勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり

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第2章 魔法の使える世界

第19話 話はまるっと? 勇往邁進

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「いやいや、おまたせして済まないね」
 少しすると、署長がやって来た。
「ああ署長、別に来なくていいのに」
「そういう訳にも、いかんだろう」

「で、どういう状態かね?」
「ああ。これを」
 スマホを取り出し、ポチッとする。
「お前、勝手に」
橋本がやかましいから、言葉と威圧で制する。
「黙れ」

「最初からになります。すいません」
「ああ、いい」


「おう、芳雄。喧嘩はするなって言ったよな?」
「社長すいません。握ったら潰れました」
「? うん? 喧嘩じゃなかったのか?」

「ああちょっと、勝手に話をされると困る。私は生活安全部少年課.の橋本です」
「すいません。こいつを雇っている会社の社長神崎です。今日、田村さんは?」
「ああ彼と知り合い? 彼は課が違うし、日勤だったのかな?」

「さてと、彼と話してはいるのですが、変なことばかりでね。困ってしまって。親御さんが、殴ってきて。自分が殴られたら親の指が勝手に折れたとか。妹弟たちに手を出そうとしたから、止めようと手首をつかんだら握りつぶしたとかね」

「いやそれは、こいつは訳わからんことは言ってない。分かっていないのはアンタだ」
「なに? 何だと。それは私を馬鹿にしているのか?」
「いや、バカにはしてない。こちら側の常識をアンタが知らんだけだ」
「社長だがなんだか知らんが、アンタも泊まっていくか? ああん」
「話にならんな、ちょっと電話するぞ」
 おっさんは、口を切り結んでぷるぷるしているが、所長と話をする。

「までですね、自分が理解できないと脅迫をするらしい」
「いやまあ、仕事だけしていると世の中の事にも、ことに疎くなるものでね」
「それで、バカにされたと言って泊まっていくか。ですか?」
「いや…… それは……」

「どっちに電話するか、悩んだんですよ」
 携帯の画面には、松沼の文字。

「いやありがとう。そうか君はそうだったね。橋本くん帰っていいよ。引き継ごう」
「なっ、しかしこいつは昔から私が担当して」
「帰りたまえ」
「ちっ」

 睨まれた…… あの手は根に持つかな?


「調書はこれか、どれどれ。……君は小学生の時から ……ああ、最初は学校の先生から児童相談所経由で相談あり。親権者による暴力の可能性ありか。それでこっちに回って来たが、親権者のもとに赴き話し合い。解決ね。この時どうだったか覚えているかね? 」

「ええと、顔は殴られなくなったけど。見えないところは変わらず殴られました」
「その時には、相談はしていないのかね」
「しました」
 きっぱりと言う芳雄。

「残っていないな。次が2年後。ああ、相談者が中学校の先生になったからかな?」
「そんな…… おやじに殴られるたびに、先生にも言っていたのに」
「ちなみに、中学生の時も、親権者のもとに赴き話し合い。解決となっているな」
「この頃から、食い物も家になくて。学校で給食があったから、それの余ったのを先生に言って貰って帰って、妹たちに食べさせていたので、先生も知っていたはずです」

「改善していないから、先生もなんとかしようとしてくれたのか」
「こういうのって、児童養護施設とか、俺が引き取るってできないんですか?」
「それなら最初に親権制限か親権停止をさせんとなぁ。勝手につれていくと誘拐だ。だが君は高校生だから出ていないが、おやじさんが児童手当目当てだと、妹さんたちは離さんとごねるかもしれんな」

「また、井守先生にお願いだな。ほんとにボーナス出さないと、切れるかな?」
「うん? 結局どうするのかね」
「芳雄と妹たち、家で面倒を見ます。親権や面倒なことは、弁護士の井守先生に丸投げして、足りなければ松沼のお母さんを頼ります」
「それでいいのかね。途中で放り出すとかはできないぞ」

「まあ、何とかなるでしょ。それと橋本君の定型文が気になるのですが」
「むっ。それはこっちで何とかする」
「お願いしますね。彼出ていくときにこっちをにらんでいましたから」
「解った」

「じゃあ、とりあえず家に来い」
「えっ良いんですか?」
「ああ荷物もあるなら、最初に家に寄って行くか」
「ちょっと待て、ケガをさせた件がある」
「親父さんが不摂生で骨がもろかったではだめ? 殴ったら勝手に骨が折れただけだよな? 芳雄」
「最初の指はそうですけど、手首は……」

