勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり

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第4章 少しずつ変わって行く世界

第32話 対話と得た物 その2

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 体感1時間ほどで落ち着いた。
 フレイヤは横で寝ている。

 孔雀様は…… 寝ていた。
 おい。

 やれやれと思いながら、起き上がり座り直す。
 体の状態を探りながら、慎重に確認する。
 うーん。魔力とも魔素とも違う力が体中をめぐっているな。
 だがなじむ。
 こいつは神気か。

 記憶も、すべてではないが、思い出した。
 九州の時の声は、虚空蔵菩薩様だったような気がするな。
 ああ。ここは天界で、橋の向こうは、上位の方の住まいだな。
 足を踏み入れても、叱られるだけだと思うが、今は生身を纏っているから肉体がはじけるかな?
 などと考えていると、
「やっと終わったか」
 間抜けな声がかかる。

「思い出したか?」
「ええ。自分が何者かくらいは」
「そうか。それはよかった。実はな、いま現世にかぶさるように存在している地獄や 神々の世界がバランスが崩れて来ていてな。そこにおられるセクメト様の世界などは千年の昔から繋がっておったようだが、まあそう遠くないうちに現世ともつながるところだった。それを、竜神の一族がなぁ。思い付きで現世を自分たちが奪おうと思ったようだな」

「ところが、魔素が無くて行っても体がもたないから、ダンジョンを作って魔素をばらまいたと」
 俺が答えると、孔雀様が頷く。

「この前、たぶん虚空蔵菩薩様だと思うんですが、ほかの神々と話は付いているとおっしゃっていましたけれど」
「ああ。どこの神も世界が不安定なのは分かっているからな、一度世界を一つに戻し新たに再構築しようとしている」
「一つは良いですけれど、地上の人々は今。魔素を受けて馴染んできているんですが、そこに天界から来た方々の神気を受けると消滅しませんか?」
「そこはたぶん大丈夫じゃないか? 生身があるし。お前も今大丈夫だろう?」
「さっき死にかかりましたけど」
「そのくらいの物だ。修行と思えばたいしたことではない」
 優しいから忘れているが、さすが明王。なんでも修行で片を付ける。

「まあそう言うことで、そう遠くないうちに天の方々も器を見つければ降りていく」
「はい? 降りる。現世へ。天の方々が?」

「うん。そう言ったが。私も降りるぞ」

「全員?」
「当然」
「思い出したのですが、魔素って現世で言う所の地獄の力ですよね」
「そうだな。餓鬼どもや鬼も魔素から生まれ出ずるものだ」
「そこに寝ている、猫……じゃないな。セクメトなど魔石を好んで食べていますがいいんですかね」
「現世で居た者が、力を欲してそっちに流れる。よくある話じゃないか。そこから、修行をして神気を得ればきちっと置き換わる。さぼれば逆もありだ。結局は相反する力ではあるが同じもの、あとはその者の気持ち次第。神気会得と維持には修業が必須だからな。ああ、上位の方々は自身の内部から勝手に湧くらしいから、そこに至るまでが修行だな。体調が戻ったなら帰れよ。生身でここへは本来来てはならん」
「これ見よがしに、現世にポートがあって入ってきたのですが?」
「お前だからこれたのだろう。関係がなくば他の神々ですら、迷いさ迷うはずだ」
 そう言えば、くるくるしていたな。

「じゃあ帰ります。また現世にでも来たら連絡ください。他の明王の方にも、会いたくはないですが、よろしくお伝えください」
 そう言って、孔雀様に頭を下げる。

 ぴよぴよと寝ているセクメトをまた抱っこして、現世へと転移をする。

「行ったか。奴の記憶さえ戻っていれば、もうすぐ起こる世界どうしの干渉の時でも人々を導けるだろう。ある日突然、天が裂け、地がめくれ、海が沸騰するくらいはあるかもしれんが、まあ大丈夫だろう。宇宙空間でも空間の干渉だから避けられんしな。俺にはわからんが、菩薩さまがこれで大丈夫とサムズアップするのだから、いけるのだろう。まあ厄災(やくさい)を乗り越えるのも修行だ。がんばれ~」

