勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり

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第4章 少しずつ変わって行く世界

第39話 日本での些細な一幕 その3

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 やっと、殴られた本人は理解できたようで、騒ぎ出す。

「何をしやがんだ、てめえ。俺の親父は、この街の議員なんだぞ。覚悟しやがれ」
「あらそう?」
 また山田が吹っ飛んだ。今度は3mかな? ぼちぼち、普通の人間なら首が逝くな。

「これ以上力を入れると、殴った瞬間死ぬぞ」
「死んでも何とかなるような気がするんだけれど、仕方がないわね。今度はおなかにするわ」
 みゆきは怒りながら、へらへらと笑みを浮かべている。
 一翔と霞ちゃんが固まっているな。まあ相手もだけど。
「なあそれで、素直に従ってくれて、おとなしく救助される気はあるのかな?」
 そんなことを、聞いてみる。

「分かった。助けてくれ」
 こいつは、佐々木だな。
 もう一人は山口。
 2人は山田の、腰巾着だ。

 おっとそこへ、都合よくオークがやって来た。

 佐々木達4人が、一応、山田も焦っているな。
「また来た。あいつ等なんで、こんなにしつこいのよ」
 斎藤が、そう叫んだ時。
 俺が、オークをぶん殴る。
 オークは、吹っ飛ばず。
 ただ、その場で霧になる。

「「「なっ」」」
 斎藤たちの目が、点になっている。
「階層が浅いから、出てもオークぐらいか。さあ、それじゃあ帰るぞ。飯の時間が近い。殿(しんがり)を俺が行くから、みゆきが先頭で、一翔と霞ちゃんが左右でいいかな」
「ああ、良いんじゃないか」
「OKよ」

 要救助者5人を囲んで、ダンジョンの出口へ向かう。最初、駆け足で行こうとしたが、奴らついてこられなかった。

 さらに、水と食い物が欲しいと言うので、亜空間庫に常備してあるバーガーとコーラを与える。
 林さんは紅茶か、水が欲しいと言ったので、みゆきが少し甘めの紅茶のペットボトルを渡す。


 途中幾度かモンスターは出て来たが、先頭のみゆきと言う女が、手を振るだけで黒い霧となって消えて行く。こいつら、そろって人間じゃねえ。
 俺は、山田太(やまだふとし)。親父は、町の議員で力を持っている。そのおかげでガキの頃から多少の問題は、問題にならなかった。

 前回、初めてダンジョンに入って、なぜかガイドなんて言うやつが付いてきた。
 その為3階までしか行けなかったが、そこに出てくるゴブリンとかいうモンスターを退治した。
 俺にかかれば、楽勝だ。手ぶらで来たせいで金属バットを借りて持っている。3階の奥まで来たが、出会ったモンスターは1人1~2匹程度。もちろん、ガイドは手を出さず見ているだけ。俺は、舎弟の佐々木と山口達を連れ、一緒に3階まで行って帰って来た。途中で体が暖かくなったから、レベルアップをしたんだろう。俺は3匹でレベルアップの感じがしたが、佐々木と山口はしなかったようだ。

 結局、10個の魔石を獲得だ。帰り際にガイドが、しばらくは3階から先へは行かないようにと言われて「「「はーい」」」と返事はしておく。

 自動支払機へ流すと8千円になった。2人に2千円ずつ渡す。ぼろい小遣い稼ぎだ。放課後にちょっと来て稼げる。
 それに、弱っちいゴブリン。あれをぶん殴るのが、意外と気持ちが良い。

 そして今回。小遣い稼ぎができると、女の子を誘ってやって来た。特外種駆除従事者免許は最近の高校生は、みんな面白がって取っている。
 そこで、ゴブリンを狩ってみたが、なかなか巡り合わない。これじゃあ、大した額にならない。

「よし、4階に行こうぜ」
 と言って、4階に来た。そこに居たのは、ゴブリンとちょっと大きな犬だ。女の子たちは嫌がっていたが、こいつらもモンスターだ。
 うろうろしていると、
「ねえ、帰り道分かるの?」
 と林に聞かれたが、
「マッピングは、佐々木がやっている。大丈夫だよな?」
「大丈夫だよ」
 と言ってノートを見せてくるが、何を書いているのか分からない。レッキ帳とかいうのを参考にしているらしい。

