気がつけば異世界

蝋梅

文字の大きさ
67 / 124

67.飲んで食べてその後は

しおりを挟む

「皆さんに手伝って頂き今日はぐっすり眠れそうです! 作ったのは私ではないけれど、今夜は沢山食べて飲んで明日からよろしくお願いしますー! カンパーイ!」

 夜の宴の音頭をとり、私は立ったままイッキ飲みした。良い子はやってはいけないぞ。

「ぷはー! うまいっ!」

 いやぁ、体を動かした後の 一杯は最高だ!

  まぁ、ブドウジュースなんだけど。

「短時間のわりに見違えたな」
「遊んでいたじゃないですか」
「あ? 俺も動いたぜ」

 お酒を与えてにないのに、王子がなにやらナウル君に絡んでいる。

「壺を割ったの見ましたけど」
「あれは声をかけたお前が悪い! それに俺は客だ!」

 もはやドラマみたいなセリフである。

「そんな態度の悪い王子なんて見たことないのですが。あ、此方にいらっしゃいましたね」
「あぁ?!」

 マート君とナウル君は、仲が良いのか悪いのかよく分からない。まぁ若い者同士だしなぁ。

「若いっていいわよねー」

 私の言葉に二人は「コイツ、何を言ってるんだ? 」と言わんばかりの顔をされた。

「ユラ」

 ふっと私の左に影ができたと思えばラジだ。相変わらず気配を消すのが上手い。

「どういうつもりだ?」

 その目は地の国で一緒に夜を過ごしたとは思えない鋭い視線。あれ? でも甘ったるい時もあったのになぁ。

「んー、大した事はしないわよ。だから、そんな緊張感を出さないでくれる? 周りが勘ぐるじゃない」

 私は、持っていたグラスを置き、両手でラジの両頬をそれぞれつまみ円を描くようにひっぱって離す。ムッとしたラジの口元に私の飲みかけのグラスを軽く押しつけ、煽るように上目づかいで言ってみる。

「間接キスはいかが?」

 ラジは、眉間のシワをそのままに無言で私の手ごとグラスを掴み、残りを飲み干した。

「ほら、お酒じゃないでしょ?」

 本当は飲みたいんだけどね。そんな私に諦めた彼は。

「無茶はするな」

 ふいに見せるラジの、しょうがないなっていう顔が実は結構ツボ。

ホント優しいよね。

「了解~」

それに比べて私は。

「キュキュ」

 宴会の場と城内を一周してきたノアが、私の肩に飛び乗ってきたので首輪のあたりを軽く掻いてやれば喉がなった。

「ノア、大丈夫そう?」
「キュイ!」
「アハハ、そっか。ありがと」

 自信満々に胸の反らしたので笑ってしまった。可愛いなぁ。

「じゃあ、私達も食べますかね」
「キュ!」

 ノアは、返事をした直後、自分の顔くらいある果物にかぶりついた。私も負けじとお肉の照り焼きにフォークを刺し今日は無礼講よねと、カットせずに塊を頬張った。。



* * *


 食事をし始めて約一時間後。

「ご馳走さまでした! 美味しかったけど食べ過ぎたなぁ」

 お腹をさすりながら空腹が満たされ重たくなった体で立ち上がれば、椅子の音がいやに大きく感じた。

「壮観というか異様?」

 広い宴の場を見渡せば、椅子にもたれ掛かる者やうつ伏せになっている人など状態は色々だけど共通点がただ一つ。皆、夢の中だ。

「一人ぼっちっち~」
「キュ!」
「あ、ノアがいるわね」

 抗議されたので訂正します。一人と一匹でした。

『ユラ』

違った。まだおります。

「なんか、皆が出てくると濃いわねぇ」

 私の隣には、インパクトの強い神器の方々がいらっしゃる。いや、お願いしたのは私だけどさ。

「時間がもったいない。さっさと始めますか」

 私は、この世界の人を100%信じない。

 それは、間違っていないはず。


──なのに。

 ラジやナウル君、リアンヌさん達の眠る姿を見ると少し苦しい。

いいえ。

 私は、何故か強い罪悪感を感じていた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています

放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。 希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。 元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。 ──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。 「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」 かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着? 優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。

推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について

あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。

【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?

きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

処理中です...