勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり

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第4章 少しずつ変わって行く世界

第3話 本日、所により騒動が降って来るでしょう その3 

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「いや驚いた。日本人なのに短気だな。ジョークの一つも言えない」
 ひきつった大当郎の言葉を、通訳さんが律義に伝えてくる。
「ジョークなら、もっと笑えるタイプにしてくれ。日本には、どつき漫才というのがあるんだ。笑える顔にするぞ」

「ちょっと、一司。あまり変なこと教えると、本気にするわよ」
 美月はそういうが、すでに話は伝わっている。
「国家の威信をかけた、どつき合いか。戦争するよりゃ平和でよさそうだが、トップが脳筋ばかりになりそうだな。関税かその問題なら、プロテイン1年分で手を打つとかな。……意外と平和だな」
 そんな馬鹿なことを考えていると、周りが変な顔をしている。

「全部声に出ていて、通訳さんが訳していたわよ」
 と美月が教えてくれる。
「そりゃ失礼」

「長のけんかで済めば平和だが、負けた方の国民が可哀そうだろう」
 一応、人の冗談に、フォローを入れてくる。結構まじめだな。
「そりゃまあ。そうですね」
 とりあえず、そう言っておく。

 大統領が、「パン」と手を打ち、
「それでだ、友人になったからには、これをやろう」
 と変なカードを出してくる。
 『Social Security 』
「そーしゃる、せきゅりてぃ?」
「正真正銘、市民向けだ」

「失礼ですが、大統領。我が国の国民を、引き抜きですか?」
 総理が、首を突っ込んでくる。

「いや、彼に仕事を依頼しようかと思ってね。この身分証明もあげよう」
「すぺしゃる、エージェント?」
「今度、対ダンジョンの為。省を一つ、国防総省傘下に作ったのだよ。その身分証をあげるから、こちらからの依頼を受けてくれないかね」

「ダンジョン絡みなら良いけど。それなら、チーム分の身分証明が必要だな」
 俺がそう言うと、うんうんと首を縦に振って、
「おう、それはそうだね。速やかに発行しよう。君達、一チーム分。それで良いね」
 と満面の笑みで言ってくるが、脇にいる総理は、対照的にすごく嫌そうだ。
 顔に嫌っていう文字が出ているぞ。良いのか?
「それでいい」
 一応うちにとっては問題ない。

「じゃあ話はまとまった。先ほどのカードと、この銀行の開設願いに、サインをくれたまえ。残りのメンバーは、カードができたら、大使にでも持たせるからな。じゃあよろしく頼むよ」


 そう言い残して、帰っていった。
「なんだいありゃ?」
「大統領」
 美月がボソッと突っ込む。
 
「……そりゃそうだが、このカードって、SPECIAL AGENT,  United States Dungeon Force、USDFと書いてあるぞ」
「ちょっと見せて」
と言って、美月がカードを俺の手から毟っていった。
「これって、軍属の身分証明書じゃない?」
「だろうな。普通こんなのって、なんか契約書にサインとか、必要なんじゃないのか?」

「アメリカの方が、そういう事は厳しいわよ、たぶん分厚い英文が送られてきて、サインしろとか来るかもね」
「法律とかの、専門用語の塊だろう。そんな、英文を読むのか? 読むのに10年は必要《いる》な」

 そんな事をぶちぶちと言っていると、大統領たちを送って行った総理たちが帰って来た。

 と思ったら、
「すまない神崎君。さっきのカードを見せてくれ」
 と言われたので、両方を渡す。

「この、社会保障カード。制限の注釈がありませんね。市民向けです」
「もしかして、向こうで勝手に国籍登録したのか?」
「いや、さすがにそんな馬鹿なことは、大統領でもできないでしょう」
「でも、このカードも本物ぽいぞ」
 なんか、やせたおっさんと総理が、うだうだ言っている。

「もう帰りますから、それ返してもらえます?」
 総理が気が付き、
「ああ。すまない。今回、何から何まで、常識はずれなことが起こってね。写真だけ取らせてくれ」
「ああ、い……」
「だめ。その番号は、本人のみ」
 焦った感じの、美月からストップがかかる。
 
 それを聞いた総理たちも、あっという顔しているから、そうなんだろう。
「ちゃんと番号は、マスクするから」
 そう言われて、美月が、
「それなら、いいです」
 と言って許可を出す。


 大統領。帰り道。
〔我がままを、通してまで、お会いしてどうでした?〕
〔君もわかっているだろう。最高だったよ。 ……完全に死んだと思った。死の瞬間はあんな感じなのだろうね〕

 そう言いながら、思い出す。普段周りに、当たり前の様に存在する空気が、重く冷たくなり、光も失い何処かに沈んでいく体。その体の感覚も、徐々に消えていく…… それを思い出して、恍惚とした顔をする大統領。

〔まさか、魅入られたんじゃ、ないですよね〕
〔さあ、どうだろうね? あの時、君も感じただろう。生き物として逆らってはいけないというのが、たぶんだが魂レベルで理解できた。それよりも、あのSP君。どこかの、ひも付きだよね〕
 と話をそらす。

〔まあそっちも、重要そうですな。と言っても、お判りでしょう〕
〔教会と喧嘩は嫌だが、どの系列かな?〕
〔さあ、ハンドガンに充填されていたブレット(bullet)はシルバー製だったようですよ〕
〔シルバーは、狼男じゃなかったのか?〕
〔さあ、祈りでも染み込んでいる。特製かもしれませんね〕

〔まあこれで、種は撒いた。彼には、華やかに全米デビューして頂こう〕
〔ダンジョンじゃ撮影できませんが、氾濫中は外ですからね〕

〔モンスター倒すのに、ランチャーが必要になって来るとはね。M240でも厳しいし。彼の鍛えた、自衛隊のリポートは読んだのだろう〕
〔あれが本当なら、素手でM1 Abramsとタイマンを張れそうですよ〕

 そう言われて、大統領は少し考えるが、
〔Mr.カンザキなら、片手でひねるだろう。賭けようか?〕
 両手を、肩まで上げて首を振る補佐官。

〔賭けにならんか……〕
 そう言って、満足そうに微笑む。
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