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第1部-ファフニール王国・自由編-
008_毒
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リリアが目を覚ましたのは真夜中のことだった。ぼんやりと目を開き、まだ意識が戻りきっていないのか、定まらない視線をふらふらとさせる。
「私……」
リリアが掠れた声を漏らすと、目覚めたことに気づいたオズウェルが顔を覗き込む。額に手を当てて熱がないことを確認すると、ほっと目元を緩めた。
「お倒れになったのです。覚えておいでですか?」
顔をしかめて何度か瞬きを繰り返してから、小さく頷きを返す。
「起き上がれますか?」
「……大丈夫」
水を受け取り、リリアが少し落ち着いたところで改めてオズウェルは薬を手渡して飲むように促した。リリアの中で状況が把握できるまで待ち、話を切り出す。
「毒を盛られていたのですね?」
オズウェルの唐突な問いに、リリアは驚いた表情になる。不調は隠せていないのはわかってはいた。だが、アンにさえそんな話はしたことはない。
「どうしてそれを……」
「部屋に解毒剤があったのを見つけました。それと、アンからも話を聞きました。眩暈と、長時間歩けないそうですね」
「でもそれは毒のせいで、今回のは……」
「アンが口にしているのでブラックビーツに問題はありません。今回のことはリリア嬢の体内にある毒と、ブラックビーツが反応したものです」
「そんな……」
「――閉じ込められていただけではないのですか?」
オズウェルの鋭い視線に、リリアは咄嗟に目をそらす。
「……私のことが、疎ましかったようです」
「理由をお伺いしても?」
「わかりません。突然侍女が変わったと思ったら、一気に体調が……」
「そう、ですか。家のいざこざなど、知らぬうちに巻き込まれるものですからね。薬をお渡ししますから、しばらくは療養ください」
「はい……申し訳ございません」
表情の暗いリリアを慰めるように、オズウェルは幾分慣れた手つきで頭を撫でた。鋭かった目つきももうどこにもない。
「ほかに言っておくことはありませんか? もうこんな思いはごめんですよ」
「心当たりはありません」
「それは良かった。毒はそれだけが毒だけではないのですよ。お気をつけください」
「はい……」
「今後はベリー類は口にしないように、アンにもそう伝えておきます。――心配せずとも、そのうち食べられるようになります。今しばらくの辛抱を」
「はい」
リリアの表情は沈んだまま。
どうしたら元気づけられるのかと無表情のまま考え込んだオズウェルは、頭を撫でていた手をすっと口元に当てる。はっとオズウェルを見上げたリリアは、驚きすぎてほんの一瞬だが重い気持ちを忘れ去ったように見えた。すかさずオズウェルは、話をそらす。
「敬語はなしの約束でしょう。リリア嬢」
「うん。あの、迷惑ばかりかけてごめんなさい」
「お気になさらず。元気になられましたら良いところにお連れいたしますから、今はゆっくりとすることです」
「良いところ……?」
「内緒です。きっと喜んでいただけると思いますから」
首を傾げるリリア。
きっとしばらくの間は罪悪感から解放されることだろう。名残惜しそうにリリアから離れたオズウェルは、ベルを鳴らしてアンを呼びつける。
「僕は後処理がありますので、これで失礼いたします。また明日、朝食で。おやすみなさい」
「おやすみ、オズウェル」
リリアの返事に満足そうに一つ頷いて、オズウェルは部屋を出ていった。
入れ替わるようにアンが入ってきてリリアのそばまでくると、躊躇いなく床に膝をつく。
「わたくしが無理にすすめたばかりに申し訳ございませんでした」
「アン……やめて、頭を下げないで。私が悪かったの。ごめんなさい」
「お嬢様……」
リリアはアンを立ち上がらせようとするが、アンは動こうとせず頭を下げたまま。
困りきったリリアは話の切り口を変えてみる。
「アンには感謝しているの。楽しい外出だったから。だから、また一緒にお買い物に行ってくれる?」
「今後はわたくしがお守りいたします。二度はございません」
「……ありがとう。頼りにしているわ」
「はい。お任せを」
