生きるために逃げだした。幸せになりたい。

白水緑

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第2部-ファフニール王国・成長編-

036_舞踏会

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 そして迎えた舞踏会。オズウェルは白、リリアは赤のドレスを身にまとい会場にいた。手渡された仮面をつけて寄り添っていると、人々がこの子は誰だろうといった視線を投げかけながら通り過ぎていく。

「緊張していますか?」
「大丈夫」
「傍にいるつもりですが、困ったことがあればすぐにお声かけください」
「ありがとう」
 
 ダンスに応じていれば離れ離れになることもある。会場はしっかりとした警備とはいえ、オズウェルは僅かに心配そうな表情をのぞかせる。だが、それも会場を回ってくる侍女から飲み物と食べ物を受け取り、周辺を見回す。顔は見えないながら、思い思いに交流する姿を見ているうちに、少しずつ緊張もほぐれてきていた。
 
 そこへ見慣れた姿が近寄ってくる。その他の人間とは圧倒的に雰囲気が違う。
 声をかけようとしたに静かにするよう合図したレオファルドだが、周囲の視線はレオファルドにくぎ付け。注目を浴びながらリリアは、オズウェルを残しレオファルドと共に奥の部屋へ姿を消した。
 
 華やかな音楽が微かに聞こえる応接間。仮面を外したレオファルドは、備え付けてあったグラスを差し出す。

「楽しんでいるか?」
「うん。レオは?」
「もちろん。お前の可愛い格好も見られたことだしな」
 
 直球の誉め言葉に、何度聞いてもリリアは頬を赤く染めるが、負けじと言葉を返す。
 
「レオも! 一目見てレオだってわかったよ。だって全然他の人と違うから」
「お、言うようになったな」
「レオのおかげだよ」
 
 得意そうな表情もレオファルドにとってはただただ愛らしく映るだけ。リリアはそれに気づかず、満足そうに笑う。
 
「それで、ここに連れてきた意味は分かっているな?」
 
 その一言で、きゅっと口を結んだリリアはしっかりと頷いた。
 
「うん……」
「答えを聞かせてくれ」
 
 ソファに腰かけたレオファルドは緊張した様子もなく、目の前に立つリリアを見上げた。深呼吸して、つけっぱなしだった仮面をゆっくりと外す。
 
「レオ」
「おう」
「レオのことは好き」

 含みのある言葉に、わかっている、とレオファルドは頷いて先を促す。
 
「でも、ごめん。隣には行けない」
「理由は?」
「まだやりたいことがあるの」
「どうしてもか?」
「うん」
 
 気弱ながらも迷いのない返事に、レオファルドは肩をすくめた。どことなくわかっていたのだろう。
 
「残念だ。なら仕方ない。お前のやりたいようにすればいい」
「ごめん、レオ……。怒らないの?」
「気にするな。オズウェルも言ってただろ。お前のやりたいことをしろと」

 リリアにとっては予想外だったのだろう反応に、逆に戸惑いを隠せない。
 
「でも」 
「この話はもう終わりだ。その代わり、これまで通り俺が呼んだら遊びに来い」
「……いいの?」
「おう。友達だろ?」
 
 手招きされてレオファルドの横に腰かける。まだ少し緊張が残っているものの、気持ちの整理がついたからか逃げようとはしない。そこからしばらくの間、会っていなかった間の出来事を話していた。

「それでね、オズウェルってば……」
 
 今までと打って変わって止まらないリリアの話を止めたレオファルドは、再び仮面をつけなおす。
 
「そろそろ会場に戻るとするか。やきもきしている頃だろ」
「うん!」
「なんだその顔は。そんなに俺といるのが嫌なのかよ」
「そんなことないよ!」
「わかってるわかってる。ほら、はやく仮面をつけろ」
 
 会場に戻る、その言葉で今日一番の笑顔を見せたリリア。そのことをレオファルドは冗談めかして言ったものの、思うところはあったのだろう。わずかに顔をしかめる。
 
「レオ?」
「何でもない。行くぞ」
 
 会場に戻ってすぐにオズウェルの姿を見つけたリリアは一目散に駆け寄り、その後からゆっくりとレオファルドも合流する。
 
「話は終わりましたか?」
「ああ。次はお前の番だな」
「何の話?」
「秘密だ」
「また私に内緒の話してる」
「そう拗ねないでください、リリア嬢」
「拗ねてないもん」
 
 頬を膨らませて怒るリリアはすっかりいつも通りで、楽しそうに見守る二人の表情も穏やか。舞踏会は何事もなく終わりを告げた。
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