勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり

文字の大きさ
143 / 167
第4章 少しずつ変わって行く世界

第38話 日本での些細な一幕 その2

しおりを挟む
 ダンジョン3階。
 一司が指定した辺りにいた奴らは、陽気にバーベキューをしていた。

「あいつらじゃない。5階の方だな」
「全く。ダンジョンでバーベキューなんて、危機感がないのよ」
 霞が叫ぶ。

「おい霞、それ俺らが言っちゃあ、だめだろ」
 一翔が霞に諭すが、
「なによ、私たちは良いのよ。もう」
 霞はなぜか、ぷりぷりとご機嫌斜めだ。
 今まで気にならなかった些細なことも、人間一度気になりだすと、色々なことが目につき気になる。

 その場を後にして5階へと向かう。
 走っている本人たちは、駆け足程度でたらたらと流しているスピードだが、普通の人間が全力で走る速度を優に超え、ダンジョンを疾走する。3階から4階へ移動し、さらに5階を目指す。

 それを、たまたま通りがかり。目撃した駆除従事者達。
「おい、あれなんだ?」
「ばか、目を合わすな。あれは神崎さんの所の若い奴らだ」
「あれが? 高校生じゃないのか。 制服を着ているぞ?」
「ばか、目が合って向こうの機嫌が悪いと、なぜかこっちが逮捕されるんだ。見えないふりをしろ。それにあいつら、人間じゃ無いからな。気をつけろ!!」

「人間じゃない? 一体何が?」
「気にするな。急いでいるということは、要救助者でも出たんだろう。あいつら、今日は居ないようだが…… 特に親玉の白い髪をしたのが神崎で、猫と犬を連れている。あいつは、とんでもなくやばい」

「はい? なんで…… 猫と犬を? ダンジョンで散歩でもさせているのか?」
「それも含めて、その場で遭遇したら見るな。逃げろ。あいつらの周りに行くと、強力な魔物も勝手に消滅するくらいにやばいんだ」
「おう。そうか、わかったよ。そんなに、よだれまで垂らして目を血走らせて大丈夫か? お前がそこまで言うなら、相当なんだろうな」

 実はこの男。以前の、ダンジョンカツアゲ事件で捕まった。
 事情聴取後。よせばいいのに仕返しに行って、松沼母にボコられる。
 そして病院から退院後、執行猶予となる。

 懲りずに一司たちに仕返しをしようと考え、のこのことダンジョンへついて行く。
 そしてそこで巻き起こされる、ばかばかしい殲滅シーンを見て、心に傷を負った悲しい男である。その異常な状況を見た後、泣きながらダンジョンから出て家へと帰り、布団から3日ほど出られなかったとか。


「あー対象が、あいつらと言うだけで面倒臭い」
 と走りながら、一翔がぼやく。
「一司さん。ゲートをくれないかな」
「ゲートはなあ。よっぽどじゃないと、くれないと思うぞ。美月さんも持っていないし」
 芳雄がつぶやいた瞬間。再び皆が反応する。
「「「いや、あの人に持たせちゃ、ダメだろ」」」
 理由は分かるが、皆の声が揃った。思わず笑いが皆から出る。

 そんな、のんきな話をしながら、5階に到着。
「そう言えば、1直線に来られたけれど、誰かダンジョンにアクセスできたの?」
 霞がそう問いかけるが、
「いや、なんとなく空気の流れ? いや、魔素の流れの濃い方に来ているだけ」
 霞以外が、納得する。
「なんだか、釈然としない」
「まあ、もう少しすれば、分かるようになるんじゃないか?」
 一翔があたふたと、フォローをする。

「どこだ? 思ったより時間が掛かったから、移動をしたのか? 面倒くさい奴らだ」
「声が聞こえた。たぶんこっち」
 みゆきが、歩き始める。

 少しすると、声と言うより罵り合い? ダンジョンで騒ぐとモンスターが来るぞ。

「あんたたちが、大丈夫って言うから来たのに。何よこれ。モンスターから逃げ回って、訳も分からないうちにこんな所まで来て、今どこにいるのか、分からないですって。どうするのよ」

「ああ、あれだな。自分たちで迷ったと、宣伝しているからな」
「そうだろうな。一翔、見知った顔が居るぞ」
「やっぱり、あの3人。まだつるんでいるのか。それで女の子を巻き込んで、うん? あれ? あの女の子も見たことあるな」
「斎藤さんと、林さんだな。同じクラスにいた子たちだ」
 芳雄が、ため息をつきながら、答える。

 一翔は思い出せなかったが、芳雄が言うなら居たんだろう。
「嫌だが、仕事だ。声をかけるか…… おおい。そこの5人。昨日から行方不明の高校生で間違いないか?」
 一翔は声をかけてみる。

 それを聞き、笑顔でこちらに振り向くが、
「えっなに? 救助? ……高校生じゃん」
 さっき叫んでいた、斎藤さんがこっちに気が付くが、芳雄達の姿を見てため息をつく。

「高校生でも、役所からの救助要請で派遣された。特別指定外来種対策会社のスタッフだ。ほぼ素人が、なんで5階まで入って来ているんだ。自殺行為だぞ」

「すいません…… ってあれ? おまえ、貧乏人の少林じゃないか。それにそっちは冬月じゃねえか。学校をやめて、モンスター退治をやっていんのかよ。お前らには、ぴったりだ」
 芳雄の脇を、ふっと何かが通り過ぎる。
「昨日から、迷っていた割には元気ね」
 そんなセリフと共に「ごん」という音がして、うだうだ言っていた山田が、2mほど吹っ飛ぶ。
「ねえ、芳雄。こいつら殴っていい」
 と、みゆきが聞いてくるが、今のは何だ? 殴ったよな。ずいぶん力加減はしているが…… 。

「みゆき。すでに殴ったよな」
 呆れて、芳雄がそう言うと、
「えっ、あら本当? 歳かしら? 記憶がないわ」
 と言って、けらけらと笑っている。
 でも、目が笑っていないから怖いよ。

 驚いていたようだが、殴られたはずの山田は、ケガもしていない。殴ると同時に癒しもかけたのか。究極の拷問だな。

 ほかの連中は、みゆきの動きすら見えなかったようだ。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...