勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり

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第5章 空間崩壊と混ざり合う世界

第2話 さようならコバルト君

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 もうすぐ夏休みが始まるころ、学校の面談に呼ばれた。

「真魚さんは問題ありません。進学先とかは伺っていらっしゃいますか?」
 そんなことを先生に聞かれて、そのまま真魚に聞く。
「どうするんだ? どこか受けるなら、好きにしていいぞ」
 真魚にそう聞くと、
「そのまま、高等部へ行きます」
 あっさりと答えた。

「まあ、うちの高等部も、捨てたもんじゃありませんし、お兄さんとかも通っているのですよね」
「そうですね。今日この後、高等部に呼ばれています」
 そのあとの言葉を濁したが、孔雀様が、いや孔雀が絡んできてから、いやな予感しかしねえ。


「どうする? 壮二は面接終わったら、さっさと神音ちゃんと帰ったが、お前も帰るか?」
「どうしようかなぁ? 高等部も見たいし一緒に行っていい?」
 後ろ手にかばんを持ち、体を傾けながら聞いて来る。
「まあ、大丈夫だろう。一緒に行くか」

 そう言って、道の反対側に建っている高等部へと向かう。
 予定の時間まで教室の廊下で待っていると、ぞろぞろと女の子に囲まれた奴が近づいて来る。

「芳雄くん。夏休み、一緒に海へ泳ぎに行かない?」
「だめよ。私たちと山へ行くのよねぇー」
 周りの女の子のにこやかな顔とは違い、仏頂面をした芳雄がぶった切る。
「忙しいから、ダメだと言っただろうが」
「「「えーつまんない」」」

「じゃあぁ、お勉強しよう~よぉ。私の部屋で。うふっ」
 くねくねする姿を見て、周りが突っ込む。
「何の勉強するつもりよ」
 すると両手のひらを、顔の横に添えて嫌々をする女の子。
「えー、えへへ」
 そんな様子を見て、誰かがボソッとつぶやく。
「瀬尾さんに殺されるわよ」
 それを聞いて、びしっと固まる女の子達。

「ずいぶんと楽しそうだな」
 俺と真魚が、冷たい目を向ける。
「あっ、いや。最近、なぜかみんなが寄ってきて。じゃあ面接があるから」
 そう言って、芳雄は女の子たちを解散させる。

「モテモテで何よりだ」
「最近急になんですよ。孔雀さんの影響ですかね」
「あーあるかもな。みゆきに殺されるなよ」
 そう言うと、冷や汗を流している。

「少林さんどうぞ」
「入れ違いに出てきたのは、みゆきとお母さんだった」
 お母さんは俺を見るなり、挨拶をしようとしてきたが、
「すいません。先に面接をすませてきます」
 そう言って教室に入る。

「親代わりの神崎です。それと、時間が被ったので芳雄の妹。真魚も一緒ですがいいですか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
 と答える先生。ずいぶん若いな。

「椅子は、そちらのをお使いください」
「芳雄君ですが、成績もここにきて問題なしで、クラスメートとの関係も上々。中心的なまとめ役となっているようです」
「ほう。そうですか」

「それで、進学はされるのでしょうか? いま神崎さんの会社の社員と言うことですが?」
「どうするんだ? 大学も行っていいぞ」
「あーまあ。みゆきとも話したが、一応進学でお願いします」
「みゆき? ああ瀬尾さんね。さっき彼女も進学と言っていたわね。いいわね高校生。彼氏彼女か」
 そう言って先生が、遠い目をする。

「先生?」
「ああ。すいませんつい。美男美女のからみを想像して。夏コミの題材に」
「はい?」

「ああぁまあ、お気になさらず。神崎さんも美人ですね」
「男なんですが、ありがとうございます。先生よだれが出てます」
「ああ、すいません」
 慌てて、口元を袖でぬぐう先生。 

「えーと、何の話をしていましたっけ?」
「進学の話ですよね」
「ああっそうですね。このままいけば問題は無いと思います。あと秋には修学旅行もありますので、できる準備はしておいてください。これ日程表です」
 日程表にざっと目を通す。
「おっ、北海道。ビール博物館は行かないのか。うまかったのに」
「高校生の修学旅行なので、ビールはちょっと」

