銀色の魔物

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22話

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 一緒に行動していると、あらゆる場所をカジャックと共にあちらこちら旅をする、といった妄想が広がって仕方がない。
 目の前では弓使いのサファルよりも楽々と獲物を素手、というか腰ベルトの後ろに仕込んである短剣でさらりと仕留めており、サファルをますます興奮させてくる。
 小柄な分、余計に俊敏に見えるのだろうか。カジャックの動きについ見惚れてしまう。これは自分がカジャックのことが好きだからという欲目ではないとサファルは内心力を込めて思った。
 自分もいいところを見せたいという欲もありつつ、とにかくカジャックの格好がいいところを見られて最高、という欲が満たされまくる。そしてこのままひたすら旅に出たくなる。

「弓だが本当に腕、悪くないんだな」

 それにサファルが弓で獲物を射るところを見てカジャックなりの笑みを浮かべてそんなことを言ってもらえ、危うく大興奮するところだった。さすがにそれはドン引きされるだろうことくらいサファルにも分かっているので堪えたが、とてつもなく嬉しい。
 狩った二匹の獲物はまず内臓を抜いた。そして近くの川までいくと内臓を抜いた肉に石を詰めて沈め、肉を冷した。すぐに冷やさないと肉が臭くなる。冷やすことで肉や血の腐敗を遅らせる。
 その間にどうせ食べきれないであろう内臓を埋めた。恐らく明日にでも他の動物か魔物が埋めることで遅れた臭いに誘われ、掘り返して食べるだろうと思われる。
 冷えた肉の皮をはぐとようやく解体していった。
扱いがいいと肉の血抜きをしないほうが美味しい味になる。そもそも動物の血は新鮮だとそれだけでも美味しい素材になる。ソーセージだけでなく甘い濃厚なソースにさえなるのだ。

 でもこんな場所じゃ難しいけどな。楽しいけれども。

 サファルは解体した肉を焼きながらニコニコとした。したたる肉汁をすくって肉にかけながら、表面をパリッときつね色に焼いていく。

「そういえば前に、肉を焼くのは上手いと言っていたな」

 夜の帳の中、焚き火の灯りに包まれながら食事をしているとカジャックが言ってきた。覚えていてくれた、とサファルはまたニコニコと頷く。

「あは。だてに肉食うの好きな訳じゃないですよ」
「……ふ。どれだけ好きなんだ。あと、扱いも上手い」

 カジャックも静かに笑ってきた。

「普段商売用でも獲物、さばいてるんで」
「ちゃんと仕事、してるんだな」
「してますよ……! してなさそうに見えるの?」
「悪い。それだけお前はいつも楽しそうに見えるんだと思う」
「えへへ、そうですか?」
「ああ」

 カジャックがまた静かに笑った。
 夜も更けてくるとカジャックは「寝ろ」とマントを差し出してくる。

「え、でもカジャックは?」
「火と周りの見張り」
「そんな、そしたら俺も……」
「二人でする必要はない。もし目が覚めたら交代してくれたらいい」
「でも……」
「寝ろ」
「ぅう。一緒に寝たかった」
「……例え火の番をしなくても一緒に寝ないからな」

 サファルの泣き言に対し、カジャックが呆れたように返してくる。

「ええっ? こういう時は体を寄せあって眠るのがセオリーじゃないですか」
「どんな理論だ。冬ならまだしも」
「今だって夜中や朝方はまだ肌寒いですよ」
「だからコートを渡しただろ」
「……そんなの……カジャックはどうするんです」
「起きてるからいい。もし交代する機会があれば返してくれ」
「……だったら先にカジャックが寝てください」
「いい」
「だって俺、意外にも寝汚いですよ、起きられるかどうか……」
「意外? 知ってる」

 知られてる。

 笑っていいのか困ったらいいのか分からなくてサファルは微妙な顔になる。
 この間泊まった時はあまりに新鮮な気持ちだったため、カジャックより早くに目が覚めたはずだ。

「まだ見せたことないはずなのに、もしかしてカジャックは俺のこと知り尽くす勢いで気にしてくれて……?」
「……お前の発想力はどうなってるんだ……? 初めてお前に会った、っていうのか……お前が魔物に襲われてた時、意識を失っただろ」

 何故そんな話に、と思いつつもサファルは「はい」と頷く。

「あの時、普通ならすぐに目が覚めるだろう状態でお前はいつまでも気持ち良さそうに眠っていたからな」
「あー」

 そんなに眠っていたのか。

 自分では分からないが、カジャックが言うのだからそうなのだろう。

「あ、でもそんな最初の出会いをよく覚えてくれてるなんて、やっぱりカジャックはカジャックが思ってる以上に俺のこと、好きなんですって」

 あはは、と笑いながらサファルが見ると、カジャックはポカンとした顔を向けてきた。

「カジャック?」
「あ、ああ。その発想はなかった。なるほど、そうかもしれないな」
「っふぁっ?」

 まさか認めてくれるとは、とサファルは変な声が漏れる。

「……すぐ変なほうに取るな……そういう好きじゃない……。とにかく、お前が寝汚いだろうことは知ってる。いいから寝ろ」
「……はい」

 いい感じに展開していくのでは、という淡い望みを本人によって断たれ、サファルは渋々眠ることにした。そうしないとカジャックはむしろ困るのかもしれない。思ってもいないことは言わなさそうなカジャックだけに、多分「寝ろ」と言ったら本当に寝て欲しいのだろう。それが完全にサファルのためだけなのだとしても、カジャックがそう願うならその通りにしたいと思う。

 せめてがんばって一眠りしたら目が覚めますように。

 サファルはそう願いつつ、カジャックの匂いに包まれるようにしてありがたくカジャックのコートを羽織りながら横になった。
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