勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり

文字の大きさ
5 / 167
第1章 始まりと魔法世界への準備

第5話 高校時代の元カノは変わっていなかった

しおりを挟む


 こいつ松沼美月(まつぬまみづき)は、高校3年の夏前に、突然俺の目の前に現れた。

 みんなが彼氏彼女を連れているのに、一人だと行事に合わせにくいから……
 みんなに合わせて行動する時に、数がちょうど良くなるから……

 今フリーなら彼氏になれ。

 そんな、極めて一方的で、訳の分からない理由を宣言されて、付き合いが始まった。可愛かったんだよ。高校3年の男で否定なんてできないよ。


 俺はあの時、安易に引き受けたのを後になって後悔したが、健康な高校3年生の男子に、優しそうにニコっと笑うお嬢さん風の女の子からの誘いを、その後も断ることなど出来なかった。
 そのために、それからの半年間、高校3年の青春『周りの奴らは性旬だった』真っ盛りに、色気のある話は一切なく終了。

 俺は工業系大学を選択して進んだおかげで、こいつらのグループとは高校を卒業すると同時に連絡することは無くなった。

 ご存知の通り、男の高校3年くらいと言えば、サルかよって言うくらい本能が勝ってやりたい盛りだ。なにって? ナニの話だよ。

 そんな多感な時期に、松沼みたいな結構かわいい奴『ちょっと抜けた感じのお嬢さんキャラ』が彼女を公言し、周りをうろうろして腕を組んできたり、他にもスキンシップをして来るのに、手が出せない……。 
 そんな半年間の状況は本当につらかった……。 神崎一司(かんざきかずし)23歳その頃を思い出しつつむせび泣く……。

 そして、進学した工業系大学は男が多く、その環境で気楽になれた俺は、危なく勘違いで違う方向に行きそうになったし……。 うん俺はノーマルだった。

 大学を無事卒業して、春からは仕事でPCの前に張り付きだから、実際は年齢イコール彼女いない歴なんだよ。きっと……。 あの半年はノーカンだ。


 そして今、なぜか家人が留守の松沼家に上がり込み? 頭の中で略歴を説明しながら、お茶を頂いて現実逃避している…… もうすでに帰りたい。
 いや、何で上がり込んだんだおれ。

 なんだかこいつには、変なトラウマを植え付けられている気がする。
 俺は何故か松沼に『いやだ』の一言が言えない。
 はっ!、洗脳か?

 そんな事を考えている俺の目の前で、奴はにこにこしながら聞いてくる。
「それで、高校卒業してから何していたの?」
「あん? 卒業してから、大学行った。卒業した。就職して働いてる」
「いや……。 大学行ったのは知っているけれど、そうじゃなくて。大学に入ってから連絡が無くなっちゃったじゃない……」
 そう言いながら、お茶を入れる。

「……お互い様だろう」

 湯呑を俺の前に置きながら、
「そりゃあ、そうだけど……」
 とぼやく。

 ふと顔をあげて、
「いま彼女とかいるの?」
 と、さもいま思いついた風に聞いてくる。
「いねえよ」
 なぜかほっとした顔をする。
「もしかして、私からの連絡待っていてくれたとか?」
 照れた感じの笑顔。

「無いな。今日この家に来たのも、たまたまだし」
 そう言ってぶった切る。
「うー話が続かない。どうして…… なにか機嫌が悪いの?」
 それは、俺が話を切ろうとしているからだあ。

 でも一応聞いてみる。
「……どうして。私からの連絡を持つなんて言う話になるんだ?」

 えっ、当然じゃんと言う顔で、
「えっ、付き合っていたし……。 そりゃ大学入ってしばらくは忙しくて、連絡も疎遠にはなったけど、別に別れたわけじゃないし……」
 とほざく。
「付き合っていたって? あれはお友達と遊ぶための、便宜上のお付き合いじゃなかったのか?」
 と正論を言ってみる。お前が言ったことだ。

「えー、そうでも言わないと……。 一司くん私の方見てもくれなかったし」
「はぁ? 一度花火見に行っていい雰囲気だし、周りもしていたから。つっ付き合っているから良いよなと、俺がキスしようとしたら、一歩踏み込み躊躇なくもろにレバーブロー叩き込んでくれたよな」
 うっ、あの時の焼けるような痛みを思い出した。

 そう言うと、テレっとして、
「いやぁ…… はずかしいじゃん。……した事もなかったし。だから頑張ってスキンシップしたのに、手も出してくれないし……。 会っても機嫌悪そうだったし……。 大学行って少し距離が開いたら、少しは変わるかなと思ったのに、逆に連絡しにくくなっちゃって……。 就職もしたから。今日やっと来てくれたのかな? って喜んだら、営業だっていうし……」
 うん? 言っている意味が分からない。手を出そうと何回もしたぞ。すべて拒否と言う回答を貰ったが。それにあの過度とも言えるスキンシップは、高校男子にとって地獄ともいえる時間だった。餌を目の前にぶら下げて一度も与えられない地獄のようなお預けだよな。ペットでもぐれるぞ。

「……馬鹿だろお前。 便宜上のお付き合いと言われて……。 それでも一応付き合っていたんだし大丈夫かと思って……。まあ多少若さの勢いに任せてと言うのもあったけど、キスしようと思ったら殴られたんだぞ。……それもえらい腰の入ったグーパンで。 そこまで拒否されて、次に手を出したらセクハラじゃないか?」

