。
「まあ、そんな考えもあったり? だが、俺はなぁ。好みがなぁ。もう少し出るとこが出ないと」
──ブチン
「……使えなくしてやろうか」
手元に落ちている剣を拾い握りしめ狙いを定める。
「おいおい、救世主様のお言葉にしちゃあ上品に欠けすぎじゃねぇか?」
貴方にだけは、言われたくない。
「ユラ様っ」
リアンヌさん達が扉を壊し入ってきた。
「時間切れだな」
消えかかっているダッガーが最後に言った台詞は。
「早く大きくしろよ」
「余計なお世話よ!!」
なんなの。
もの凄く不愉快なんだけど。
『ユラ』
「あ、光!」
いつの間にか人の姿の光が後ろにいて。
『私は、男の急所を刺す為に剣にはなりたくありません』
久しぶりに会った光から出た言葉は、その美貌の口から出たとは思いたくないほど残念すぎる台詞だった。
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