「わかりました。それでは、もういいですかね」
「あっ、神崎さんは独身でしょうか?」
「ええ。まだ結婚はしていませんが?」
「あのよければ、私も独身なんですが」
 横から真魚が、
「間に合っています」
 と一言。

「ああ。それじゃあ、そう言うことで」
 そう言って、教室を出る。
「一司さんもモテモテだね」
 茶化すように、芳雄が笑う。

 廊下へ出て、みゆきのお母さんに挨拶をしようとしたとき、突き上げる振動と急激に高まる気圧。
 みんなが、反射的にキーンと鳴り始めた耳を抑える。

 空が虹色に変化をする。
「あちゃあ、本格的に裂けたな」
 横で、芳雄がつぶやく。

 うん?真魚。
 横に居る真魚が、なぜか金色に光り始める。
 ああそうか。

 意識を広げて状況を確認する。
 赤道上をくるっと裂けめが広がっているのを見た俺は、裂け目の両側から受けるようにシールドを張る。残念だが、起点の赤道直下表層は間に合わん。だが、地殻が破壊される前にはシールドを張れた。
 これで何とか、しのげるか。




 裂け始めたその時。
 周りでぶんぶんと飛び回っていた観測用の飛行機と、近寄るなと言っても空域に入って来るマスコミの飛行機やヘリ。海上には多数の船。

 突然、黒い穴が謎現象をやめて、ぽふっという感じで破裂した。
 その瞬間。
 球状に広がる衝撃波。
 直下の海面は押し下げられて大きくへこむ。
 当然。
 周りにいた、飛行機や海上の船は一瞬で破壊された。

 その様子を高空から観察していた、アメリカの衛星も一瞬で消滅。
 観察の為、集めていたのが災いした。
 だがそこで、突然影響が止まり、発生した津波も消滅。
 ただし、空間の亀裂は赤道に沿って広がっていく。


 ドゥアト側。穴の縁で、ゴブリンを押し出していたコバルト君。
 突然始まった地盤の崩落と、広がっていく亀裂に飲まれそうになる。
「おおっと」
 空へと、とび上がり上空から見ると、一直線に裂け目は広がっていく。

「あれー? これって世界が崩壊し始めた?」
 やっと状況を理解した。コバルト君。



 アフリカや、インドネシア、南米。
 赤道直下の国では、空が割れ。
 暗い亀裂が広がっていくのが観察された。
 夜の側でも、亀裂の縁は煌めき、広がっているのが分かる。

 そこから落ちてきた、岩やモンスターは地上まで落ちてくることは無く。なぜか空中で止まり黒い霧となって霧散していく。
 裂け目の縁では、光の干渉か虹色の光が煌めいている。

 上空の人工衛星や宇宙ステーションから見ると、地球が赤道上で割れたように見えていた。

 しばらく、裂け目は広がり続けていたが、地球側では、幅200km程度で止まった。


 そう。地球側では、その程度で収まった。


 その時、コバルト君の目前では、空も地もいたるところに亀裂が入り、次々とまばゆい光や、地獄のような溶岩。見たことのないような高位のモンスター。そんなものが空の亀裂から降ってき始めた。
 それだけではなく地面の亀裂からも吹きあがって来たり。ドゥアトとフレイヤが呼んでいた世界は終末を迎えた。

 コバルト君はこんなはずじゃなかったと、慌てふためき飛び回っていたが、高位の次元から降って来た、聖なる光に焼かれて「こんなはずじゃなかった―」と叫びながら、落ちていく。

 そう。
 コバルト君は自らの手で、自分の属する世界を終焉へと導いた。
 地球で、一司たちが騒いでいた世の終焉。
 それは、地球側ではなくコバルト君達の住む世界で起こった。
 崩落は連鎖を生み、どんどんと広がる。
 魔と神。
 それぞれの世界に属するエネルギーが降り注ぐ、混沌へとなって行く。
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