勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり

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第4章 少しずつ変わって行く世界

第44話 熱い、死んだ。うん?冗談だ。

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 ゲートをくぐって、有名な『モエンジョ=ダーロ』へとやって来た。

 パキスタン、シンド地方。
 インダス川中流の、西岸にある。
 インダス文明の代表的遺跡にやってきたが、
「遺跡だな」
 土と木そして遺跡。
 2022年の9月の水害でダメージを負ったためか、結構人がうろうろしているな。

「紀元前2500年から、紀元前1800年にかけて繁栄したってさ。この物件、上下水道完備。4万人居住可能。川近。最寄りの川まで5分。水害により滅亡までが標準セットだそうだ」

 そんな説明を、俺が読み上げていると、美月がふらふらとどこかへ行っている。
「やばくなったら逃げるから、あまり離れるなよ」
 そう声をかける。あれ? 消えた。
 あいつにゲートは、いやゲートも違うな。
 あの消え方は転移系だろ。
 あいつそんな力をどこかで取ったのか。
 それなら、主に家庭内で、やばいことが起きそうだ。

「いやまて。単純に、穴に落ちたという、可能性もあるか?」
 慌てて消えた辺りを見に行く。
 念入りに見ても、残念ながら何もない。
 だが違和感はある。
 なんだこれ?

 ここ、もしかしてダンジョン? でもないな。
〈一司。時空に干渉がある。気を付けるにゃ〉

 フレイヤから、助言がやって来る。
 そんなもの。どうやって気をつけろと。

 そう言われて、集中する。
 すると見えてくる、どこかで見た光の玉。

〈フレイヤ、こんな所にポートがあるぞ〉
〈古(いにしえ)の物が、まだ生きているのにゃ?〉
〈美月が消えたから、生きているんだろう。ということは、あいつ前世の記憶が戻っているのか? 最近お前たちごそごそしていただろう、知っていたのか?〉
〈にゃ、にゃにをかにゃ?〉
 そう言って、すごく動揺している。尻尾が倍の太さになったぞ。

 前足のわきに手を入れて、フレイヤを持ち上げる。
〈フレイヤ。君のことは信用も信頼もしているが、じっくりお話ししようか?〉
 そう言うと、じたばたしていた力が抜けて、だらーんとなった。
〈口止めされているから言えないけれど、一司を真魚に取られて捨てられるんじゃないかと心配しているようにゃ。前世で戦いを挑んだし、今は娘の夫を寝取っているようなものだから、記憶が戻った時が怖いとか言っていたにゃ。はっきりさせるためにも一司の記憶を取り戻させようとか考えているようにゃ。きっとここで何かするつもり…… にゃ〉
〈馬鹿だろあいつ。聞けばいいのに〉
〈そこは、乙女心の微妙な所にゃ。たぶん〉


 他のみんなは、「ほー」とか「へぇ~」と言いながら見学をしている。
 なぜか俺の横には、みゆきちゃんが芳雄の元を離れて近くにいる。
「どうしたんだ? 珍しいな」と聞くと「私の魂が、何かあるから気をつけろと、ささやくんです」キリッと言っていた。
 芳雄には、許可を取っているらしい。
 フェンとフレイヤも、俺のそばにいる。

 インダス川を見てみようかと、東の方へ移動してみる。
 水の流れている部分だけで30m以上ある。
 結構大きいな。

 チベット高原が源流だが、中国のダムは別の川だったか。
 そういえば、ヒマラヤ山脈の氷河が。溶ける速度が倍になったと、前にニュースで見たな。パキスタンもダムを作るとか言っていたっけ。


 そんなことを考えながら、川を見ていると
「ねえ、 इन्द्र(インドラ)。何か思いだした?」
 そんなことを言って、いつの間にか後ろに美月が立っていた。

 くっ後ろを取られるとは、いや転移してきたのは気が付いた。
 この時、俺はすでにモードに入っていたのだろう。
 吹き抜ける熱い風、失われた町、そして砂と岩。
 そう、某世紀末な世界にそっくりだ。
 美月が、馬に乗ってマントをはためかすあいつに…… 見えんな。
 スカートは、はためいているが。

「インドラってなんだ?」
 そう言って、とぼけてみる。
 美月は、驚いていたようだが、ため息をつくと
「記憶が戻らないのね…… なら、やっぱりこの時代でもあなたは、Śacīを選ぶのでしょうね。せっかく気をそらすために、玲己まで嗾けた(けしかけた)のに…… そうか、一司の意識が…… 強すぎるのかも」
 訳の分からないことを言って、さらに悩み始めた。

 それとは逆に、みゆきちゃんとフェン、フレイヤの警戒がレベルを上げたようで、なぜか美月に対して、殺気まで出している。

 悩んでいた様子の美月が、ふと顔を上げる。
 俺を、半分泣きそうな顔で見る……。
「私もやだ…… だけど。ねえ…… 」
 といった瞬間。最近美月が得意にしている、超高熱のレーザーが、一司の腹を穿ち30cm大の穴が開く。
「一度、死んでくれない? きっと、一司の意識が強すぎて、本当のあなたが出てこられないのだと思う」
 俺は、「ぐはっ」と言って膝をつく。
 レーザーの影響か、「ひゅーー」と音を立てながら熱い風が吹き抜ける。

「このバカ女。やっぱり馬鹿なことを。しかも、攻撃のタイミングがおかしいわよ」
 みゆきちゃんがそんなことを言って、俺に抱きつく。そして癒しの波動を向けてくる。
 フェンとフレイヤも、念話で口々に美月に向かって何かを言っている。

「やっ、やだ。一司さんだめ。生きて死んじゃダメ」
 みゆきちゃん。おっと、顔を見ると涙まで浮かべている。

 もう良いかな?
「ふふふっ。きかぬ。貴様の本気、そんなものか?」
 そう言って立ち上がると、なぜかみんなの動きが止まり、次の瞬間みゆきちゃんに殴られた。気を抜いていたから結構効いた。
 なかなかの剛拳だ。覇王になれるぞ。


「一司さん?」
 みゆきちゃんがまだ瞳に涙を浮かべながら、静かな微笑みも浮かべ、俺に問いかける。
「さっき、確かにお腹に穴が開いていたのに……」
「ああ、多分受けても大丈夫だと思ったが、熱そうだったからゲートを作って後ろに逃がした。ぎりぎりに合わせたら、ちょっと位置をミスって服が燃えた。今は速やかに着替えた。収納庫を使った早着替え。便利だぞ」
「そうですか。わたし、結構本気で心配をしたんですが」
 ゴゴゴゴゴと何か背中から出てきそうだ。

「いや悪い。此処の雰囲気が、俺をそうさせたんだ。ふっ。ほら、みゆきちゃん見てごらん。世紀末ごっこをするには、此処は最高の舞台じゃあないか」
 両手を広げてくるりとターンを決めながら、なるべくさわやかに、言い訳をする。
 
 それを聞き、がっくりと肩を落とす。
「遊ぶなら、先に言っておいてください」
 そう言いながら、額に手をあて、やれやれと頭を振るみゆきちゃん。
「頭痛か? 日射病には気をつけろよ」
 気を利かせて言ったのに、にらまれた。
 年頃の女の子は、扱いが難しいなぁ?

「あのーごめん。いいかしら?」
 美月が、控えめに手を上げて、おずおずと聞いて来た。
「なんだ?」
「一司、記憶は…… 前世の記憶はあるの?」
「あるよ」
 あっさりそう答えると、美月まで膝から崩れ落ちた。

 フレイヤとフェンは、伏せの状態でジト目だ。
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