「署長。俺たちみたいにダンジョンで活動していると、いろんな強化が体に起こるんです。たぶん俺とかもそうですが、いまや銃で撃たれてもケガしません」
「それは本当かい?」
 そう聞かれると怖いな。試したこともないし。
「ええ。いや…… 多分。大丈夫じゃないかな? ここって武道場.あります?」
「ああ、ある」
「ちょっとお借りして見せた方が早い。芳雄行くぞ」

「こっちだ」
 署長について行き、武道場へ移動した。
「どうすればわかるかな? 木刀をお借りします」
「良いけれど、あたると骨など簡単に折れるぞ」
「大丈夫です」
「社長、おれ剣道なんてやったことがないです」

「大丈夫、単なる殴り合いだから」
 ニヤッと笑う。
「えっ」
「とりあえず武道場だから、道場に礼。お互いに礼。さあ始めようか。いくぞ」

「うららい。めーええぇん」
 俺は声を掛けながら、わかりやすく最初は正面から面打ち。何とか芳雄は合わせてきた。そこから、右に切り返して胴へ。「どおおぉー」ブン。バックステップしてかわされた。
 もう一度左から胴へ切り返す。「どおおぉー」ブン。またかわされた。なかなか見えるようだな。上段へ振り上げまた面へ「めーええぇんん」カン。合わせてきた。

「いけそうだな。蹴りも入れるぞ」
 上段から面へ行くと見せかける。つられて持ち上げかかった木刀の持ち手へめがけて、「いええぇ、こおてぇぇ」小手打ちへ変化させる。
 慣れていれば、右手を外して抜くんだが、芳雄は手をたたんで、バックステップ。
 そこに合わせて、鍔迫り合いに持っていく。

 ※鍔迫り合い。剣道で、竹刀の持ちて柄(つか)の上に取り付けてある鍔、竹刀の根本同士で押し合う動作。柄でもやる。油断すると持ち上げて転がされたり、離れ際に一本入れられる。私が習っていた所は、なぜか鍔迫り合いから、行けと言われると、小手を脱ぎ飛ばし。取っ組み合いをして、相手の面を脱がす練習があった記憶がある。なぞだ。

 腰を入れて、下から芳雄を押し上げるのに合わせて体当たり。さらに腰を入れて少し上向きに持ち上げる。当然芳雄は足が浮き、バランスを崩すので、右下から優しい俺は、押し出す感じの回し蹴り。それでもドンと音がして、芳雄はもろに食らい吹っ飛ぶ。

 壁際まで吹っ飛んだ芳雄に、声をかける。
「おーい、生きてるか?」
「衝撃はすごかったんですが、平気です」
「まあ、まだまだダメダメだな」

 所長は固まっている。
「どうでした?」
「君ら本当に人間か? 全く動きが見えなかったし、最後のは蹴りか? あんなに吹っ飛んで」
「最後の蹴りは、普通の蹴りじゃなく、当てて押しただけですからよく飛んだでしょう」
 空手の蹴りは普通、軽く膝を上げて、膝から下を振りぬく。
 相手にあたると、すぐに足を戻し、膝を上げた状態に戻す。
 さっきやったのは、当たっても止めずに振りぬいた。
 つまり押しただけ。

「それにしても…… 50~60kmの車にはねられても、あんなに飛ばんのじゃないか?」
「さあ? 跳ねられたことがないので」
「きみ、芳雄君だったか。本当に大丈夫かね」
 服をめくりあげて、自分で確認しているが。
「大丈夫ですね。痣にもなっていないみたいだし」

「しかしまあ。神崎君。きみ剣道経験者だろう? 大人げない」
「いや、まあ。していたのは小中で、昇段試験も受けていませんし。ついでに空手は大学でしていました」

「そうだろうなあ。しかしダンジョンか。防犯の意味でも、少し考える必要があるな。芳雄君でも、我々は対応できるか判らんレベルだな」
「訓練がてら、ダンジョンに潜りますか? 魔石も売れて一石二鳥ですね」

「まあ追々だな。いやキミらが超人なのは、見せてもらって理解した。報告は何とかなるだろう」
「そう言えば、このまま芳雄の家に寄って、荷物を持っていくと親父さん何か言い出しますかね」
「そうだな、君の家に到着するまで誰か一人つけよう。警官が立会いの下でと言えば何かの抑止にはなるだろう。もう夜だしな」

「ありがとうございます。ほら芳雄も礼を言え」
「ありがとうございます」
 そう言って、頭を下げる。
「君も大変だったようだが、力になれず申し訳ない」
「いえ」
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