勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり

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第4章 少しずつ変わって行く世界

第26話 ダンジョンピクニックという狂った行事

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 ゴブリンの2匹や3匹。
 問題にはならないようで、ガンガン進む。

 今回は、残り2個のダンジョンを、高校生組に任せたので、このダンジョンを1日かけて潰せばいい。
 ただ、30階はあるので、まっすぐと階段へと向かう。

 初めての体験中の爺さん。
 やっと興奮から覚め考察を始める。
 このゴブリンとやら、伝承の餓鬼やら小鬼に通ずるものがある。
 道場での修練や、滝行で己を磨くのも重要だが、修行としてはやはり実戦。
 これ以上のものは、ないのお。

 ぬっ。神音め。
 いつの間に、こんなに腕を上げた? 先週まではこんなではなかった。
 あのレベル酔いとかのせいか?
 だとすれば、戦いの中に身を置ける機会の多い、神崎殿の所へ預けるのも一興か。
 かわいい子には旅をさせろと言うが、かわいい孫は修練の場に放り込んでみるのも良いかもしれぬ。
 腑抜けた父親は良いとしても、あとで合流する柊(ひいらぎ)には相談してみるとするか。

 本人をほったらかし、勝手な妄想をする封滅鬼(ふうめつき)爺さん。

 一方、神音ははじけていた。
 わあすごい。
 モンスターの動きが、止まって見える。
 いつにも増して、周りの状況もなぜかよくわかる。
 そんな状況に舞い上がり、神音の剣筋が乱れる。
「神音。動きが雑じゃ。刀が折れるぞ」
「はーい」
 しかし、このモンスターって骨があるのかしら? 一応、骨の間を通すイメージで切っているけれど。


 そんな修行をしている2人の後ろで、ただ歩いている真魚と壮二。
 当然背後の警戒はしている。
 ただ横には一司が居るため、安心して、つまらない話をしていた。
「刀って、最初は綺麗とか思ったけれど、オーガとかに効くのかしら?」
「さあ? 多少はいけるんじゃない? ほら気を乗せて切っているから、意外と持つかもね」
「でも今のうちだけよね。そのうちバットみたいに、振ると持ち手から壊れちゃうから」

 そう。
 預かったバッグには、鍔無しの日本刀が、各自残り4本ずつ。
 今の所は切れているが、オークやオーガが出始めると切れなくなってくる。

「バットが、振るだけで折れるから、学校の授業で球技をすると大変なんだよね」
「やっぱり。壮二も苦労しているんだ」
 真魚も思い当たるのか、腕組みをしてうなずく。
「この前。素振りしたら、もちろん十分力は抜いていたけれど、先端が燃えたのとも違うな? 霧が出てびっくりした」
 壮二が言うと、真魚がフォローをする。
「あれはね、バットが丸いでしょ。振るとバットの後ろ側の気圧が下がって空気中の水分が霧になるんだって。私も不思議だったから調べたの」
「そうなんだ」
「でも気を付けないと、先端が音速を超えると衝撃波っていうのが出て、すごい音と周りの人が怪我をするから気を付けてね」
 一司は、二人が何の話をしているのか気になったが、なんとなく学校での話と理解して。楽しそうに、学校生活を送れているようだと安心をする。

「そういえばこの間、授業でテニスをやったんだけど、1セットだけでお前はもうするなって言われちゃったよ」
「あーそれ、私のせいかな? ラケット結構壊しちゃったんだよね。すごく脆くて、サービス打つと、ガットは切れるし軟式だからボールが途中で破裂するのよね。途中でフレームで打つようにしたらラケットが壊れて…… 周りは、王子様のテニス。リアル版だって喜んでくれたんだけどね。思いっきりバックスピンかけると、相手のコートに入ったボールが戻ってくるのよ」
「へ―おもしろそう。いいなあ。僕なんか、お前は少林か、満点やるから見学しとけ。だもんね」
「壮二もやっぱり苦労しているのね」

 そんな会話をしている2人をほほえましく見ている一司だが、とうとうオークが出てきて、刀を抉(こじ)たのか神音の刀がゆがんだ。

「おーい」
 と声をかけて、一司が新しい刀を神音に渡す。
「すみません」
 ゆがんだ刀は納められないので、そのまま収納する。
「未熟者め」
 そういう、爺さんも筋肉に阻まれて決定打が出せないようだ。
「ぬう。この筋肉の鎧が、結構面倒」
 切るのをあきらめて、突き始めた。

「おーい爺さん。鍔なしの刀で突くと指飛ばすぞ」
 そんなことを言った矢先、刺さった刀を殴られて折られた。

「次の刀だ」
 そう言って、バッグから新しいのを出して渡す。

 その時、神音が首を落としたようでオークが消えた。
「やっと首に入れれたよ。おじいさまのお腹に刺した刀のおかげで、背後が留守になったので、アキレス腱を切ってやっと手が下がってくれた」
 にこやかに、報告してくる神音。

「神崎殿。普段はどうやってあやつを倒しておるのじゃ」
「殴る。もしくは魔法だな」
「魔法が使えるのですか?」
 神音が、目をキラキラしながら聞いて来る。

「壮二。もう10秒もしたら、右側の通路からオークが来る。魔法を見せてやれ」
 アメリカとカナダの一件以来、うちの家族にはある程度攻撃魔法を共有している。

「何にします?」
「刀との差を見せるから、空間魔法でいいだろう」
 そう言っていると、「やあ」という感じでオークが顔を出す。

「空間断」
 壮二が呟くと、目の前であんなに切れなかったオークが、縦に真っ二つになる。
 爺さん涙目。神音は目がキラキラ。

「まあこのレベルなら、魔法より殴るのが正義だな」
 そう言って一司が、ふっと消えた。

 さっきの奴に続いて出てきたオークを、スタンさせて引きずって来る。
「なっ」
 爺さん、目が点である。
「全く動きが見えなかった。この前でも手を抜かれていたのか」
 がっくりと膝をつく。

「さっき刀を渡したが、もったいないから片付けて、そうだな殴ろう。どっちからする?」
「わしからしよう。家には当身(あてみ)の型もある」
 脱力から、体をねじりこぶしへ伝える。
「ふん!!」
 それだけで、オークの顔が陥没する。
 驚く本人。

 一瞬呆然としていたが、
「なんじゃこれは。刀ではなかなか切れなかったのに」
 自分の手を見ながらぼやく。
「刀を通じて気をまとって切るんだが、刀が先に耐えられなくなってくるんだよ。気と説明したが、体で練った魔力だな。生身には物より纏わせやすい。その差だな。そう言うことで捕まえてくるから、しばらくは殴り殺す特訓? だな」
 そんなことを、笑って言う一司。

 そこからは、何処から拾ってくるのか可哀そうなオーク。
 いじめのような状況に、爺さんと神音は泣きながらそれを続けた。
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