勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり

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第4章 少しずつ変わって行く世界

第40話 ある平凡な一日

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 家で、ごろごろしていると、皆が帰って来た。

「要救助者を殴った? なんで? みゆきのおしりでも触られたのか?」
「それなら、そいつは存在を消します」
 みゆきが、さらっと怖いことを言う。

「いや前の高校で、俺たちが退学させられた原因の奴で……」
 そう言うと、一司さんは
「ならしょうがないな。よくやったみゆき」
 と言ってほめてくれた。

 みゆきは、自分の頭に手を乗せて、笑いながら報告する。
「えへへ。でも会社に迷惑と言うか、苦情でも来るかもしれなくて」
 言っていることは良いが、その恰好……。うっかり八兵衛か? なんでそんなものを知っているんだ?

「そいつの親父。議員なんですよ」
 芳雄から追加情報。議員か、探せば何かあるだろう。無くても、まあ何か出て来るだろう。
「大丈夫だろう。まあご苦労さま」
 報告終了で、解散する。
 あっ、小遣いを渡すの忘れた。まあいいか。

 携帯を取り出して、電話をする。
「あっ、ご無沙汰しています。実は義父さんにお願いしたいことが。……はい。実はですね、今日…… 議員らしくて。……はい。そっちは分からないのですが、子供の名前は山田太とかいう奴で、家の芳雄を、前の学校で退学に追い込んだ奴らしくて。……はい? さすがに死刑は出来ないんじゃ。いや、おまかせします。では、お中元には肉でも送ります。はい、ではお願いします」

「任せたが、おっさんえらくハイテンションだったな。肉が効いたのか?」


「社長はああ言っていたけど、大丈夫かなあ?」
「大丈夫じゃないか? また、魔王ごっこでもするのかもな」
「ああ、あれね。実際やられたら、きっと怖いよ。社長の本気で殺気でしょう。それをまともに受けると、心の底から逆らっちゃダメ。動けば殺されると本能的に分かるのよね…… あー思い出しちゃった。恥ずかしい」
「ああ、最初の旅行の時の?」
 芳雄は、みゆきお漏らし事件を思い出す。
 にへらと笑う芳雄の顔を見て、
「思い出すなぁ。えっち」
 そう言って、真っ赤になるみゆき。
 芳雄の首を締めながら抱きついて来る。周りで見ている奴が居れば「けっ」とやさぐれるか、口から砂糖を吐くだろう。


 やさぐれる方の2人。
「あっ、社長に小遣いを貰うの、忘れている」
「ほんとね。忘れていたわ」
 なんだか、元気のない霞。
 貰いに戻ることもなく、さっさと自分たちの部屋へと入って行く。

「疲れたから、シャワーを浴びて寝るわ。お疲れ」
 そんな言葉を言い残して、さっさとバスルームに行ってしまった。
「なんだよ」
 ぽつんと、玄関に残される一翔。

 今日一日。改めて見たけれど、一翔のどこをどう直せばいいのか分からない。全体的に頼りなく優柔不断。
 かわいい子に声をかけられれば、すぐにデレデレと鼻の下を伸ばすし、調子の良いことを吐き出す。それも考えもなしに。

 でも、周りに居る頼りになる人と言って…… 一司さんのような、思いつきで即行動されて、すべてを破壊とかされると制御不能だし。
 芳雄君位がやっぱりバランスがいい。手の届く普通さ。それでいて付き合っている子に対する気遣いとやさしさ。目指すなら芳雄君ねしばらく彼を観察しよう。


〈ねえ、フレイヤ…… 記憶は封印と事故どっちかしら?〉
 フレイヤは驚き、毛を逆立てて周りを見る。が、誰もいない。
〈असुर、私にはわからにゃい。きっと、もっと上位の存在が絡んできていると思う〉
〈そう?〉
 気配が消える。
〈うーん…… 魔石でも食べて、落ち着こうかニャ。あの天界での事で一司は力と記憶をだいぶ取り戻しているけれど黙っておこう。さて、どうなるかにゃ。天界での事…… ぽっ。たまに人化して一司と……うにゃにゃ〉


 変に酔っぱらった俺は、ふらふらと部屋の風呂へと入って行く。
 うん? 人の気配がする。美月か?

 扉を開けて中に入ると、なぜか真魚が美月に洗われていた。
「なんで、こっちの風呂に真魚を引っ張りこんでいるんだ?」
「えっ、一司さん? さっきリビングに居たら、お風呂行こうって連れてこられて」
「いいじゃない。娘みたいなものだし」
 胸を張って美月が開き直る。
 そう言えば、魂からすると前世の娘だな。
 美月は記憶があるのか?

「あ~まあ、良いのか? いやなら逃げろよ。真魚」
「一司ったら。やっぱり、真魚には優しいのね」
「真魚だけじゃないだろ。俺は基本的には、すべてに優しいんだ。身内限定だが」
「そうよね」
 そう言って、美月がむくれる。

「なんだよ。お前にも十分優しいだろうが?」
「そうね」
 なんで、すねているんだ?

 体をガシガシ洗って湯で流す。
 湯船につかり、体を伸ばす。
「うー。あぁっ」
 思わず声が出る。

 すると、美月が真魚を抱えたまま、湯船に入って来る。
「ぐっ。うお」
 ばかやろう。二人で俺の上に乗ってきやがった。
「突然乗ってきたら、溺れるだろうが」
「一司なら、大丈夫」

 そんな事を言いながら、ニマニマと美月が笑っている
 体を引き上げようと思ったが、このポジション。非常に状態が悪い。
 美月と真魚は、俺の腹あたりに跨っている。
 体を引き起こすと、やばいものがやばい所に。
 真魚の前で出来るか! 美月め狙いやがった。動けない。

 くそう。
「美月さん、許してください」
 お願いしてみる。

「ふっふっふ。勝ったわ」
 おい、何を掴んで…… ぐにぐにするな。
「おい、いい加減にしろ。真魚、何とかして風呂から出ろ。こいつ、何か企んでいる」
「一司さん。美月さんに、おなかを押さえられているから動けないの」
 美月は笑いながら、
「体を引き上げれば、いいじゃない。そのままだと溺れるわよ」
 などと言ってくる。完全に確信犯だ。
「できるか」

 その後、真魚の耳をふさぎ、一時間ほど風呂場で暴れて燃え尽きた。

 どうしたか? それは内緒だ。

 気を失った美月を、湯船から引き揚げ。マットを出して転がす。

「うん? どうした真魚」
 視線が…… ああ。
「魔法だ。気にするな」
 慌てて腰にタオルを巻く。

 とりあえず、風呂場から出て、バスローブを羽織ると、ビールを飲んで落ち着く。
「美月が、馬鹿をやってすまんな」
「いつもの事ですから。大丈夫です」
 そう言いながら、私の頭はぐるぐるしていた。
 あんなになるの? いつものと違った。
 その晩。私は、なかなか寝付くことが出来なかった。


「一司。ごめんてばぁ。部屋に入れてぇ~」
 美月の遠吠えが、ダンジョン内に響く……。
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