 下に降りてきたらセクメトは、にゃんこフレイヤになったため、手からすり抜けて落としてしまった。すぐ拾ったから地面には届いてはいないけどな。
 服を収納してフレイヤは首にかける。

「帰るか」
 そう言って、家へと転移した。


 なつみと霞が一緒のベッドで話し合い、一司が天へと向かっていたころ。
 壮二はなぜか神音と、神音の部屋のベッドの上で向かい合って正座をしていた。

 数時間前。
 食事の用意ができているから壮二。神音ちゃんを呼んで来い。
「はーい」
 部屋の前へ到着して、ドアをノックする。
 そう言えば、遮音結界が掛かっているんだった。
 そう思いだして、ドアを開く。

 すると、天井から桃がぶら下がっていた。
 思わず、上を見上げる壮二。
 この部屋は、壁から天井を経由して、ボルダリングのホールドが設置されている。
 足が、ホールドをがっちりとキープしていた。

「神音ちゃん。ご飯の用意ができたってさ。こっちに来るときには服は着ておいてね」
 そう言って、ドアの閉まる音がする。

 そう、幼少期からの癖で、部屋に戻ると神音は服を着ない。
 状態を理解した神音は、力がゆるみ床のマットへと落下する。

 そんなことがあり、ちょっとした部屋の改造と、おしゃべりをしてこんな時間となった。
「あのね、見られたのは婚約者だしいいの。でもはっきり言っていないから…… 
壮二くん。これから婚約者としてお願いします」
「うん。はい」
 あっさりと返事が返って来た。

「付き合っている人とか、いなかったの?」
「えっいないよ。去年まで学校では、いじめられていたし。この家に来て、学校を転校して生活が変わったけれど、まだ2年生だし」

「仲のよさそうな人もいるじゃない。あの川瀬さんとか、食事中も隣であーんとかしていたじゃない」
「なつみさんはどちらかというと、お姉さんという感じかな。芳雄兄ちゃんと同じ年で、うちの社員の一翔さんと付き合っていたんだけど別れたらしくて。家に住みだしたの。その後かな、やっぱり寂しいのか僕に良くしてくれるの」
 さらっと説明する壮二。本当に、特別な感情は無さそう。

「そうなんだ。でも、その後お風呂にも行っていたじゃない」
 ああ。と思い出す。

「さっきも言ったけど、去年まで家が貧乏で……お風呂にはお湯を最低限入れてみんなで入るとお湯が増えて浸かれるから、一緒に入るのが普通になっていて。今でも真魚姉ちゃんとか美月さんとか玲己さんとか一緒に入るよ」
「女の人ばかりじゃない。なら私も入る」
「良いんじゃない。ただ、美月さんにおっぱいとか揉まれるかも」
「なにそれ」
「一司兄ちゃんの婚約者。最近…… あっ、さっきダイニングの方でフェンと一緒にお酒飲んでいた人。最近なんだか元気がなくて、お酒ばっかり飲んでるの。みんな気にしているんだけどね」

「そうなんだ。じゃあまあ婚約者として、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします。だけど、どうすればいいの?」
「さあ? とりあえず一緒に寝る?」
「じゃあ明日にでも、一司兄ちゃんに頼んで、大きめのベッドにしてもらおう。これ一人用だし僕のも一人用だから狭いかも」
「ああそうかもね。お母さんたちのお布団。そういえばもっと広かったわ」
「それと、部屋の中でも服は着ておいてよ」
「えーそれじゃあ、落ち着かないよ。なんだかやっぱり、気持ちが悪いというか……」
「そうなんだ。じゃあ、まあいいか」

 そう言って横になると、チュッとキスをしてきた。
「えへへ、お休みのキス」
「ああ、お休み」
 


「……明日告白する」
 どこかで、念のような決意が漏れていた。
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