銀色の魔物

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18話

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 別にだからといって魔法が使いこなせるのでもなんでもない。だが、サファルにとっては全く自分に存在しないかのようなものだっただけに、多分結構嬉しいようだ。しかもその指摘をカジャックがしてくれた。
 サファルは緩む顔を隠すことなく自分の手のひらをじっと見た。カジャックはそれを見ても何も言ってこない。特に何も思わないのか、何か思ってもそっとしておこうとでも思っているのだろうか。

「そういえば」

 手のひらを見ていたサファルはふと思い出した。いや、忘れることでもないのだが全裸があまりに自分の中を占めすぎていた。

「カジャック……その、魔法」

 ただ、下手に情報を耳に入れてしまっているため妙に聞きにくい。マリに聞いていなかったら気軽に口に出来ただろうにと思うが自分のことだ、知らなければ無神経なことをもしかしたら口にしていたかもしれないとも思う。
 カジャックの魔力がとても強いかもしれないと予想してはいるが、実際サファルが目にしたり本人から聞いている知識だけだと、カジャックに魔力の才能があるかどうかも知らないことになる。魔物から助けられた時もカジャックが魔法で助けてくれたのか剣などで助けてくれたのか見る間もなくサファルは気絶してしまっている。落ちる前に何か聞こえた気はするが気づけば布団に横たわっていたし、その後も詳しいことをカジャックからは聞いていない。
おずおずとした感じになってしまったからか、カジャックが怪訝そうな顔をする。そろそろ慣れてはきたしサファルとしてはすでにチャームポイントの一つでさえあるが、やはり目は他の人が見れば多分怖い目をしていると思われる。いや、怪訝そうなだけでなく他にも何かありそうな気もするが、さすがにサファルもまだそこまではカジャックの表情を読めない。

「さっき、ほとんど詠唱もなしで火を」
「……ああそれか。あれくらいの火だしな」
「い、いやいや、あれくらいって! 何もないとこから普通火は起こんないし! 魔力の才能あってもだからこそ、詠唱でエレメントとかの精霊呼んで力を借りる訳でしょ」
「……そういう理論は知っているが」

 この人、本物だ……本当に魔力、強いんだ……。

 今まで調理などで火を使う時もカジャックは他の皆と同じように火打石で発火していたので、サファルは初めて実感した。

「……凄い」
「サファル」
「はい?」
「……怖く、ないか?」

 怖く……ないか。
 ああ、そうか……。

 至らなさすぎる自分をサファルはしっかりしろと内心叱咤してから微笑んだ。

「さっきも言いましたが火を怖れる気持ちはあってもそれはむしろ普通のことだし、それにカジャックは全然怖くないし、その、カジャックの魔法はむしろ凄く安定してて綺麗でした。見られてよかった」
「……綺麗?」
「はい。魔法ってその人の性格とか出ると思うんですよね。今までにもフェストでのイベントなどでですが、火の魔法を見たことはあるんです。でもカジャックが出した火ほど綺麗な火は見たことないです」

 ニコニコとサファルが言えば、カジャックは戸惑っているようだった。だがふと思い出したような顔をする。

「……そういえばジンの火も普段はどこか穏やかに見えたな」

 ジン。

「……その人って……カジャックとどういう関係の人だったんですか……?」

 亡くなっているとはいえ、どうにも気になる。ただ、聞いていいものかどうかはやはり正直分からなくて、またおずおずとした聞き方になった。

「ジンは……俺を拾って育ててくれた人だ。関係を聞かれると……実際何の関係もない……。それなのに俺を育ててくれた」

 あ……目が、何となく優しい。

 相変わらず黒目の少ないギロリと睨まれそうな目に間違いないのだが、心なしか優しく見えた。口調もどこか柔らかに思える。

 カジャックはその人のこと──

 名前からすると男のように思う。そしてカジャックは生産性のない関係は無駄だとさえ思う人だ。しかも育ててもらったということは育ての親みたいな関係だったのだろう。どこにもカジャック的に恋愛的な要素はない。

 ……でも俺は勝手に気になる。

 亡くなっているということは、ジンという人と競うことも出来ないしもちろん越えることも出来ない。

「はぁ……切ないなぁ」
「……? ジンのことが?」

 何でだよと思ったが、確かに口に出ている会話からはそう思うしかないだろう。

「いえ、うん、まぁ当たらずとも遠からず?」
「……本当にお前はよく分からないな」
「えー。俺は至って単純ですけど」

 いつだってあんたが俺を見てくれてるだけで高ぶれるし、あんたに他の誰かが関わってたって思うだけで切なくなるんだよ。

「……俺は、あまりに魔力が強過ぎる子どもだった。だから親や村に捨てられた」
「っカジャッ──」

 言わなくていい、と言おうとしたサファルの頭にカジャックはそっと手を置いてきた。そして静かに撫でてくる。

「でも、そのお陰でジンに育ててもらえたし、こうしてお前にも会えた。そして簡単な火魔法ですら、お前に喜んでもらった。……悪くない」

 そんな風に思えるのか。

 少し泣きそうになった。それと共に、自分に会えたことを「悪くない」と思ってもらえたことに胸がいっぱいになる。
 更に泣きそうになった。

「ああ、もう、好き……!」
「……そろそろ俺もお前のそれに慣れてきたかも」
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