 そう、ここまでは良かった。あいつが、ぬっと曲がり角から出てくるまでは。
「あっ」
「きゃあ」
「やべ、あいつオークだ。逃げろ」
 持っていたバットを、オークをめがけて放り投げる。

 見事に頭へと大当たりして、オークがひるんだ隙に全力で逃げる。

 しばらく走り、落ち着いた頃。
「巻いたな?」
 俺がそういうと、周りを窺っていた山口が、
「大丈夫そうだ」
 と答える。

 しかし、今度は佐々木が、
「道が分からなくなった」
 そんなことを、泣きそうになりながら、言ってきた。

 すると、斎藤が
「どうするのよ!!」
 と叫びだす。

 その声を聞いたのだろう。呼んだ? という感じで、オークが顔を出してくる。
「がああぁ」
「逃げろぉ」
 また全力疾走だ。

 こんなことを繰り返して、もはや全く道は分からず。
 道に迷うまでは、たまに見かけていた、他の駆除従事者も全く見なくなった。下手をすると、土曜日まで誰も来ないんじゃないか? そんな不安が湧き上がってくる。
 いや、かわいい息子が一晩帰ってこなければ救助依頼くらいは出すはず。明日までの我慢だ。

 ところがダンジョンでは寝ることもできず、定期的にヒステリック斎藤が叫びだす。その結果として逃げ回ることになり、全員疲労がピークだ。
 斎藤の首を絞めたい。

 時計を見て、もう丸1日経ったことを確認する。

 そんな時に、また斎藤がきゃんきゃん叫びだす。
 絶対馬鹿だろこいつ…… 。

 ところが、斎藤の声に呼ばれてきたのは、オークじゃなくて別の学校の高校生だった。

「おおい、そこの5人。昨日から行方不明の高校生で間違いないか?」
「えっなに? 救助? ……高校生じゃん」と言う問いかけに、
「高校生でも役所からの救助要請で派遣された、特別指定外来種対策会社のスタッフだ。ほぼ素人が、なんで5階まで入って来ているんだ。自殺行為だぞ」
 そんな文句を返された。

 小言を言われて、つい謝ったが。よく見ると、昔うちの高校にいた貧乏人だ。
「すいません…… ってあれ? おまえ貧乏人の少林じゃないか。それにそっちは冬月じゃねえか。学校をやめてモンスター退治やっていんのかよ。お前らにはぴったりだ」
 その時「昨日から、迷っていた割には元気ね」と声が聞こえる。
 同時に、顔へと衝撃が来た。
 気が付けば、俺は倒れていた。
 見ればかわいい女が、笑みを浮かべてこっちを見ている。

「ねえ、芳雄こいつら殴っていい」
「みゆき。すでに殴ったよな」
 なれなれしい感じで、芳雄がその女に言うと、
「えっ、あら本当? 歳かしら? 記憶がないわ」
 そんな事を言って、今度は、声を出して笑ってやがる。
 この世には、危ない女しかいないのか?

 結局、もう一度殴られて、死ぬかと思った。
 首から、ごりっという嫌な音がした。

 佐々木たちが、「分かった。助けてくれ」と言う。
 そんな時、俺らを追いかけてきていたオークが来た。
 だが少林の軽く出した拳が、オークの顔を突き抜けた……。その場で、黒い霧となりオークが消えていく。

 そして俺たちは、無事救出されたのは良いが、役所の人間や警察に怒られた。
 相手が女と言うことは伏せて、中で殴られたことをおやじに話をした。「特別指定外来種対策会社の奴らを許せない。慰謝料を取ってくれ」と言うと、いつものように、「そうか。それは許せんな」と言った3日後。親父は、なぜか議員を首になった。

 親父は、「ネズミかと思ったら、ドラゴンの尻尾だった。お前も人を見る目を養え」そんな、謎の言葉を残して、家族の前から姿を消した。
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