人類最強は農家だ。異世界へ行って嫁さんを見つけよう。

久遠 れんり

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第1章 異世界との遭遇

第19話 役不足だったポーション

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 向こう側で、見つけた謎の小部屋。
 そいつが、こっちにも在った。

 俺たちが閉じ込められていた謎の部屋。
 爺たちが、物を置いて隠してあった。

 それを見つけた真一が、楽しそうに開き始める。

 カチャカチャといじり、首をひねる。
 そしてまた、カチャカチャとスライドさせる。
 一個外れた棒状の石を、出来た隙間に突きこむ。

 ごとっと音がして、扉が開く。
 今度は、5人で入ったのに、やはり2つ。

「なんだ。たまたま、2つだったのか」
 俺は手に取り、宝箱を開く。
 なんとなく鑑定して、固まる。

 鑑定。
『イデアの種が入った上等な瓶』
 この薬を飲み、力を得た者。私は逃たりしない。挑んできなさい。
 創造主デミウルゴス

 なお本薬品は、非常に強力ですので、容量用法をよく読んで服用下さい。
 服用方法。生きるも死ぬもお前次第。さあ、一ビン余さずぐっといけ。

 ちょっと渋い、気の抜けたオレンジジュースだと思っていたのに。
 すごく、やばいものだったのようだ。
 言い訳を考えたのに、言葉が通じたのもこれのせいか?


 固まっている俺を、皆が覗き込む。
「どうしたんですか?」
 酒井さんが、小首をかしげて可愛っぽく聞いてくる。

「ああ。つい鑑定したんだけどな」
「鑑定。そんなことまで、できるんですか?」
「ああできる」
「それで、何と書かれているんですか?」
 俺は引きつりながら、先に聞く。

「これを飲むとな、魔法が使えたり、多少強くなったりするんだが、誰か飲むか? ちなみに俺たちは飲んだ」
「そんな秘密が。それで、何と書かれているんですか?」
 ちっ、勇者君引っかかってこないか。

「あーそれがな、上等な瓶と書かれている」
「はい。それで、中身は?」

「聞きたいのか?」
 そんな事をしていると、
「なんだよこれ」
 ああ、真一も鑑定したのか。

「読むと、やばそうだろ」
「やばそうじゃなく、やばいだろ。よく俺達、死ななかったな」
「だろ」
「だろ、じゃねえよ」

「えーと毒なんですか?」
「読んだ感じ、半々だ」
「お二人。飲んだんですよね」
「ああ。内容はな、『イデアの種が入った上等な瓶』と書いてある」

「イデアってなんだ?」
「プラトンの言っていた、えーとすべての人たちの考える理想理念。本質だった気が。神様の基本概念じゃなかったかしら?」
 なぜか、酒井さんが答えてくれる。
 いや失礼。意外と思ってしまったが、それは俺だけではなかったようだ。
 皆がびっくりした顔で、酒井さんを見ている。

「すごいじゃないですか。飲みましょうよ。神様の種でしょう」
 50%で死ぬところが、もう抜けているな。

「神様の種と言われると、何故か飲む気が失せるな。白かったり」
 そこまで言うと、突っ込みが入る。
「下品」「セクハラ」
 ちくしょう。

「いやすまん。だがなあ、注意書きもあってな『この薬を飲み、力を得た者。私は逃たりしない。挑んできなさい。創造主デミウルゴス』とあって、さらに、『なお本薬品は、非常に強力ですので、容量用法をよく読んで服用下さい。
 服用方法。生きるも死ぬもお前次第。さあ、一ビン余さずぐっといけ。』だってさ」

 そういうと、皆が顔を見合わせる。
「その鑑定の文言。悪意がありますね」
「そうだよな。2本なのも意味深だよな」
「最初飲んで死んじゃえば廃棄だけど、生き残れば薬の意味が分かるようになっているのね」

「きっと、デミウルゴスは悔しかったのよ。中途半端な世界を創ったと言われて」
「何かそんな話があるのか?」

「うん。不完全だって言われている」
「不完全?」
「うん。デミウルゴスの創造が不完全であるから、世の中に『悪』があるとか言われている。それで、いまも完璧なものを創造途中である。と言われているの」
「悪。悪ねえ」
 
「哲学だなあ。悪なんてさ、基本的にその立場により解釈が変わるものじゃないか」
「理屈はそうだけどね。いろんな方面としては納得できない訳よ」

「アリとキリギリスだってさ、アリさんは冬に備(そな)えて備(たくわ)える。それを、キリギリスは食べ物のあるうちは、注意されてもなんとかなると、楽観的考えで生きる訳さ」
「ふむふむ。そうだね」

「それでいざ冬になって、予想を超えて食べ物がない。こりゃ困った、そう言えばアリが食い物を蓄えていた。よし貰えと行くんだが、くれないし多勢に無勢で、キリギリスは考える。そして周りに言いふらすんだ、アリは自分たちだけ食料を持って困った人間に分け与えないとな。そして、そんな理不尽、横暴を許すなと言う者たちに、アリさんたちは追い込まれて、すべてを奪われる」
「そんな話だった?」
「それで、出来た言葉が、働いたら負けじゃないのか?」

「ちがう」
「じゃあ、正直者は馬鹿を見る? いやこれは、正直に話すと税務署がくる話だったか?」
「それは、正直に話さないと、罰金が付くわよ。下手すると捕まるし」

「じゃあ、景気のいいことを言って、金集めしたのに。貰う時には出し渋るし理由つけて遅らせるし減額する。それに、困ったら、働けばいいじゃんと本末転倒なことを言い出す、年金とか?」
「それは本当だけど、何の話をしていたっけ?」
「さあ?」

「あなた達、付き合っちゃえば」
 そんな意見が、杉山さんから出る。
「ええっ」
「こいつとだと?」
 思わずそう叫ぶ。

「なによ、私に不満でもあるわけ?」
「俺はもう少し、考える奴の方が良い。軽率短慮(けいそつたんりょ)の見本みたいなやつは嫌だ」
「何その軽薄なんとかって、私はそんなに軽くない。ちゃんとまだバージンなんだから」
「……おおぅ。そうなんだ」
 場が鎮まった。
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