 言ってやった、もう止まらん。
「それにお前は分からんだろうが……。高校3年生の健全な男子の性欲を、それも…… お前の変に偏ったスキンシップを受けて、理性で抑えるのにどれだけ俺が苦労したと思っているんだ。 機嫌も悪くなるだろ……。 手を出してくれないって…… なんだよそれ」
 たぶん俺は半分泣き顔だっただろう。

 そしたら、
「別に我慢しなくってよかったのに……。えーじゃあ、やり直そう。 神崎一司さんあなたがずっと好きです。お付き合いしてください」
 そんな事を言い出しやがった。なんだか、手を突き出してきているけど……。

 いったん頭を冷やそう。
「大学の時とか付き合った奴いないのか?」
「いないよ、連絡待っていたもの……」
 あー……。

「……。 わかった。とりあえず連絡先は交換しよう。 しばらくお付き合いのやり直しだ」
 俺は、なぜかそんな答えを返した。

 奴は満面の笑み。
「よっし。それじゃあ、とりあえず乾杯だ。飲んで会わなかった隙間を埋めるために、語り合いましょう」
 
 しまった、何だろう? 間違った気持がする。
「……まだ4時だぞ」

 はちきれんばかりの笑み。ああ、かわいいじゃないか……。
「いいの、お祝いだから。 やっぱり私たち、運命の糸がつながっているのよ」

 運命?
「……そういえば、親とかは?」
「今入院中。車の運転中にモンスターが出てきて。避けたんだけど電信柱にゴンて行っちゃったらしくて。 私も今日、午前中に病院へ検査結果を聞きに行っていたの。昼からは洗濯物をしていただけだから。今日なら時間は自由なの。ほら、そんな都合のいい日に現れるなんて、縁があるのよ」
 悪縁か腐れ縁か、それとも悪魔のいたずらか? 俺としては悪魔のいたずらに1票だ。だが、前世からの因縁だとはこの時の俺は知らなかった。

 そうして、ご機嫌な奴にビールを注がれ、久々の出会いに乾杯をした。
 

 ただまあ、そこからの話。
 酔っ払って、俺も言い過ぎたと思ったが……。

 奴が、思い出を話し始めた。
「最初にみんなと海に行ったとき、楽しかったねえ」
「ああ、周りがいちゃいちゃしていた時に、潮だまりの観察したなあ」
「ええっ、楽しかったじゃん」
「みんなの、いちゃらぶ観察か? イカ焼きはうまかった」

「イカ焼きほしいの? おつまみに作ろうか?」
 なんでそこに反応をする。まあほしいけど。
「あるなら要る」
 いそいそと部屋を出ていく松沼。

「……」
 しばらくしてその手に、イカ焼きの乗った皿、と言ってもイカ焼きではなくなぜかイカの三杯酢。まあ文句は言うまい。
「おつまみと言えば、烏賊の一夜干し。おいしいよね」

 目の前にあるこれだよな。ああ、まるの烏賊が無かったのか。
「ああ。まあそうだな」
「その後が、花火大会で……」
「ああ、お前に殴られた」
 いまだに、あの苦しみは覚えている。さっきも思い出した。

「紅葉狩りと温泉」
「ああ家族風呂のある部屋借りて、みんなで入って……。 さすがに周りをじっくり観察はできないから、俺は紅葉を見ていた……」

「あの時だって勇気を出して、後ろからだけど抱きついたのに……」
「ああ、さとりが開けそうだったよ」
 あれを我慢したのは、俺自身えらいと思う。いやこいつへの恐怖か?

「クリスマス」
「ああ連れの家に集まって、俺たち以外がほぼ乱交だった時な」
「頑張って、手をつないで……。 胸だってあてていたのに……」
「あの時は、頭の中で、覚えた英単語の確認していたな」
 ああ…… 何もかも懐かしい。

「初詣だって」
「ああ早くあの状況から脱出できるように、神様にじっくりお願いした。神様も迷惑だっただろう」
 本当に、必死で……。のちに俺の身に起こる色々は、この時頼んだ神の意趣返しかもしれないことをこの時の俺は知らなかった。

「バレンタインの時は、喜んでくれたじゃない」
「お前が何も考えずに教室で渡して来たから、あの後クラスの男達にボコられた。チョコは初めてもらったから嬉しかったけどな。義理だけど……」

「義理じゃないもん、中にちゃんと書いたでしょう」
「……書かれた文字は、固まらないうちに傾けたんだろう? じゃなければ溶けたのだろうな。赤文字だったから、ハート形のチョコに血が滴る感じになっていた。喜んで開けて中を見た瞬間、何かの儀式かと思ったよ」

「…………」

「ひどいよ……。 一司くんが好きなのは本当なのに……。 ただあの頃はいろんな事をするのが怖くて、みんなのようにイチャイチャできなかっただけなのに……」
 美月が少し涙ぐみながら、そう言うのを聞き少し反省した……。
 多少酔ってもいたし。

「そうだな…… やりなおしか」
 と言って、キスをしようとしたら
「やっぱり怖い」
 そう言って突き飛ばされ、フローリングの床に後頭部を強打した……。

 こいつやっぱりヤダ……。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

処理中です...