勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり

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第1章 始まりと魔法世界への準備

第6話 高校時代の元カノの事情

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 後頭部を打ち付けた俺は、そこで気力が尽きた……。

 結構な音がして驚いたのか、べそべそしながらぐちぐち言っていた美月は、俺をのぞき込んでおろおろしている。

 俺は、ぼーっと考える……。 美月が言っているのが本当なら、この行動は何だろう。
 男性恐怖症でもあるのか? ならあのスキンシップは無いよな? あの頃も思ったが、からかって反応を見ているとしか思えない……。 
 高校の時の思いがよみがえる……。

 そんなことを考えていると、顔に髪の毛が触ってくすぐったい。俺が動かないから呼吸でも確認をしているのか?
 髪をたくし上げた状態なので、耳が目の前にある……。 ぺろっとなめてみる。

「ひゃん」
 と言って美月が飛びのく。

「大丈夫だった? 良かった、すごい音したけど頭大丈夫?」
「だめだな、お前にからかわれて…… 俺の心はもうズタズタだ……」

「いやぁ……。からかっているつもりはないんだけど……。 一司くんが顔を近づけてくるからつい恥ずかしくなって」

「それで突き飛ばすのか? さっきは怖いって言っただろ」
「うっ…… うん」

「どうしたいんだお前? 単に俺をからかって遊んでいるのか? やり直しの告白はいったい何だ?」
「あれは…… 本気よ。ずっと好きなのも本当のことだし…… ただ、周りがみんなあんな感じだったし、エッチとかも興味もあるけど…… ん~と、みかって覚えてる?」
「岡田の彼女だな」
 薄い記憶を手繰り寄せる。

「あの子……。最初サッカー部の、鬼畜じゃない加須っていたの覚えている?」
「うん? ああいたなあ。トレセンだかトレキャンだかに招待されたって、校長が張り切っていた奴だろう」
「う……ん? たぶんその人」
 もじもじしながら、言葉を紡ぐが、ひどく言いづらそうだな。

「それで試合とか。時々、私たちもみかに連れられて、試合とか行っていたのよ」
 ああ、話が見えて来た。
「ふーん…… で?」

「2年の夏休みに試合観に行っていたら、試合後に声をかけられて。 試合に勝ったから小規模だけど、ホームパーティするから来る? って言われて…… みかが二つ返事で、うんて言っちゃったのよ」
「のこのこと、付いて行ったわけだ」
 あきれるが、高校生か……。
「そう」

 先の予想に、ちくっと嫌味を言ってみる。
「夏場の薄着で男の部屋か。丸っとお見通しができそうな展開だな」
「そう言わないでよ」
「ちがうのか?」
「いや……。 ちがわないけど」
 またもじもじしている。こいつってこうしていると、どうして可愛いんだろう。腹が立つ。

「それで?」
「お見通しのとおり、わたしがトイレに行って帰ってきたら、私が席外していたせいか、みか達は2~3人に抑え込まれて色々させられている状況で……。 私を見たやつがやっと出て来たかって言って、裸でこっちに来そうになったから、外に逃げて警察呼んだの」
 話は予想通りだが、そんな話は聞いたことが無い。
「そんな騒ぎがあったら、噂ぐらい聞いてそうだけど、聞いていないな?」

「なんかジュースにお酒も入っていて、学校からは騒ぎは今回不問にするが、高校生らしい付き合い方をしなさいって。みかの親たちも怒ったんだけど、慰謝料と問題にするなら娘さんの飲酒と不健全性的行為も処罰する必要が出てくるって言われて……。 それに加須達もミーハーな女の子に誘われて、ついやっちゃいました。ぎゃはは、反省しています。って、なっちゃって……」


 むくっと起き上がり、コップに入ったビールを飲む。
 学校の、希望の星か……。

「はぁ~。まあ何となく理解した……」
「分かってくれる? 一司くんが好きだし、別にからかっている訳でもないの…… ただ……」
「ああ。ただ、お前はそれを思い出して怖かったのか?」

「うん……」

「言ってほしかったな。……おれはあの半年間。訳も分からず自分と戦っていたからな」

「でも言っちゃって、嫌われたらいやだし……」
「でも? 岡田達は知っていたんだろう?」
「ん~ん、言ったかどうかは知らない。あれから彼女たち、彼氏と抱き合っていると安心できて、一人で寝ると襲われた時のこと夢に見ちゃって怖いって」

「それで、何か行事があるたびに、俺たちの周りで繰り広げられたあの惨劇か」

「うん。それが始まったのが事件のすぐあと…… 9月かな? そこからすぐあの状態で ……それで私もちょっと辛くて」
「辛くても、友達から離れるわけでもなく。俺を引っ張り込んだのか?」

「事情は知っているから、あの子たちから目を離すのは怖くて。それに一司くんの事は、一年生のころから私知っているの」
「うん、なんで? 何か接点あったか?」
「たぶん、一方的にだと思う」
 記憶を手繰るが、思い出せない。

「そうだよな。クラスは一緒だったけど、俺はほとんど本を読んでいたし」
「そうなのよ、ほとんど誰とも付き合わずに、ずっと本読んでた。でも、商店街のところ。私も通学路だったんだけど、道端で猫を撫でていたでしょ」
「ああ青果屋さんのみいだな。……見てたのか?」

「うん、口元に薄ら笑い浮かべて、猫をひたすらなでる変な人が第一印象かな?」
「それ、単なるやばい奴じゃないか?」
「うん、最初私もそう思ったもの」
「ひでえ」
 やっと笑いが出た。

「でもね、そのみいちゃんて誰にもなつかないのよ。それでなんでだろうって気になって、それからずっと一司くんの事観察していたの」
「いや、それはそれで怖いぞ」

 ずいっと前に出て来る。
「聞いて。それでね、見ていると興味がない事には人も含めて一切興味がなくて、でも困っている人には、手を差し伸べるくらいには優しくて、常識がある人ってすぐわかったの」
「おう、ありがとう」
 思わずほほをかく。

「それで、その時に困っていた私は…… 一司くんなら断らないだろうって。つけこんで……。 じゃなくて。 お願い……。 そう、お願いしたの」
 必死で言葉を選んで、しゃべっているが……。

「本音が駄々洩れじゃないか? ふーん……。 そっかー、俺は付け込まれて、まんまと引っかかったんだなあ」

「え~とねぇ。それと。え~とあんなに周りでいろいろあっても、私の気持ちを無視しては襲ってこないし……。 紳士的? やさしい? し……」
 目が泳いで、完全にしどろもどろになっている。

 だが、俺はそんなに心が広くない。
「それはそれはありがとう。目が泳ぎまくっているのは気になるが、礼は言っておこう。じゃあまあ、結構頂いたし時間も時間だ。家族のいない女の子の家に、これ以上長居はよくないな。それじゃあ御馳走様。また縁あれば会えるさ。じゃあね美月。俺の中で長年の懸案だった事情も、お前の本心も良く分かったし、お休み」

 そう言葉を紡ぎ早口で宣言する。そして俺は立ち上がろうとしたが。
 がしっと、美月は俺の手首をつかみ。缶チューハイを一気にあおる……。 ガンと缶をテーブルの上に置くと……。

 完全に座った目で近づいてきた。
「イヤ……カヅシクンニガサナイ……」
 と言いながら、表情のない顔がどんどん近づいて来る……。
 それを見て、俺は心を決める。
 あ~あ、やっぱり俺は、こいつにイヤが言えないな……。
 どうしてだろう? 
 何か神のいたずらか、因果でもあるんだろうか?
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