とりあえず、これでアンの気も済んだらしい。まだ気負った様子もあるが、ようやくリリアが伸ばした手に応えアンが立ち上がる。
落ち込んだ表情が消えないアンに、リリアはお茶を入れてくれるように頼んだ。
「私……」
リリアが掠れた声を漏らすと、目覚めたことに気づいたオズウェルが顔を覗き込む。額に手を当てて熱がないことを確認すると、ほっと目元を緩めた。
「お倒れになったのです。覚えておいでですか?」
顔をしかめて何度か瞬きを繰り返してから、小さく頷きを返す。
「起き上がれますか?」
「……大丈夫」
水を受け取り、リリアが少し落ち着いたところで改めてオズウェルは薬を手渡して飲むように促した。リリアの中で状況が把握できるまで待ち、話を切り出す。
「毒を盛られていたのですね?」
オズウェルの唐突な問いに、リリアは驚いた表情になる。不調は隠せていないのはわかってはいた。だが、アンにさえそんな話はしたことはない。
「どうしてそれを……」
「部屋に解毒剤があったのを見つけました。それと、アンからも話を聞きました。眩暈と、長時間歩けないそうですね」
「でもそれは毒のせいで、今回のは……」
「アンが口にしているのでブラックビーツに問題はありません。今回のことはリリア嬢の体内にある毒と、ブラックビーツが反応したものです」
「そんな……」
「――閉じ込められていただけではないのですか?」
オズウェルの鋭い視線に、リリアは咄嗟に目をそらす。
「……私のことが、疎ましかったようです」
「理由をお伺いしても?」
「わかりません。突然侍女が変わったと思ったら、一気に体調が……」
「そう、ですか。家のいざこざなど、知らぬうちに巻き込まれるものですからね。薬をお渡ししますから、しばらくは療養ください」
「はい……申し訳ございません」
表情の暗いリリアを慰めるように、オズウェルは幾分慣れた手つきで頭を撫でた。鋭かった目つきももうどこにもない。
「ほかに言っておくことはありませんか? もうこんな思いはごめんですよ」
「心当たりはありません」
「それは良かった。毒はそれだけが毒だけではないのですよ。お気をつけください」
「はい……」
「今後はベリー類は口にしないように、アンにもそう伝えておきます。――心配せずとも、そのうち食べられるようになります。今しばらくの辛抱を」
「はい」
リリアの表情は沈んだまま。
どうしたら元気づけられるのかと無表情のまま考え込んだオズウェルは、頭を撫でていた手をすっと口元に当てる。はっとオズウェルを見上げたリリアは、驚きすぎてほんの一瞬だが重い気持ちを忘れ去ったように見えた。すかさずオズウェルは、話をそらす。
「敬語はなしの約束でしょう。リリア嬢」
「うん。あの、迷惑ばかりかけてごめんなさい」
「お気になさらず。元気になられましたら良いところにお連れいたしますから、今はゆっくりとすることです」
「良いところ……?」
「内緒です。きっと喜んでいただけると思いますから」
首を傾げるリリア。
きっとしばらくの間は罪悪感から解放されることだろう。名残惜しそうにリリアから離れたオズウェルは、ベルを鳴らしてアンを呼びつける。
「僕は後処理がありますので、これで失礼いたします。また明日、朝食で。おやすみなさい」
「おやすみ、オズウェル」
リリアの返事に満足そうに一つ頷いて、オズウェルは部屋を出ていった。
入れ替わるようにアンが入ってきてリリアのそばまでくると、躊躇いなく床に膝をつく。
「わたくしが無理にすすめたばかりに申し訳ございませんでした」
「アン……やめて、頭を下げないで。私が悪かったの。ごめんなさい」
「お嬢様……」
リリアはアンを立ち上がらせようとするが、アンは動こうとせず頭を下げたまま。
困りきったリリアは話の切り口を変えてみる。
「アンには感謝しているの。楽しい外出だったから。だから、また一緒にお買い物に行ってくれる?」
「今後はわたくしがお守りいたします。二度はございません」
「……ありがとう。頼りにしているわ」
「はい。お任せを」
とりあえず、これでアンの気も済んだらしい。まだ気負った様子もあるが、ようやくリリアが伸ばした手に応えアンが立ち上がる。
落ち込んだ表情が消えないアンに、リリアはお茶を入れてくれるように頼んだ。
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